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にゃるらが良いと思った曲2023年3月

↑先月の。


 今月は、僕も2曲作詞を担当しているので聴きなさい。


・MC8( Tongpoo)/坂本龍一

 3月でなくギリギリ4月のことですが、坂本龍一が亡くなりました。
 とにかくもう、こういったときには、ファンとして好きなアーティストの曲のなにがいいかを語るしか無いと思うので、TONGPOOのことを書きます。
 坂本龍一の場合、男優としても素晴らしかったので、そのことも我慢できずに書き散らしてしまいましたが。

 このライブ版のピアノTONG POO、最初に坂本龍一が次の曲で悩んでいる際に、唐突に「TONG POOお願いします」とリクエストされ、「準備してないんだけど忘れちゃったなぁ……」と困りつつも、次の瞬間からはとんでもなく美しいピアノの旋律が奏でられる。めちゃくちゃ強キャラっぽい演出で思わず笑みが溢れるほどの暖かいやりとり。
 TONG POOの坂本龍一本人によるピアノアレンジは数あれども、観客との交流やとぼけた入りからのギャップ、最後にYMO時代のTONG POOの話にも触れてくれたうえで、YMOの時が「完成」と語る様子が泣けるのだ。ここまで含めて一曲として収録してくれたアルバム編集者の判断に敬意を表します。


・カエルのおどり/Kikuo

 民族的なメロディと歌詞、そしてMVがいいですね。あまり詳しい分野ではなかったのですが、作曲者であるボカロP『Kikuo』さんの曲は視聴者から「VOCALOID幻想狂気曲リンク」のタグで愛されることが多いらしい。
 この曲のような幻想的な気分に包まれたいときは、このタグをたどれば良いわけですね。有益な情報を知ることができてよかったぜ。
 かなりマイナーなバンドなので伝わりそうにないですが、『幼虫社』をはじめて聴いた時の感覚が蘇って心地よかったです。民族音楽らしさにボーカロイドの無機質な声の組み合わせが脳に優しい。


・さらばシベリア鉄道/大滝詠一

 はじめて寝台列車に乗ったので、せっかくですから鉄道に関する曲を車内でずっと聴いていました。
 残念ながら曲中の舞台とちがって真冬ではありませんが、まだ若干肌寒さの残る季節でしたので、大滝詠一のトレンディな世界観に浸れて気持ちよかった。この曲、実際12月にシベリア鉄道に乗りながら聴くと素晴らしい体験になるでしょうね。いろんな意味で実現は難しそうですが……。
 それにしても、「とても冷ややかで残酷だけれどそこが魅力的な女性」をシベリア鉄道の冬景色に例えながら恋愛模様をなぞっていく作詞が凄すぎる。この曲の味を噛み締められただけで、もう寝台列車に一人で飛び込んだ甲斐があったというものだ。

・15 Minutes of Fame/Karl Bartos

 クラフトワークのメンバー『カール・バルトス』によるソロ曲。素晴らしい。
 クラフトワークらしいテクノと単語の気持ちよさはもちろん、クラフトワークと違った個性が足されてまったく別の聴き心地となっています。それこそYMOが解散して独立した各メンバーの曲くらい違うのですが、源流は同じであるぶん、大元の魅力はけっして外さない。
 具体的に言うなら、クラフトワーク自体はもっと全体的に「暗い」。実際、このソロ曲がリリースされた2000年からちょっと後にクラフトワークは大好きな自転車をテーマにしたアルバム『TOUR DE FRANCE』をリリースしますが、そこでも一切00年代の並にブレずにポップさのかけらもない。だからこそ良いんですけどね。
 一方、カールの方向性はそこに明るさが足された。おかげで元本家よりもとっつきやすく、ゴリゴリのテクノであることは共通ながら差別化が成されている。こっちのほうが単純にテンション上げたい時に良いかもですね。もっと脳みそを機械的にロジカルにハメたい時は本家だ。


・スコーピオンガールの貴重な捕食シーン /STEAKA

 作曲者の名前がよく見たら「捨て垢」でカッコいい。
 こういった人間では到底歌えないような曲を成立させられるからこそボーカロイドだなと感じられていいですね。
 いい意味での歌詞のチャラさがハイテンポな曲調と合わさって「今」だなと感じさせます。わざとらしく臭くならない程度にミームやスラングを散りばめるセンスがいいし、なにより耳が気持ち良い。


・ジョスランの子守唄/ゴダール

 この曲との出会い方は特殊でした。

 先月、一人旅で岡山へ訪れた際、美観地区なる場所に小さな展示会が開かれており、そこで竹下夢二の絵が飾られていたのですね。

 おお。竹下夢二は何度も楽譜の表紙を担当しているから、きっとこのイラストも曲をイメージしたものなのだろう。ならば、この少女を連想するような素敵な曲に違いないとメモを取ったのです。
 で、家に帰って聴いてみたら案の定良かった。子守歌というだけあって心を休めたい時に聴くとスーッと沁みる。岡山での想い出でした。

・Moon Over Moscow/ヴィサージ

 たまたまApple Musicで流れてきたことがきっかけで知ったので、まだよく詳細をわかっていないのですが、当時のクラブで流れてそうなご機嫌な曲調にシンセのザ・電子な音が気持ち良い。きっと、この音楽に合わせてたくさんの人々が夜に踊り狂ったことでしょう。ニュー・オーダーあたりと近しい雰囲気がありますね。
 ちょっとアーティストを調べてみたら、長年ヘロイン中毒や私生活の問題がたくさんあったものの、どうにか乗り越えて活動を再開した経緯が乗っていた。この曲を作曲した時点でキマっていたかは定かではありませんが、どことなく感じたサイケデリックさへの僕の直感は間違っていなくてなんだか安心です。
 大麻やっていようがヘロインやっていようが曲が良いならなんだっていいからね。

・BUTA/赤井はあと

 Aiobahnがお勧めしていたので聴いてみたらとても良かった。オタクのことを詰りつつも、それでも本気の侮蔑でなく付かず離れずな愛情もあるような歌詞を落とし所にしているであろう歌詞がいい。英語のおかげで余計にグローバルに「オタク」全体へ愛を注いでいるように感じられて泣ける。
 とはいえ、べつにちゃんと歌詞を和訳したわけではないので、ニュアンスは完全に僕の勝手な想像にすぎない。まずちゃんと英単語を聴き取れていないのだから解釈ですらない。でも、たぶんそうだと思うし、そうだと良いなと思います。

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