リフレイン

わたしは別に、特別な日に高いプレゼントが欲しいとかお洒落なレストランへ連れて行って、なんて望んでいないタイプの女。でも一緒に外食して帰ったらケーキを食べるとか、それくらいはしたい。ファミレスでも回転寿司でも良いけど、ケーキはケーキ屋さんのが良いな。


Aとはもう長く交際していて、今日はわたしの誕生日。

平日の朝、いつも通りに朝食とお弁当をつくり、Aを起こす。「○歳おめでとう」とは云ってくれたけどそれ以上は何もない。Aは家を出る前に「今日も仕事、遅くなるから…」と云うのでガッカリ。

「じゃあ友だちとごはん食べて来るけど良い?誕生日にひとりでごはんつくって遅くまで待ってるのは寂しいし。Aくんの夕飯は用意できないから、自分で食べてね?」と云ってお見送り、念の為『○○ちゃんと△△でディナーの約束しました。Aくんは食べて帰るなり買って帰るなり、自分で用意してね』とLINEも送る。

その夜、わたしが友人とディナーを終えて帰る道でAと一緒になった。家に着くなり「腹減ったな~!ごはん、何もないよね?」と云うA。面食らって「朝も云ったし連絡した通り、ないよ」と返事。「これから買いに行って作るのも面倒だわ~…そう思わない?」ってさ。「わたし今日誕生日なんだけど、今年はケーキもないの?」と聞き返せば「そんな暇なかったよ」と云うので残念に思って会話を終了し、わたしは寝ることにした。

夕飯にカップ麺等は食べない人なので、諦めて買い物に行くA。帰宅して自分で夕飯をつくって食べたあと、さっきスーパーで買ったであろうチョコのおやつを持ってベッドへ謝りに来た。「こんなのだけど…ごめん」わたしは途端に悲しさが我慢できなくなって涙が出た。

「ありがとう。わたしの好きなチョコだね。でもごめんね、別れよう」と云った。わたしはもう既に限界だったのだ。実家の方で色々あって、Aにも別れようか考えていると伝えたが結局戻って来た先月、"今月中に結婚するかどうかを決めてね"と伝えたけどもう今月もあと4日で終る。今日じゃなきゃいつなんだ…じぶんで人生を決められなかったわたしが、やっと出した答えだった。

どうして、と聞くAに「わからないの?わかるでしょ」と促せば「結婚のこと?…女の人からプロポーズしちゃいけない決まりなんてないよ」ってさぁ「前々から云ってるけど、プロポーズだけは男性からしてほしいというのがわたしの理想。ここぞというときは引っ張っていってくれる人だなって思わせてほしいから」と説明すれば「引っ張っていく方も、引っ張っていきたい人を選ぶよ」なんて云い返されたから「え?じゃあもう別れようよ」と云い、涙も止まった。

落ち着いて色々話し合って「ねぇ、なんで今年はケーキがないの?去年はたくさんプレゼントくれたし、毎年ケーキは用意してくれてたのに」と聞いてみた。「元からこういうのは習慣がないし苦手だから、長年居て"ボロ"が出た。あとは単純に最近仕事が忙しくてケーキとかも買いに行く時間がなかったし」

毎日毎晩、深夜遅くまで自室や車内でPCやスマホをしてる暇があるなら、何かしらできたんじゃないの?と思ったが、そういう気持ちがないから考えもしてくれなかったのだろうなと悟った。

そこからは円満に別れ話をまとめられたものの、数日後に事件があり最終的にはすさまじく最悪な別れ方だったというのは、また別のお話。

毎年訪れるじぶんの誕生日に、別れを告げるのは勇気が要った。でも今思うと、良い人生の分岐点だった。

悲しかった気持ちだけを思い出しては毎年泣いてしまうが、わたしは今とっても幸せだから大丈夫。

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