無意識の芸術 - ジャクソン=ポロック(ユング時代、ドリップ技法時代)
・ポロックの「誕生」(1938年)。歯を剥き出しにした顔のような存在が画面の中で溶け合っている。これは無意識の中の攻撃的な衝動や人格を表現しているのではないかと解釈できる。ポロックはアルコール中毒という精神症を持っていたので、彼が酩酊した時に現れる無意識下の人格がこのように表現されているとも解釈できる。
・ポロックは「芸術の源泉は無意識である」というシュルレアリズムやユング心理学に関心を持っていた。ユング派の精神分析医師によって彼は強い女性的性格を持つ・統合失調症であると診断されたこともある。彼が描いた「鳥」はこのような複数の分裂人格と対応する原始心像・自我(Ego)と自己(Self)という2つの異なる人格というユング心理学を反映したと思しき構図となっている。絵に描かれた青い目は彼の自我、3つの円は原始心像・画面下部の渦巻きは無意識下の自己を表している。
・ポロックの後期作品(1947年以降のもの)は感覚的にキャンバスに色を乗せる、という「ドリップ技法」によるものが中心となる。代表例が「北斗七星の反射」。
この絵では彼の感情がシンボルや象徴・ユング心理学の形式をも取ることなく、純粋にただの「色」として表現されている。あえていうなら画面中央に描かれた青い色の塊が彼の自我・自己の中心であり、そこに付随する黄・黒・緑・白といった別の色の塊が彼のそれぞれの感情を象徴する色となってるのかもしれない。
ポロックの後期作品は色を通して彼自身の感情が愚直に表現されているだけでなく、ロールシャッハテストのようにその作品を見る人の無意識が投影される「鏡」のようになっているとも解釈できる。
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