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にゃるらが最近読んだ本 5選2024年 1月

↑先月の。

↑去年自体のまとめです。

 2月がつらくて、投稿が3月になってしまった。

・ナムコはいかにして世界を変えたのか──ゲーム音楽の誕生

 ナムコのゲーム音楽に関する成り立ちだけで構成された1冊。とてもマニアックな一冊。ゲーム音楽どころか、「ゲーム音楽の原点そのもの」に興味がなければ何がなんだかわからない。もちろん、ナムコのアーケードゲームのピコピコ音が大好きなのですが、それはともかくとしてYMO……ひいては細野晴臣のルーツを知るために購入。

 『ビデオ・ゲーム・ミュージック』という名アルバムがある。CDも存在するけれども、やはり時代に合わせてレコードがいい。

 せっかくなので、レコードを壁に飾っている。あまりにストレートな「原点」に、ふと目に入るたびに身が引き締まる。この『ビデオ・ゲーム・ミュージック』こそ、ゲームミュージック初のアルバム、つまりはサントラであり、あの細野晴臣がプロデュースやアレンジを行っているのです。

 元からYMO自体もピコピコとしたゲーム的なサウンドを取り入れていましたが、まだ「ゲームのサントラ」という概念のない時代、細野晴臣はアルバム丸ごとゲームミュージックにしたうえで、なんとゲーム内のSEまでも取り入れたこと。ゲームセンターの騒音自体が音楽だと捉えたわけです。これが非常に気持ちが良い。
 ゲーム内SEがふんだんに使われているおかげでランダム性が生まれ、さながら実機をプレイしているかのような高揚感がある。周囲がある程度うるさい方が集中できる場合もあるでしょう。ほどよく気持ちの良いガチャガチャ感が作業にぴったりで原稿中に流し続けている。おかげで、人生でもトップクラスでリピートしている一枚となり、思い入れもひとしお。その成り立ちがナムコの歴史から詳細に一冊丸ごと描かれる。ごく一部の人間にとってはとても意義のある本なのだ。

 これはレトロ風ゲームかつナムコではないのですが、ちょうどいい動画が撮れたので参考に。プレイした各々のリズム含めてゲーム音楽。SEまで含めて曲としているアルバムは、今後もナムコがスーパーゼビウスなどで製作している。そちらも細野晴臣。
 果たして、この記事を読んでいる読者の何%が惹かれるかわかりませんが、1%にも満たない誰かに届く瞬間が堪らなくて、文章を書いていく。

・死ぬまでに観たい映画1001本 第五版

 1001本。101
本ではない。文字通り桁違いに1001本である。
 ある日、ふと自分がまだ知らない名作たちが眠っていることが悔しくてムズムズしてしまった。というわけで1001本。こうして、ただ名作たちの名前が連なっているだけでわくわくする。ウルトラ怪獣の図鑑を眺めているだけで一日を過ごせた幼少期を思い出す。というか、1001本も概要を追うのがたいへんで、本当に丸一日掛かった。

 というわけで、本書の内容含めて、気になってはいるけれど観ていない作品たちを年代別に並べてみた。あまりに多いと混乱するので、50本程度に絞る。絞ったからには観ていこう。まだまだ自分の知らない名作たちを残したまま死んでいくのは最も悲しいことだから。


・出家日記: ある「おたく」の生涯

 なんだか偶然、最近ごく一部で話題になっているLOをめぐった問題とタイミングが良い本を読んだ。まったくの偶然。
 蛭児神建、表紙を担当した吾妻ひでおのよき理解者であり、ロリータ文化の火付け役。つまり、昭和のあの時代にロリータをめぐって世間や社会と闘った人間である。自身の性的嗜好そのものが罪と扱われている事実に悩み、出家する。その過程が丁寧に描写されており、倫理について考えさせられる。
 彼が製作した同人誌のタイトルは『ロリータ』『幼女嗜好』『SMロリータ』。今以上に世間から疎まれ続けてきた人間たちの居場所を作ったとも言える。その功罪をどう受け取るかは非常に難しい。

・現代思想入門

 タイムラインで何度も見かけた千葉雅也さんの著作をようやく読んでみました。僕は、だいたい過去から現代へ遡っていくことが好きなので(先程の映画リストも古い順から観ている)、哲学や宗教に関しても、まだまだ現代に到達していない。とはいえ、年代ジャンプしたところで問題あるジャンルでもなく、現在(いま)のことを知ってみるのもどうかと遂に現代哲学へ。なんだか現環境のネタバレそのものな気がして現代の思想を読むのが怖かったのだ。
 結果としては、やはり面白い。楽しみにとっていた分、1900年代の哲学者はこんなことを考えていたのか! と驚かされる。世界大戦を乗り越えたによって、人々の考え方は良くも悪くも大きく塗り替わる。
 興味深いけれども、そのぶん悲しくもある。「現代」といってもインターネット以前。彼らが説く思想はたいへん素晴らしいものであるが、いかんせんそれは人間が人間として生きていく前提である。今はスマホを介して誰でも「人間じゃない」振る舞いができる。匿名・半匿名の皮を被ることで無責任になんでも放言できるので、本書で書かれる「人間が人間である限り人間たちはわかりあえる」(かなり僕の意訳だが)という希望は成立しない。
 逆に言えば、インターネット以後の人類の思想がまとまった本があると、また変わるのかもしれない。しかし、ネット世界はあまりに複雑会議。なかなか「全て」をまとめて語れる人間も居まい。それに、長い歴史から見ればネット以後の世界なんてまだまだ序章。この巨大な監視社会が後世どう語られるかは、まだ遠い未来の話なのです。

・if Kanon another story / Cork Board

 たまたま『ONE』リメイク発売前後の中野ブロードウェイで見つけた一冊(左)。右の里村茜とONEについてはこちらで。

 シナリオライター久弥直樹、直々の小説同人誌。そういえばdアニメストアで『Sola』が配信されましたね。
 今まで、この同人小説の存在すら知らなかった。同人誌らしい、ヒロインたちの明確な死が描かれている、まさしくif。人によっては蛇足とも感じられる。けれども、短編のひとつにある、Kanonの主人公とONEのヒロインが交流があったというクロスオーバーは、ファン歓喜である。それも里村茜だ。
 こうして、予想もしない方向でふとお宝に巡りあえる体験が嬉しくて、何百周しようとも中野ブロードウェイの散歩をやめられない。

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