ばんざい

次女の服を脱がせるときに、「ばんざーい」と声をかけている。その所為で次女は、万歳=脱衣、と誤学習してしまったようだ。
申し訳ない。

「ばんざいは?」と聞くと、服の裾に手をかける。お風呂前のはだかんぼうの時ならば、裾のあたりを手でまさぐり、困惑した表情を向ける。

可愛い。
そして、申し訳ない。

長女のスイミングの日だった。
プールの上には観覧席がある。コロナのため、座ってはいけない席にはその旨が書いてある。
長女のクラスはまだ、浅いプールでレッスンをするのだけれど、浅いプールの真上の観覧席は既に満席だったので、離れたところに座った。

始まってしばらくして、目で追っていた子が我が子ではないことに気づく。遠いのと、角度的にガラスの反射がきつく、良く見えないのだ。
皆、同じ水着と帽子で、長い髪は帽子の中に入れてしまうので、体型と動きで見分けなければいけない。体型も、同じような年の子の中に入ると特徴のある子ではない。
目を凝らして探すと、いた。テンション高めに飛び跳ね、他の子が用心深く立ち上がり歩く大きなビート板の上に、勢い良く飛び乗って転んでいる子が長女だ。
長女はスイミングに通い始めて日が浅いが、水がそれほど怖くないらしい。プールサイドから水の中へ飛び込む時も敢えて高く飛び、オーバーなリアクションで入水する。水に浮いたボールも躊躇なく取りに行く。興奮しすぎて先生に窘められている時には笑ってしまった。

しかし、この内容のクラスからはもう進級したのでは?もしかして、落ち着きがなさすぎて降級させられた??
不安に思い、立ち上がって浅いプールを凝視する。
観覧席の真下にもう一群が、かろうじて見える。
そこに長女がいた。

私はよその子を30分以上、我が子と思って見ていたらしい。誰も知り合いはいなかったけど、ひどく恥ずかしかった。

しばらくして、長女たちのクラスが、私の真下の25mプールまで来た。プールサイドから足の着かないプールまで飛び込む、という課題を長女は、敢えて高く飛び、オーバーなリアクションで入水した。そして顔を出し、満面の笑みで、先生に喋りかけた。喋りすぎたのか、もう上がりなさい、と促されていた。
大丈夫、大して間違ってはいない。と私は自分に言い聞かせた。


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