ドライバープロフィール 後編 マイカートが欲しい
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カートに乗りたくない私と、レーシングドライバー廣田築選手の会話。
ビビる私に廣田選手が「今度、イタコで練習会やるから来てみたら」と誘ってくださる。ついに私もカートに乗るのか。恐ろしい。。。
迎えた当日。イタコへの道中で左足ブレーキに挑戦する。想像を超える減速Gが立ち上がり、助手席のフライドポテトが吹っ飛ぶ。思い出すトラウマ。おうち帰りたい。
この日、誰よりも低いモチベーションで、誰よりも遅く、昼過ぎにサーキットに到着する。先着していた猛者たちは午前中のウェットも走りこんだらしく「良い練習になった」とか「午後はドライだからタイム出す」などと意味不明な供述をしており、何を言っているんだと。雨は危ないだろうと。
そしてついに20年ぶりのカート。押し掛け不要という文明に感激するも、振動がやばい、Gがきつい、スピード感がすごい、コーナーこわい、語彙が乏しい。。。
ただ、廣田選手が先導してくれるおかげで、とりあえず「カートに乗ってる感」は堪能。「乗れる、俺、カート乗れるぞ」!と思った瞬間、前輪が外れて吹っ飛ぶ。やっぱカートは半端ねーな。その日は主に持ち場(ピット)を守ることにする。
その後、イタコはちょっと遠いので、近所のサーキット秋ヶ瀬にて廣田選手に引っ張りレッスンをしていただく。廣田選手はすごく紳士的で真面目な方である。相手がアマチュアドライバーであっても、その人の課題に合わせて真剣にプログラムを組んでくれる。良い意味で手加減が無い。
その廣田氏の真摯さが、私という絶望的にセンスが無い人間に向き合ったとき、いけない化学反応を起こす。
そして迎えた次の自主トレ。もちろん指導された「踏み抜く」をやるつもりは皆無である。出来ない言い訳も完璧に考えておいた。
しかし、秋ヶ瀬の短いストレートを立ち上がり、1コーナーが見えたとき、なぜか急に廣田氏の声が聞こえた。
「おれは限界を超えるんだ!!」とヘルメットのなかで叫び、踏み抜いた。
次の瞬間、ドンって言った。青いスポンジに刺さった。
スポンジなのに痛い。こいつ硬いなと思った。
その日の帰りがけ、秋ヶ瀬の鹿島さんがボソっと「マツダさんの先生はドSですよね」と嬉しそうに教えてくれた。もう3時間くらい早く知りたかった情報である。
帰り道、マイカートを買おうと決意した。遅いけど、下手くそだけど、自分のカートがあったらうれしいなと思った。そんなこんなでマイカートを手に入れ、だんだん楽しくなって今に至る。
※追伸
これだけ見ると廣田選手が危険な人みたいですが、むしろそうではなく、素晴らしい先生です。そのことについては長文になるので、次回書こうと思います。廣田選手との出会いがなければ私はカートに乗っていませんでした。