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脱糞の目覚め

朝、父の脱糞の音で目が覚めた。
目覚めとしてかなり最悪な部類だと思う。

私の部屋はクーラーがない。
リビングから廊下を通して、扉をあけ放ち、私の部屋に冷風を送っている。
その開け放った私の扉のすぐそこにトイレがあり、
そのため、私の目覚めは父の脱糞の大きな音によってもたらされるというわけである。

私の部屋になぜクーラーがないのか。
話は単純だ。クーラーを買うお金がない。

私は現在働いていない。双極性障害とADHDという精神の持病があり、働くのが難しい体調なのだ。

お金を稼げず、実家暮らし。20代も後半に差し掛かったが、親の世話になっている。私の親は優しい。「働ける体調になったら、無理せず働いたらええんよ。」と言ってくれる。

しかしその実家も、もれなくお金がない。
私が小さいときからずっとそうだった。不満はない。

幼少期から好きな習い事をさせてくれた。ずっと続けさせてくれた。
年間かなりの額がかかったと思う。感謝している。
だが、自分の家が微妙に「貧困家庭」だということは小さな時から思っていた。
明日、食べるものに困るほどではない、着るものと食べるもの、寝る場所はちゃんとある。だけど、毎月まとまったお金を貯める余裕はなく、家電製品を買うのは困る程度の貧困。

私はそんな「微妙な貧困」がちょっと辛かった。

私の部屋にクーラーがあれば、扉を閉めて眠れるのにな。
私が稼げたら、一人暮らし出来るのにな。
私が家にお金を入れられたら、両親ももっと楽なのにな。

朝、父の脱糞で目を覚まし、
ベッドの中で考える。


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