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#読書の秋2022

読書レビュー「その峰の彼方」笹本稜平

───人はなぜ山に登るのか という問いに正面から愚直に挑んだ山岳小説だと思います。 主人公の津田悟は冬のマッキンリーの難ルート単独登攀をして、遭難。 友人の吉沢と地元山岳ガイドたちによる捜索行を通して、 津田はなぜ危険な単独行に挑んだのか?安否はどうなのか? という事だけに焦点を絞って、 余計な伏線を張らずシンプルに描いています。 冬のマッキンリーと言えば、冒険家の植村直己氏が遭難した山としても有名で、ヒマラヤのエベレストと比較してもその危険度は高い山。 と、素人でも知

読書レビュー「空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む」 角幡唯介

初版 2012年9月 集英社文庫 あらすじ チベットの奥地、ツアンポー川流域に「空白の五マイル」と呼ばれる秘境があった。そこに眠るのは、これまで数々の冒険家たちのチャレンジを跳ね返し続けてきた伝説の谷、ツアンポー峡谷。人跡未踏といわれる峡谷の初踏査へと旅立った著者が、命の危険も顧みずに挑んだ単独行の果てに目にした光景とは―。第8回開高健ノンフィクション賞、第42回大宅壮一ノンフィクション賞、第1回梅棹忠夫・山と探検文学賞。(アマゾン商品紹介より) 角幡さんは、僕がこれまで

読書レビュー「旅をする木」星野道夫

初版 1999年3月 文春文庫 つい数日前ぼんやりとネットサーフィンしていて、ふと本書の文庫版カバー写真が目に留まり、リンク付けしてあったアマゾンで内容を調べた時、恥ずかしながら僕は星野道夫さんという人を初めて知りました。 19歳の時、神田の洋書店で見つけたアラスカの写真集に魅せられ、住所もよくわからずあてずっぽうでアラスカインディアンの村に直接手紙を書いたところ、思わず村長から返信があり、ホームステイに招かれる。1978年26歳でアラスカ大学に留学し、以来、アラスカを拠点

「流星ひとつ」沢木耕太郎

初版 2016年7月 新潮文庫 あらすじ 何もなかった、あたしの頂上には何もなかった―。1979年、28歳で芸能界を去る決意をした歌姫・藤圭子に、沢木耕太郎がインタヴューを試みた。なぜ歌を捨てるのか。歌をやめて、どこへ向かおうというのか。近づいては離れ、離れては近づく二つの肉声。火の酒のように澄み、烈しく美しい魂は何を語ったのか。聞き手と語り手の「会話」だけで紡がれた、異形のノンフィクション。(アマゾン商品紹介より) また長くなって、言いたいことぼやけるかもしれないからは