いつかの日の暮らしを決めたこと
去年、結婚して2年目に、家を買うことになった。
未だ絶賛建築中で、年末に入居予定である。
引っ越し先は、今の家から40mほど西に離れた分譲マンションになった。
結婚と同時に、10年ひとり暮らしをした部屋から夫が暮らしていた部屋へ、夫の同居人を追い出して、おさまった。今の家は、夫がもう9年くらい住んでいる部屋で、私の前にルームシェアが2人いて、マンション自体がわたしと同い年の中年である。配管を通すための壁の穴が荒っぽい開けられ方をしていたりして、その穴の奥のことはあまり考えないようにしている。
家を買うことは、私の人生計画には全然入っていなかった。
結婚したばかりだし、まだまだ仕事も若手だし、自分だけの家だなんて途方もなく贅沢すぎる買い物だと思っていたくらい。
ふと気が付くと、近所で解体工事があり、更地に工事パネルが立ち、土台工事が進んでいた。散歩や買い物がてら、夫とは「ここに新築マンションが建つのは珍しいね~」と話していた。
私の方が”新築マンションが建つんだ~”くらいの認識にとどまっている間、夫婦が好きなラーメン屋さんの店舗が近所に開店したり、夫が大好きなホームセンターが近所にできたことから、夫の中では、おうち欲が高まっていったらしい。
今の住居は、建物自体は中年だが、立地は通勤にも生活物資の調達にも便利で、私も夫も通った自然あふるる大学が近かったりして、夫婦のいずれにも、この場所から引っ越す動機がなかったというのも強く影響していると思う。
マンションサロンというものがありますね。オサレなモデルルームを併設した販促事務所。
サロンも近所だし練習がてら話だけでも聞いてみっか、と行ってみたら、夫はとても欲しくなったらしい。私の耳元で、お目当ての部屋番号を囁き続けるようになってしまった。
夫は物欲というか所有欲が全然ない人なので、正直かなり驚いた。
が、夫がちゃんと親類ほうぼうに話を通したり、ローンと税制を調べてエクセルシートで返済計画の最適化をして(惚れ直した)くれたので、私も”夫が欲しくて手に入れる方法があるなら良かろう…”と思い始め、2週間くらいで購入を決めてしまった。
文字通り、人生で一番高い買い物である。
きゃーこわい。
たった2週間ではとてもじゃないが”家を買うぞ!やったー!”という前のめりになりきれず、いつのまにか家を買うことになったんだ、というのが正直な気持ちであった(実はいまも)。
夫は、自分の家というものをとても大事に思っていて、おうちで過ごす時間を楽しむのが上手な人だ。
私と夫は、古式ゆかしく、婚約→結婚式からの役所駆け込み入籍届→同居の流れだったので、結婚前に夫婦が住む部屋をどうしようかと話したことがあった。結論としては、結婚式を挙げつつ2人分引越し準備するのはしんどいよね、と夫の部屋に転がり込むことにしたのだが、そのとき、夫は、手あかのついてないまっさらな部屋を一緒に作りたいって気持ちがあるんだよ、と話してくれていた。
結婚後、引越しはほとんど話題にならなかったけど、夫の中では、ずっと自分の家を手に入れたかったのかもしれない。まっさらな、自分のためだけの家で安心したかったのかもしれない。
夫が安心して暮らせる家になるといいな、と思っている。
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