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入眠と般若心経

 他者はどんなに気をかけてくれたとしても睡眠時間など生活の根底にはタッチできない。そこまで深く踏み込むには恋人か家族レベルの関係が必要となる。なにをどう頑張ったとて「睡眠時間を伸ばしてくれませんか」と対価を願ったとて、それは実現できない。より良い寝具用に報酬を盛るなどもあり得るかもしれないが、それは時間にまで干渉してはいない。
 自分なりに不眠と向き合い続けてきたものの、鼻の手術までして鼻呼吸の練習を初めてなおこうなのだから、やはり大きな要因は精神状態にある。呼吸も関係していのでしょうが、そこが解決されたとて入眠時の不安定さが余計に浮き彫りになったとも言える。若干、鼻呼吸ができるようになれたおかげで中途覚醒が減ったことはありがたいです。
 つねに頭の中がうるさくて、部屋を真っ暗に、できるかぎり無音にしたとて、逆に脳内の声だけが響いて苦しくなる。今は枕に頭を乗せるたび、アニメの演出方法について考えてしまい、何か思いついてしまったらそれを逃すまいとスマホを開いてメモしてしまう。その期間を抜けるとシンプルに直近の悲しいことを連想して、嫌な気持ちが反芻する。他責になることを恐れているので自分を責める癖がつくが、そんなに自分だけが悪いわけではない。けれども主観で明確に「これはこちらの責任」「あれはあちらの責任」なんて線引きできるわけもなく。そもそも「誰かが悪い」という発想も傲慢である。
 結果的にこちらが不快感を覚えただけで、特に誰も悪意……もちろん小さなやましさとかはあったかもしれないが、それくらいのことしかない。せっかく毎日写経をしているのだから、般若心経を誦じて心を落ち着ける他ない。総じて、過ぎ去ったこともこれからの未来もすべて色と空で捉える以外に安眠の方法はない。

 ものすごくシンプルに、信仰心や興味関心などと関係なく、ただただ安眠のために仏教を読んでいる。
 仏陀が率先してぐうたらと横になって瞳を閉じているのは、教えとしてたいへん正しい。

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