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きっと元気がでる短編小説

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元気が出るような短編小説の本棚になります。
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短編小説#10 ボンジュール学園BL化計画

『ボンジュール学園』とはいわゆるお嬢様学校であった。  純白のお城のような校舎。教室や廊下、制服ですら穢れの知らない白色で統一されている。  セキュリティは最新の技術を駆使したものを使用。挨拶も『ごきげんよう』から始まり『ごきげんよう』で終わる。徒歩で登下校する者は誰ひとりおらず、送迎の待ち時間はアフタヌーンティーを嗜む。そんな絵に描いたようなお嬢様学校がこのボンジュール学園である。  だが昨年度から学校の方針でボンジュール学園は男女共学へと変わった。 『恋を知れ、さす

短編小説#6 リコーダー大作戦

 お昼休みに僕と山田君はクラスメイトの甘利《あまり》君に呼ばれて教室の隅っこに集まった。甘利君は周りを警戒しながら、今にも消えそうな声で僕らに告げる。 「決行は今日の放課後。いいか、教室に誰もいない時間を狙うんだ」  僕と山田君は目線を合わせてコクリと首を縦にふると、甘利君は爽やかな笑みを浮かべる。それから僕らの背中を力強く叩いた。 「まったく無茶苦茶な計画だよ。この計画がクラスのみんなに知られてしまえば俺たちはあと二年間、小学校を卒業するまでみんなにハブられてしまうか

短編小説#5 ホワイトデーのお返しは毒入りマシュマロでした 

 リビングのテーブルに置かれていたのは抱えきれないくらい沢山の薔薇の花束と真四角の木箱だった。二つ折りにした手紙も添えてある。それらは夫からのホワイトデーのお返しなのだとすぐに分かった。私は嬉しくなって仕事着のまま手紙を開いた。 『これは毒入りマシュマロです。召し上がってください』  空白に綴られた一行の文章。残酷な一文字が目に入り、頭が真っ白になた。紙袋が手からすり抜け、買ったばかりの花瓶が無残に割れる音がした。 もしかすると私のハートが砕けた音だったかもしれない。私は