1716/N

こんにちは。N予備校英文読解講師の中久喜匠太郎です。

N予備校は2016年4月に誕生したネット予備校です。N高校生だけでなく世界中の誰もが参加できる学習プラットフォームです。大学受験だけでなく、プログラミングやWebデザインなど多種多様な学びを提供しています。世界中のどこにもない新しい学びの場を創ろうと、スタッフ、エンジニア、講師一同日々奮闘しています。

2015年9月、川上会長(当時)をはじめとするドワンゴのスタッフの方々と初めてお会いし、このN予備校プロジェクトについてのお話をうかがいました。当時は「N予備校」の名前はおろか、システムの概要さえ決まっていない状態でした。そんな状態でも、これから始めようとしていること、目指す理想を熱く語ってくださる皆様の姿を目にして、私は直感しました。

これは、新しい未来だ。

ただの未来ではない。「ネットの教育はこれからもっと普及する」というような誰にでもわかる未来ではない。世界のどこにもない、誰も実現していない、ひょっとしたら考えてさえもいない、新しい未来が、ここで生まれそうだ。宙に橋はない。けれど、星はそこにある。ならば、その星にたどりつくための宙の橋を架けることに、自分の講師人生全てを注ぎ込んでもいいのではないか。

それから数回の深い話し合いを経て、一か月間悩みに悩み抜いて、私は完全移籍することを決心しました。

それから5年。N予備校では本当にたくさんの経験ができました。やりたかったこと、やるなんて思ってなかったこと、できればやりたくなかったこと笑、普通の英語講師ではまずできないようなことを山のように経験できました。

というわけでここで、「印象に残っている授業、イベント、出来事3選」を。順位ではなく、時系列を遡る順番で紹介します。大切な思い出に順位なんてつけられません。

①「Foreign Affairs」で読む、世界の今 (2020年11月~・現在絶賛開講中)
N予備校の機動力の高さとフットワークの軽さがなければ実現しなかった講座です。「Foreign Affairsを読む講義をしたい」という私の長年の願望を形にしていただきました。しかも、提案から実現まではたったの3か月。さらに特別講師として、元朝日新聞主筆の船橋洋一先生を招いていただけるという僥倖にあずかることができました。本当にリッチな講義です。教科の壁を越え、レベルの壁を超え。N予備校に移籍する時に直感した「新しい未来」の結実の一つかもしれません。これからもずっとずっと大切にしていきたい講義です。

中久喜先生1

② N予備校ネット夏期合宿・座談会 (2016年8月26日)
「合宿」と称して、1日12時間の授業を5日間続けてしまおう!という何ともN予備校らしい企画。この「座談会」は、最終日の坂田アキラ先生の授業の後、生徒の質問に答えながら座談会をしよう!というスタンスのゆるさ笑 しかも時間は夜21時から翌2時までというぶっ飛び方笑笑 つまり坂田先生は都合17時間話していたことになります笑
この座談会には私達N予備校大学受験講師だけでなく、プログラミングの折原ダビデ竜先生、現S高校校長の吉村総一郎先生(当時プログラミング講師)など錚々たるメンバーが集結し、この年が初年度であったN予備校に対する熱い想いをいつまでも語りました。ここに居られることを、素敵な同志の皆さんと一緒にN予備校を創っていけることを心から喜べた時間でした。ニコ生では今でも視聴できます。興味あればぜひご覧ください。今日久しぶりに観て、ちょっと泣きました。そして、笑いました。

中久喜先生2

③ N高等学校・課外授業記者発表 (2016年3月22日)
N予備校は「N高校大学進学課外授業」という世を忍ぶ仮の姿でデビューしました。(「N予備校」として一般公開が始まったのは同年7月14日) その大学進学課外授業についての記者発表イベントです。テレビ局のカメラと新聞記者の方々もたくさん入っていました。私がこの会見場に赴くまでの経緯を会話形式で簡単にまとめると…

担当の方「来週ニコファーレで記者発表を行うので、来てください。」
中久喜「かしこまりました~。何をすればいいですか?」
担「当日お話しします。2時間前に来ていただければ大丈夫です。」
中「かしこまりました~。(ということは行って座ってればいいんだろうな、フフン♪)」

~そして当日~

中「お疲れ様です~。今日はよろしくお願いいたします~。」
担「よろしくお願いいたします。それでは、台本の読み合わせを始めましょう。」
中「だ、台本…だ…と……(汗)」
担「中久喜先生には、N予備校の『ネット教材』のしくみと、『生授業のシステム』具体的にはコメント、アンケート、挙手、について説明していただきます。持ち時間はだいたい20分くらいです。」
中「(コ、コアすぎるぞ!!!) あ、あの、台本を持っていって、見ながら話していいんですよね?」
担「いえ、台本は持ち込まないでください。」
中「…………!!!!!!」

人生最大の正念場だ。しくったら全てがぶっ飛ぶ。来年はもう契約してもらえないかもしれない。ニコファーレでここまで肚をくくったのは、後にも先にも私だけではないでしょうか。本番までの乏しい時間の全てを、人生最大の集中力と人生最大の背水の陣で、台本の暗記につとめました。

こうして、N高校大学進学授業のシステムの全貌が世に公開されました。

中久喜先生3

今でもはっきり覚えています。あの時、ニコファーレを囲むように流れていた絶賛コメントの嵐。居並ぶ記者さん達の驚きの反応。「本気すぎる」「これは革命だ」「日本の教育変わるわ」…本当にものすごいものをドワンゴのエンジニアさん達は創り上げてくれたのだ、と、話をしながら逆に自分が実感させられ、それを生かしていく責任の重さを思い知らされました。

この素晴らしいハードを、恵まれた環境を、私はどれくらい生かしてこれただろうか。1716日の歩みの中で、私はどれくらい皆さんの期待に応えてこられただろうか。

1716。2016年4月15日に「N高校大学進学授業」の最初の講義が行われてから、2020年12月25日までの日数。

2016年4月15日。熊本地震の翌日でした。震える声で熊本、九州の方々へのお見舞いを述べた後、震える声で、私は最初の授業を始めました。それから1716日。私は、N予備校は、皆さんの期待にどれくらい応えてこれたのだろうか。「新しい未来」をどれくらい形にできてきただろうか。

日々自問します。「これでいいのだろうか」

「ゼロイチ」という言葉が世の中にはあるらしいですね。何もないところに何かを生むこと。どこにもないものを創ることは本当に楽しいです。本当に誇らしいです。でも、とても難しいです。大変です。

自分の立ち位置を見失わないようにすることが、本当に難しいです。

私は日々自問します。

受講生の顔は見えているだろうか
受講生のニーズを本当に拾えているだろうか
机上の空論で捻りだした受講生像を押しつけてはいないだろうか
説明責任を果たしているだろうか
一度成功したパターンに安住していないだろうか
「変えること」を目指すだけになっていないだろうか
「新しいものを創ること」が自己目的化してはいないだろうか
プライドを持ってしまっていないだろうか
一年目の使命感と興奮を忘れていないだろうか

1716/N。分母のNは、なんだろう。私の、私達の、目標が、理想が、実現するまでの日数。この分数が1になる日はいつなのだろう。いや、1になんてならないし、なってはいけないのでしょうね。目標も理想も、追うほど逃げてく虹みたいに、いつまでも更新され続けなきゃいけない。ゴールなんてあるはずがない。だから、NはいつまでもNのままでいいのだと思います。

2020年がまもなく幕を閉じます。日本はかつてない1年を強いられました。受験生、高校生もかつてない環境での学習が強いられました。N予備校はどれくらい、あなたの力になれたでしょうか。

今年は静かな年越しになりそうですね。街には冷たい時間が流れるのでしょう。今は家の窓越しに春の桜を思い思いに描いて、未来に静かに想いを馳せるとしましょう。すぐに来ますよ、きっと。

2021年もN予備校をどうぞよろしくお願いいたします。

そして2021年が、あなたにとって素晴らしい1年になりますように。


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