前髪

8ヶ月になった次女は近ごろ、どんどん当時の長女に似てきた。同じ月齢のころの写真をシャッフルすると、夫や長女もどちらの写真か間違えるほどだ。
そんな次女の前髪を切った。
長女はおでこの半分くらいのところでぱっつんの前髪である。それが似合っているので、次女も絶対に似合うと思ったのだ。
ところが、似合わない。どこかちぐはぐな雰囲気になってしまった。

ごめんよ、と心の中で呟きつつ、思い出したのは学生の頃の記憶。通ってた美容室にカットをしに行った時のことだ。
特にどうしたいと考えてはおらず、美容師さんの「たまには前髪作ってみるー?」の一言で、じゃあ。と伸ばしていた前髪を切ることに決めた。
ところが、一、ニ回ハサミを入れられたところで、少しばかりの悪い予感がした。
「あの、やっぱり前髪似合わないような…」と、声を掛けてみる。きっと彼女なら、そんなことないよ。こういう風にセットすればいいんだから。と良いアドバイスをくれるだろう。と思いながら。
彼女は言った。
「あ、そう思う?私も思った…」
かくして、数年ぶりに前髪を作ることは阻止された。それから十年強、依然前髪はないままだ。

だからか、自分にはないぱっつん前髪に強い憧れがあって、前髪があろうとなかろうと可愛い娘には変わりはないのだが、できたら似合ってほしいと願うばかりである。

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