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川柳連作「風呂(ささやかだけれど、役にたつこと)」

こんばんは。西脇です。
予告どおり、川合大祐さんの川柳講座『世界がはじまる十七秒前の川柳入門』第8回に提出してやらかしました、題「風呂」の句たちを上げます。

連作です。
60句超あります。
お時間体調よろしいときに、ごらんください。

※テキストも載せますが、できれば↓のpdf版でごらんいただきたいです。
 かさねておねがいいたします。


川柳連作「風呂(ささやかだけれど、役にたつこと)」

   
   "――Eat up. Eat all you want. There's all the rolls in the world in here."
                Raymond Carver『A Small, Good Thing』

  チョコレートケーキに沈む野火の星
  猪首から生える透明の十字架
  めくってもめくっても土曜日の劇
  月曜の事故を足だけよじのぼる
  昏睡でなければ百年の孤独
  〽バックします 暗い力のの上で
  問題。νυξですよ。来てくれないと。
  おとといの痣に呼ばれる風呂の中
  言語野へ車輪は出たり入ったり
  昏睡でなければ千年の愉楽
  昏睡とされるやしがない耳鳴り
  くだらないエレベーターをさがしてる
  ネルソンの傷を吹き出す鳳仙花
  煙吐くぬるい涅槃を真似しつつ
  た、だ、し、さ、とつついて下へ参ります
   
  「早朝五時」を唄うエンジン
  犬「ぺちゃぺちゃ」(わたしは兎。) 犬「ぺちゃぺちゃ」
  問題。ночьですよ。忘れちゃったのかい?
  犬「ぱたぱた」(わたしはのろい。) 犬「ぱたぱた」
  その白むほどに渦巻くわたし/わたし
    わたし溺れたかと子ども日曜が
    わたしでずぶ濡れを暗渠ながめてた
    わたしの水子どもの中背負ったを
    わたし延び生き情けなくてしまうな
    わたし様変わる神から助けてよ
    わたしないので愛せ抱いた殴って
    わたし罰で変わらないとしてわたし
  言語野へ車輪は出たり入ったり
  鳳仙花まみれの部屋にいたかった
  丸まった肩にも赤がない
    *
  めが
  あ
  いた
   *
  あ ぱぱ まま
  くさい
  みんな しろい
  くさい
   *
  さよならの
 (おはようの)
  いき  ひとつ
 
  ほね
 
 
  並木道 定型の慰め色の
  みなぎる善意 者共目を抉れよ
  箱のからっぽ あひるさん眠れない
  自転車と睡魔 男は下に敷く
  電話電話電話 さんざめくわたし
  問題。밤だよ。用意してあるから。
  ころすならまずパン屋から――そういう日
  ラジオは倍音――ころせころせころせ
  ころした後の空腹に――駐車場
  星も見ない――ころされを仕込む男
     光はなべてパン屋
     母と父だと名乗る
     なぞれるくらい匂う
     賢さの等級
     怒りで砂岩みたい
     腐ったケーキしたい
     落ち着いたお代わり
     夜じゅう泡稼ぎ
     死亡に埋まる
     日々ろくでなす
     詩を告げる
     私を告げる
     死    を
   
   * 

  死をいでぬくもればわたしたち
  まっさらなテーブルは迎えの準備
  手のひらがふたつなら耳貸しなさい
  主語もほどけるほどあたたかいコーヒー
  「食べることです」
  世界中のゆげをあつめて待っている
  幕間に燃え何千のおめでとう
  それぞれの役それぞれの息を吸い
  また立とう蛍光灯の射す方へ
  食べる。飲む。駐車場。麦。降り積んで。
 
    *
 
  かたる、ってさ、あかすことだよ、スコッティー、




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