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NYで落語!日本と落語に惚れたカナダ出身の落語家のRAKUGOを観にオフブロードウェイに行ってきた

桂三輝と書いて、桂三(サン)輝(シャイン)と読む、なんて上手い名付けなのだと思った。この、カナダ出身の落語家さんがニューヨークのオフブロードウェイで2019年から英語でRAKUGO、つまり落語のロングラン公演をしているという記事をどこかで読んでから、いつか行こうと思っていた。ニューヨークで落語が観れるなんて、オフブロードウェイでとはどういうことか、興味がわかない訳が無い。そして機会があって1月に行ってきた。

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私はお笑いが好きで寝る前や仕事で疲れたとき、1人で晩ご飯を食べる時には好きな漫才の動画を見るのが癒しだ。家族とは毎週笑点を見ていた。しかし落語はというと、すごく馴染みが有る訳ではない。一度だけ東京に旅行をした時に浅草の東洋館で寄席に行った時に観たかもしれない、というような記憶だ。だから、日本語で聴く落語との比較は私にはできない。でも、サンシャインさんの英語ではなす落語という新しい世界を見せてもらった。

そうなのだ、新鮮で面白かった!英語で聴く落語が面白くて笑えることが新たな体験で発見だった。そして、彼の落語は英語だが、「日本」を感じた。話の中に日本語の単語やことばが混じっていたり、日本の文化をサンシャインさんの視点で紹介したり、そもそも落語は日本の伝統だったり、舞台セットはもろ落語でもちろん着物と手ぬぐいと扇子の小道具という視覚効果もあったのかもしれない。でも桂三輝さんが日本と落語を愛しているから日本を感じたのだろう。日本を知らない人もここでRAKUGOを観たら、ほんの少しの日本と落語への愛着をもって帰るような気がした。お客さんは日本人もちらほらいたが、そうでない人が多くて、会場みんなで笑っていた。前の方に座っているお客さんは多分もう何回も来ているのだろうという感がある。笑い声も体揺らして激しかった。落語のはなしは、日本人だから笑えるツボのかなと思っていたけれど、そんなことはない。ユニバーサルで、世界共通で人を笑わせるのだ。その事実にもちょっと感動した。サンシャインさんの腕にも。

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ショーを観る前までは、英語で話が分かるかな、という、私の英語力からくるわずかな不安があったが、桂サンシャインさんの英語は激しめに流れる川のように、勢い良く速いけれどかなりはきはきしていて、私にも聞きやすかった。そして、日本では日本語でも行っている落語だろう話を英語で話されても、言葉の壁を越えて面白かった。ただ、最初の方で三升の酒を飲んだ男の話での落ちの大事な台詞が私には聴き取れなくて、分からなかったのがある。英語は常に発展途上なので、ショーや映画も英語の勉強の一つと思っているところがあるけれど、聴き取れなくて乗れないと悲しい、がんばろう。とにかくそこ一カ所は悔しいが、その他はサンシャインさんの滑舌、表情や演技力にも助けられてほぼ全ての話分かって楽しめたのは幸い。日本語や日本のことばも微妙に交えていて、元々の落語の話を完全に英語にしていないので馴染みやすかったのかもしれない。平助や鈴木さんがMarkやSmithになってたら金髪の人物がふざけあうコメディドラマの映像が浮かびそうだ。

そして、桂三輝さんという落語家、見た目は完全に西洋の顔、金色の髪の毛で恰幅のいい体型で、いくら着物を着ていても海外出身だろうことは見て取れる。でもじゃあどうして落語をしているのか、どうしれ英語でニューヨークで、と色々気になった。落語の最初の方に身の上話でも言っていたが、三輝さんは日本を訪れた時に、小さな焼き鳥屋で観た落語に魅せられたのが始まりだという。その後、桂文枝師匠に弟子入りし、3年間は弟子としての生活、師匠の身の回りの世話、掃除洗濯何でも行い、そして晴れて落語を教わり桂三輝という名をもらってデビューしたという。だから、彼は日本語も堪能で、日本では日本語で落語をしているらしい。英語がネイティブ並みに上手ですねと言われた、という。冗談だ。そして、20年以上日本に住む事になり、日本の400年以上続くこの伝統芸能の落語を愛し、日本を愛しているという。今はニューヨークのオフブロードウェイで週に2回の落語を行っているが、これまでもカナダやイギリス、アジアなど海外で英語で日本文化の落語を広めたいという思いで落語の公演を行っているらしい。世界やニューヨークで落語を行っているのは、根ざしているのは、桂文枝師匠の話を世界にも伝えたい、日本が好きで、日本の落語を愛している気持ちのようだ。

外国人落語家はいったい何人いるのだろうか。お相撲さんは外国出身の人が増えて久しいが、桂三輝は100年ぶりの、外国出身としては2人目の落語家だという。現在は唯一だということだ。ちょっと感動する。ここまで日本の落語に惚れ込んで、日本独特の師匠と弟子の文化の中で修行をして、そして世界にこの落語の面白さを身をもって伝えているという姿に、自分が一生かけてやりたいことを見つけてそれを追い求める落語家の格好のいい生き様を見た。

そういえば、今は亡き桂歌丸師匠も、死ぬまで落語をしたいと言って、点滴をしながら身体が限界の状態でも落語をされていたのが思い浮かぶ。歌丸さんの落語は一度観たいと思いながら先延ばしにして、ついに観られなかった。なのでテレビのドキュメンタリーでの映像で観たのがその満身創痍なことを隠して生き生きと落語をする歌丸さんだ。一つの事を極めて、その仕事を愛して一生かけてやっていく人の姿というのに私は胸を打たれる。そしてそんな歌丸さんを思い出すといつも泣ける。もし私が女優なら、涙を流すシーンでは歌丸さんを思い浮かべるのが鉄板だろう。

サンシャインに話を戻すと、youtubeにもkatsura sunshineで検索すると、彼のチャンネルがあり、彼の英語での落語がどんなものか観られる。

でも、ニューヨークに住んでいたり旅行の機会があるなら、サンシャインさんの落語のショーが2020年の春までは少なくとも続いていると思うので、ぜひ生でいきいきとした彼の落語を最初から最後までのひとつの舞台として観てみてほしい。シアターは大きくないので、劇場のアットホームな雰囲気のなか楽しめると思う。月ごとに話す内容を変えているらしいので、今度は違う月に行ってみようかなと思った。1月は少しアダルト向け有り。チケットだが、 todaytixというチケットの総合サイトは、日や席によって割引もあるのでよく使っている、この落語も割引があった。

あなたもぜひニューヨークで桂三輝のRAKUGOを楽しんでみてはどうだろうか。

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