西へ

実家から自宅へ、元旦のうちに戻ることにした。
二時間ほど高速道路で西へ向かう。
ちょうど進行方向に太陽があり、眩しかった。
スピードを出さずに運転する。

トンネルの途中で前の車たちがハザードランプを点滅させていた。
渋滞の情報はなかったはずなのに、と思いながら私もハザードを付け、減速した。
出口に近づくにつれその理由が分かった。
西陽だ。
トンネルの出口から、そこそこ深いところまで、真っ直ぐに西陽が届いていた。
前の車に西陽が重なる、前の車が消える。
追突しないよう減速する。

凶暴な陽射しだった。
トンネルを出た後も、道路の向きやアップダウンでたびたび、前の車を見失い、心臓がキュッとした。
遮られるもののない西陽は、吸い込まれそうに美しかった。

助手席で寝ていた長女が起きた。
まだ寝ぼけているようで、まぶしい…と呟きながら前を見ている。
直接太陽を見ちゃだめだよ、と教える。

気がつくと、周りの車の殆どが、ライトを付けていた。
ライトを付けることでリアのランプを点灯させ、後ろの車に見やすくさせているのだと気づく。
同じ速さで走る見ず知らずのドライバーたちが、強大な敵に向かって走る。
そんな一体感を感じた。

西陽は次第に輝きを弱め、ビルと山の向こうに沈んでいった。
富士山の影が見えた。

空の下の方を見事な夕焼けが染める頃、高速を下り、下道を走る。
川面に夕日が映える。
そして自宅に着いた。
エモかったよねー、と夫に言うと、そうだね、と笑った。

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