ファミマの店員に恋した話


人生は面白い方が良い。
面白いという理由だけで
私は、時にとんでもない選択をすることがある。

今日は数年前に起きたそんな話を
ふと思い出したので書いてみようかと思う。



20代も後半に差しかかった頃、
限界OLを極め、毎日真面目に働いては
会社と家の往復しかしない
非常につまらない時期があった。


"ネタがない。"


そんなある日、
仕事終わり家に帰る途中
近所のファミリーマートに寄って
DARSとホットコーヒーを買った。

会計後ぼーっとしながらコーヒーを淹れていると
コーヒーを思いっきりこぼした。
反射的に「あちィイッッ!」と
大きな声が出てしまった。
しかも運悪くその日は白いニットを着ていた。 

すると、ひとりの店員がこちらに来て 
「大丈夫ですか?!」と私に声をかけ
タオルを差し出してくれた。 
(今思うとすごい漫画みたいなテンプレ。笑)

そして、
「コーヒー半分以上こぼれちゃったので、
新しいの淹れて大丈夫ですよ!」
と新しい紙コップをくれた。


黒髪高身長の、感じの良さそうな好青年だった。


丁寧にお礼をした後、
店を出てLINEを開いてみると
「チームタラレバ」(女友達のグループライン)が
いつものように盛り上がっている。


そう、その日はバレンタインデーだった。
アラサー女子の一筋縄ではいかない
恋愛トークが繰り広げられていて
その話題に重ねてさっき起きた話を報告してみた。


私「さっきファミマでこんなことがあったんだけど、、、」


女友達「なにそれやばwwその男の子にチョコ渡しなよwwwLINEのID添えてwww」

といつもの悪ノリなテンションで返事が返ってきた。



(たしかに初対面のファミマの店員にチョコ渡すのちょっと面白いかもな…。)


そんなクレイジー思考がはたらき、
"面白い"を採用、思い立ったらすぐ計画実行。



一度家に帰り化粧を直して
自分の購入したDARSに
お礼とLINEのIDをかいて
もう一度ファミマに向かった。


私「さっきはありがとうございました!
すみません、ちょっとしたお礼なんですけど…」

とLINE ID付きのチョコを渡して
その場をすぐに去った。


計画実行はしたものの、
「良い歳した女がなにやってんだwww
あのファミマもう一生行けねえwww」

などとタラレバラインに報告し、
恥ずかしさはしばらく拭えなかった。


まぁ、さすがにLINEは来ないかな…
と寝る準備をしていた時、
まさかの例の彼からLINEが来た。

ファミマ店員のたつやです!
いまバイト終わりました!
先ほどは丁寧にありがとうございました!

もしかして、いただいたチョコはバレンタインデーってことですか…?(違ったらすみません笑)


たつやだったかたくやだったか
今となっては名前は覚えて無いのだが、
このようなLINEが来た。

ファミマ店員にID渡してLINEが来たと言う
胸の高鳴りをそのまま友達に報告。


そうして、彼とのLINEのやり取りは始まった。 

・大学4年生でもうすぐ卒業
・近所住み
・彼女なし
・最近車の免許を取得
・音楽が好き

ラリーを続けてくなかでこんな情報がわかった。


それから、彼のいそうな日は
会社帰りにファミマへ寄った。
コンビニ店員のくせに(偏見)
爽やかな対応でテキパキと品出ししている姿に
なぜかときめいている自分がいた。


そんなある日、彼から


バイトこの後22時に終わるんですけど
一緒にドライブしませんか?

と連絡が来た。

男の人と二人でドライブに行った
経験がいままでなかった当時の私はブチ上がり
二つ返事でぜひ!と返した。

そうして近所集合の深夜ドライブが始まった。
正直なにを話したか、どこに行ったかは
あまり覚えていない。


ただ、車の中で流れていた音楽が
なんの曲だったかだけは
今でも覚えている。



その後も帰り道に車で迎えに来てくれたり
夜の公園で話したり
何回か彼と会う機会があった。

ただ、二人で会う時は
なぜだかそんなにときめかない自分がいた。

そして3月に入り、
一週間ほど彼がシフトに入らない日が続いた。
同時にLINEの頻度も減った。

そんなことをタラレバラインに報告していると、
勘の鋭い友達がどういうことか彼のインスタを特定した。笑
(こういう時の女子の探偵力まじですごい。)

すると、一枚のスクショが送られてきた。

それは
2枚の海外行きの航空券の写真だった。

女友達「見てよこれ、ズームしてみ?」

スクショをズームしてみると
一枚は彼の名前
もう一枚は女の子らしき名前が記載されていた。


(あ…彼女いたんだ…)


その一枚の写真だけで状況を察したわけだが、
思ったよりさほど傷付いてない自分がいた。

そうして不正な(?)ルートで知った事実を
その後彼に突きつけることもなく
徐々にフェードアウトし、

ちょうどバレンタインから
ホワイトデーの間くらいの

1ヶ月の短い恋が終わった。

その後、彼は大学卒業とともにファミマからもいなくなった。

恋ともいえないような短い思い出を過ごした自分の奇妙な心境について考え、
しばらくしてから一つ気づいたことがあった。

それは、

私が恋していたのは、
二人でドライブをしたり
夜の公園で話した彼ではなく



"ファミリーマートの店員の彼"
だったのだと。




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