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こどもに字の筆順は覚えさせるべきか?

この記事は2018年頃、筆者の子供が5, 6歳位の時期に書かれたものです。この記事を読む時点で、アプリなどの情報が古くなっている可能性がありますので、その際は、アプリストアなどで、調べてみて下さい。

先日、子どもが通う日本語補習校での保護者と先生の懇談会で、漢字の筆順(書き順)に関して、どう取り組むべきかということが話題になりました。
書けさえすれば、順番なんてどうでもいい、と考えるこどもに、果たして筆順を無理にでも覚えさせるべきか? という議題に対し、少し気になったので調べたものをシェアします。

結論からいうと、書き順は学んでおいて得はするけど、たぶん損はしない。以下は、いくつかの考察です。

「答えは一つじゃない」教育姿勢

昨今、クリエイティビティも大事にする教育では、一つしか無い答えを出すことよりも、いろいろな解決方法や答えが存在することを知って、一つ以上の解答方法を導き出せることが大切です。
例えば、SankeiBizに載っていた「小学生の算数センス ●×●=256が「解ける子」と「解けない子」の差」では
いろいろな解法を思いついてこそ賢い
と、1つの解答方法が見つかることで止めるのではなく、ほかの方法も探ることの重要性を語っています。
例えば、下記の例題では何かと何かを足すと10になる、という問題です。整数に限らなければ、回答は無限に存在しますね。

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また、筑駒(つくこま)で知られる「筑波大学附属駒場中学、高校」は、東大進学率がトップの学校であるが、ここでは、どの学校でも学ぶ「ピタゴラスの定理」を、ただ教えるだけでなく、生徒はもっと深めていく。Nikkei Styleの筑駒の「高校生社長までいる「東大に一番近い進学校」の素顔」という記事には、こう書かれています。

筑駒の授業もその養成の場だ。「中1~2で他の学校と同様にピタゴラスの定理を勉強する。普通の中学生なら1つの証明法などを覚えて終わりだが、うちの生徒は独自の証明法を次々授業で勝手に考案する。すでに30通り以上出ている。担当教師がついていけないものもある。この証明法はすごいとなると、授業でワッと拍手が起こる」(浜本副校長)

つまり、「解は一つだけじゃなくて、たくさんある」という姿勢ですね。


世の中にだいぶ浸透が進んできた、イノベーションを産み出す手法の「デザイン思考」というアプローチも、解決方法を一つ思いつくだけで安心せず、より多くのアイデアを出していくことを推奨しています。
私は、自分の子供達には、ある問題に対して、旧態依然とした、周りと同じようなアプローチを学んで、それで安心してしまう人間にはなってほしくなく、むしろ、様々なクリエイティブな解を見つけていき、イノベーションを生み出せるような人材になって欲しいと思っています。

その意味で、定められた筆順を学ぶことは、どれだけいいことなのでしょうか? 興味本位の考察は続きます。

ルールは、ルールを知ってから破る

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優れたデザイナーは、いい具合で人々の期待を裏切り、ルールを破り、新鮮な驚きや喜びを持ち込んでくれます。つまり、デザイン上のルール、つまりデザインの基本をしっかり抑えた上で、意識的に破っていくことが可能になるわけです。そこで大事なのは、受け手もルールを知っているいうこと。それだからこそ、ルールを破る意味が出てきます。
そもそも、クリエイティビティは、受け手の想像の延長線上にないと、「面白い」「新鮮」などと認識されないものです。比較の対象がなく、完全に既存のものと関連性がないものに対しては、人は負の感情(恐怖、畏怖)などを感じることが多いのです。
その意味では、日本語の正しい書き方を身につけていくことは、言語を正しく扱えるようになり、その上で、新鮮な使い方を生み出していくことが可能になるかもしれません。(こじつけにも聞こえますが、きっとそうだと信じたい)

「正しい筆順」は一通り以上あった!?

そもそも、筆順はどこでどうやって決まったのでしょうか? 調べると、現在の筆順は、教科書検定をする文部科学省(つまり日本国)が決めた基準があり、それは「一般的に通用している常識的な」筆順であると定めています。(「筆順のはなし」


昭和33年(1958)に、「筆順指導の手びき」が文部省から出版され、学習指導上混乱を避けるために統一を目的として、国全体の基準になりました。ところが、中を紐解けば、どちらから書いても正解といえるような字も存在するのです。

本書に取りあげた筆順は、学習指導上の観点から、一つの文字については一つの形に統一されているが、このことは本書に掲げられた以外の筆順で、従来行われてきたものを誤りとするものではない。
「筆順指導の手びき」1958年(昭和33年)「5.本書使用上の留意点」より

例えば、昭和16年からの国民学校期に示された、「上」という漢字の筆順は、2通り併記されています。

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これ以外にも、「手びき」には筆順が2通り以上あるものとして以下の漢字を例示しています。
「点」「店」「取」「最」「職」「厳」「必」「発」「登」「感」「盛」「馬」「無」「興」
「従来書かれている筆順は決して間違いではない」という論点は、すなわち、ある程度の人数がとんでもない書き順で書き続ければ、それも市民権を得ていく、ということになりませんか? うむむむ。これでは、子どもに向かって堂々と「この筆順でやりなさい」なんて、なかなか言えませんね。

国や地域でも筆順は異なる!

Wikiの筆順の情報を読むと、地域や国でも筆順は異なることがわかります。


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日本の筆順(真ん中の縦画を先に書く)

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中国・台湾・香港・マカオの筆順(真ん中の横画を先に書く)


絶対的な筆順は存在しない。それでも、国が定めた筆順は覚えるべきか?

さて、いろいろわかってきましたが、当時4歳、5歳のこどもたちは、どこにも存在しなさそうな、下から上に線を書くとか、口という漢字を左回りに四角を書いたりしています。この状態で、「書き方はいろいろあって、どれが間違いとか言えないから、好きな順番で書いていいよ〜」というのは、ちょっと飛躍しすぎているかと思います。

実際、小学校の年齢が上がり、今では正しい書き順を覚えるようになりました。

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個人的には、筆順はどう書こうが関係ないのかもと感じています。はっきりいって、現代社会ではあまり困りません。それよりも、
「漢字が読める」
「その音をスマホやパソコンでタイプできる」
「漢字変換で正しいものを選択できる」

という3つのスキルのほうがよっぽど大事だと思っています。
ただ、きれいな字を書こうとする場合は、ある程度、決められた筆順で書くほうがうまくいく、ということは否定できません。

下記のサイトにも、こう書いてありました。

筆順(書き順)は、昔の書道家や学者たちが、美しい字を早く書くために工夫を重ねるうちに決まっていったものです。
https://www.syodou.net/column/funny-stroke-order1/

デジタル社会において、手書きで日本語を書く、という行為そのものがとても貴重な体験であり、手書きのものを受け取ることは、以前にも増して価値のあることだと感じます。その時に、「きれいな日本語の字がちゃんと書ける」のは、とても嬉しいことなのではないでしょうか。

そういった意味で、現段階で定められた筆順を知っておくのは、海外に住む手前、日本文化そのものを吸収する大きな糸口なのではないかと感じます。

ということで、結論がでましたね。やはり、筆順を積極的に覚えてもらおう!ということですね。

でも、子供に筆順を覚えさせるのは大変

そうなんです。子供がドリルの宿題をしているとき、下から上に線を書いて、字を書いてのを見て「おおっ!すごいクリエイティブな書き方だ!」と関心してみていたんですが、よく考えると、これがずっと続いたら、ちょっとまずいかなぁとも、思うようになってきました。

6歳のうちの子どもは、日本語をちゃんと学びたい意欲が強いので、ちゃんと「こう書くんだよ」というと、そのときは従ってくれます(すぐ忘れちゃいますが) ただ、もっと独自路線が強いお子様は、「書ければなんでもいいでしょ」と、大人の教える書き方を素直に受け入れてくれない場合もあるようです。そこで、喧嘩になるケースも。

そこで、アプリの登場です。
個人的な経験則でいいますが

人はアプリやソフトウェアに間違いを指摘されると、
あまり痛みを感じずに従順にいうことを聞ける
by NY Daddy

と思っています。
間違え判定もしてくれるので、ゲーム感覚で遊べる筆順練習アプリがいくつか出回っています。うちの子供たちで試してみましたが、普通にのめり込んでました(笑)

知りあいの独自の筆順で書く意欲が強いお子さんは、アプリを試した所、間違い判定がでると、渋々書き直していたそうです。想像してみてください、毎回、自分の子供がドリルやる度に、筆順というこまかーーーい点を指摘しているシーンを。そんなことがずっと続いたら、双方気が滅入ってしまいます。

なので、悪者役やアプリに引き継がせて、ゲーム感覚で遊ばせながら、自然に筆順も身につける、というパターンはいかがでしょうか。
もっとも、親が子どもの宿題や勉教を見る、というのは親と子の大切なコミュニケーションの時間です。いかに、健全なやりとりのもと、間違ったものを、気分を害さずに修正できるようになるかは、双方の努力しだいで変わってきますよね。めんどくさいことは、アプリに頼って、はいおしまい、という姿勢ではなく、あくまでも、創意工夫の一環としてアプリで楽しく筆順を練習、というのも有りなのかもしれない、という程度だと思ってください。
もし興味があれば試してみてください。広告がすこし邪魔ですが、十分遊べました。

紙のドリルも含めて、どれがお子さんに合うのかは、本当にそれぞれだと思います。片っ端からダウンロードして、合うものを探す感覚で試してみるといいでしょう。
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ひらがな練習アプリ リスト
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書き順ロボ

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ひらがななぞり

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なぞっておぼえる!ひらがな•カタカナ

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ひらがな:ゆびドリル

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漢字も小学校1年生から6年生まで揃っています
詳しくはここのウェブ(iphone) (android) をどうぞ
また、ゆびドリル 言葉と文 シリーズもあります


ひらがなかこうよ!

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ひらがなをおぼえよう!あいうえおにぎり

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にほんごひらがな

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最後に:
人差し指で書くのが基本ですが、 他のゆびがスクリーンにあたってしまい、うまく書けない場合は、
スタイラスペンを利用するのもいいと思います。鉛筆で書く感覚に近いので。(ちいさいときは手のちからが発達しきっていないので、ゆびのほうが楽ですが、5,6歳になれば、鉛筆を持つチカラも備わってくるはずです)

サポートしていただけたら、嬉しいです。 少しでも海外で(そして日本国内でも)日本語教育がスムーズに行くように、リサーチ目的に使わさせていただきます。