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プロレスラー本人が作ったプロレスラー本人のプラモデルを組んだ

 どういうことなんですか!?

 何を言っているかまったくわからないが、本当にそうとしか言えない。

 というわけで1/12スーパー・ササダンゴ・マシンである。
 文字通り、スーパー・ササダンゴ・マシンというプロレスラーのプラモデルだ。プロレスラーのプラモデルといえば、1/20スケールのPLAMAXで出ていたが、1/12となるとおそらく世界初だと思われる。
 フィギュアの世界に目を転じてみれば、海外メーカーを中心にこのくらいのスケールのプロレスラーのフィギュアは結構出ているので、1/12で可動するプロレスラーを出すのはそうびっくりするような発想ではないだろう。
 
 だが、このキットの真に特筆すべきところは、プロレスラー本人が作っているというところだ。
 どういうことかというと、スーパー・ササダンゴ・マシンは金型メーカーの社長を兼業しており、そのノウハウを注入して、社運を賭けて、自分自身のプラモデルを一から創り上げたのだ。
 これはのっぴきならない。
 ちょうどこの情報を聞きつけたときに再販されていたので、面白半分、残り半分は……1/12のフィギュアやプラモデルと組み合わせて遊びたい目的で購入した。
 5500円である。

 無事組み上がったものがこれになる。
 見た目としてはリアル……というか若干ゆでライクなデフォルメが入っている。それでもでっぷりとした中年体型は見事だ。
 現代のプラモデルにおいて、実在人物を立体化するにあたっては3Dスキャンしてデータを取るのが定石となっているが、このキットはCAD一本勝負とのこと。
 スーパー・ササダンゴ・マシン本人直々に「組み立てが難しい」と謳っていたりインストがガレージキットライクな手作り感満載だったりスーパーミニプラ同様オールABSだったりすることから、ガンプラ旧キットやガレキみたいな接着剤必須で嵌合ガッタガタのものが届くかと覚悟していたが、パーツ数はシンプルに抑えられており、接着剤も不要で、思っていたよりは難しくなく組み上がった。
 確かに現代ガンプラのように合わせ目が隠されているとかそういうのは皆無だが、おおよそ2000年代のHGのような感触がある。
 スーパー・ササダンゴ・マシンがプラモデルを製造するのはこれが初めて、プラモデルの設計も初めてとのことだが、組み上げていくうちに「これ、『初めてにしては……』とかそういうコトを抜きにして出来が良くないか?」と思うようになっていく。

 パーツでの色分けは2022年発売のHGガンダムエアリアルに迫るほど優秀である。
 マスクの部分がパーツでしっかり色分けされていることがおわかりになるだろうか。
 
並みのキットだったらこのあたりはシールか塗装になるところなので、驚異的と言わざるを得ない。

 コスチュームの紫のラインもパーツでの色分けとなる。
 このキット、とにかくパーツ単位での色分けにすさまじい執念を放っていて、組むだけでカラフルなスーパー・ササダンゴ・マシンが目の前に現出する。

 オプションとして開き手と持ち手(造形が凄く独特)と、リングで使用されるノートPC、そしてチャンピオンベルトが付属する。
 試合中を再現したかったので、チャンピオンベルトはあえて取り付けていない。
 流石にノートPCは白の成型色で塗装が必要だが……画面部分にはとんでもないものが入っている。それが何かは実際に組んで確かめて欲しい。

 色分けは非常に優秀な反面、可動面はものすごく微妙。
 各所にポリキャップが使用されているので本当にHGのような感触がある反面、二の腕のロールなんてものは一切なかったりそもそもパーツ同士が干渉して可動を阻害していたり足首のボールジョイントがたいして仕事していなかったりとツッコミどころは多い。
 ただし、膝部分は二重関節になっており、深く曲げることが可能になっている。
 何故そこだけこんな優秀なのかはわからない。
 一つはっきりしているのはスーパー・ササダンゴ・マシンがフィギュアライズやメガミデバイスといった先発品を全く知らないままこれを製作しているということで、それがこの独特な可動の原因になっているのだろう。

 しかし、「プロレスラーだからとても可動域を広くして技をかけられるようにしたい!」という考えの真逆を行くのは潔い気がする。
 造形技術が進歩している現代だと忘れがちだが、立体物としてのプロポーションと可動域は元来トレードオフであり、このキットは前者を選んできちんと遂行できているところが偉いと思う。

 さて、肝心かなめの1/12スケールフィギュアとの組み合わせだが……1/10の創彩と並べてもデカい。figmaやフィギュアーツというよりは、FAGやアメトイサイズと併せて遊ぶのがいいだろう。
 このサイズの日本の覆面レスラーの立体物はなかなかないため、横に並べると「プロレスファンとレスラーの2ショット写真」みたいな雰囲気が味わえる。
 みんなもお手持ちの美プラをプオタにしよう!

 いちばん組み味が近いと思ったHGABシリーズとも並べてみる。
 これはこれで謎のタッグマッチ感が出る。
 合わせ目が一切考慮されていなかったり、可動が制限されていたりといったところがこのあたりの時代のHGなんですよね。
 ただ、色分けに関しては水星HGに肉薄しているのは確かで、そのまま組むもよし、さらにそこからステップアップして改造やディテールアップ(実在レスラーのディテールアップとは……)を試みるもよしという良キットに仕上がっています。
 プロレスラー本人が自分自身のプラモデルを作成した、と聞くと「素人の道楽のガレージキット的なものでしょ?」と尻込みしてしまいそうになるが、実際は本気も本気の間口が広いキットになっている。
 社運を賭けた、とは伊達ではないのである。
 

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