Twitterが永久凍結した話

「ポケットモンスター」には「ぜったいれいど」なる技が存在する。

漢字に直すと「絶対零度」となる。極限の冷たさ。冷却の限界点を意味した言葉であり、-273.15度の世界を表している。
ポケットモンスターにおいてはその名の通り「ぜったいれいど」は極限の冷たさで相手を凍らせてしまう一撃必殺技としてその名が広く知れ渡っている。
されど相手を一撃で仕留める技というのはそれなりのリスクが伴う。
ポケットモンスターでは「ぜったいれいど」が敵に当たる命中率は30%と命中する確率は低い。外してしまえば相手側にスキを与えることになり致命傷を負ってしまう可能性があるリスキーな技なのだ。

私がポケモンをやっていた頃でも「ぜったいれいど」は割と多くのプレイヤーが戦法の一つとして採用していた。
しかしながら私は「ぜったいれいど」を使用するポケモンが相手でも妙な安心感があった。
その安心感の正体とは先に挙げた「命中率」の低さだった。
当たってしまえば確実に死に瀕するが、当たらなければこちら側が有利に立てる。しかもその命中率は僅か30%。外れる可能性が高い。
故に相手が「ぜったいれいど」を使用しても外れるだろうという変な確信が常にあった。

ただ忘れてはいけないのは、あくまで命中率が「低い」のであって絶対に「外れる」わけではないのだ。

その日、世界は凍った。

あくる日の夜23時過ぎ。
私はそろそろ布団に入ろうと思い、その前にフォロワーから来たリプライを返そうとキーボードを緩慢な動作で打っている際に妙な違和感を感じた。

普段なら顔を出すことが無いtwitterの青いメッセージウインドウがその色をイヤに光らせながらキーボードを打つ私の手を止めた。

「アカウント凍結中」

……嫌な汗が走る。
何かの間違い或いは見間違いだろうとF5キーを押すが状況は変わらないどころか悪化していく。
次第に長年慣れ親しんだTLが波打ち際に消える砂城のごとく徐々にその姿が瓦解し、残ったのは公式アカウントが発信する一方的な情報のみとなった。

「ご利用のアカウントは永久凍結されています」

燦然と自己主張する私のアカウントの状態を示す一文字に私は唖然とした。

「ぜったいれいど」が命中したのだ。

アカウントの凍結はさほど珍しくない。
TLではどこどこの有名人が凍結されたとか、そんな話は割と目にするので別に変な話ではない。

だが私は自身が「凍結」に至ったことにひどく困惑した。

「凍結」に至るにはそれなりの条件が必要であるはずだ。
他のユーザーへの攻撃的は発言。twitterを悪用した反社会的行為。
私の見解では一線を越えた場合に「凍結」という判断が下されてアカウントはその憂き目に遭うと考えていた。

何か私に「凍結」に至ってしまった理由があれば納得がいく。
誰かに酷く暴力的な発言をしたとか、違法な物品をやり取りしたとか、twitterを使った反社会的な行為を行っただとか。
しかしながら私はそれに類する行為を行った覚えなど当然なく「凍結」に至ったワケが皆目見当がつかなかった。

故に貴方を凍結しますと言われても釈然としないのだ。
しかも「永久凍結」である。調べれば一番重いペナルティとのことだが、それに類してしまうほど私は何かしたのだろうか?

つーかそうなる前に何か警告の一つでも寄こしてくれ。

まるで「ぜったいれいど」が自分のポケモンに当たってしまい勝負が決してしまったようなあの感覚だ。
当たるはずがないと思っていたのに命中してしまい、敗北が決定したあの納得がいかない感じ。
「ぜったいれいど」然り「ハサミギロチン」然り「つのドリル」でも「じわれ」でもいいが、ああいう一撃必殺技が当たると大抵は納得いかないものだ。

しかしながら救済措置として「異議申し立て」が出来るとのことなので理由を求めるとともにこちら側の潔白を伝えた次第である。

なお、返信はない模様






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