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机上のリアリティ

文字で描くリアリティのある情景は、
一定時間、読み手を現実世界から切り離す。

描写がリアルであればあるほど、
イメージの世界を長く漂わせることができる。

文字を用いて情景を描写する行為は、
目で直接見るよりいささか抽象化されたようで、
その実、抽象化の経由こそが、
読み手主体で結像させたより強いイメージを作り出す。

頭蓋骨の内側と脳の境目に、
毛細管現象の如く行き渡らせた精細な主観。

そういう意味に於いて、
文字が切り取る情景は、写真や絵のそれを超える。

言葉選びと文体、それらを並べたリズムの良さも、結像に欠かせない。
声に出して小気味良い文章は、目読しても頭と胸にスッと収まる。

書き手と読み手の主観が文字を介して結び付き、収まった時、
机上に共感が生まれ、間もなく感動に変わる。

現実世界に縛られていた読み手がイメージの世界へ放たれる。

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