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「イケメン好き」の弁明



誰かから
「ほら、やっぱりイケメン好きじゃん」
と鬼の首を取ったように言われ

「だから最初からそう言ってるじゃん!」
と返した回数がそろそろ万を越えそうなのでこの圧倒的に好感度が低い「イケメン好き」の弁明をそろそろ真剣に考えたい所だ。



いや好きだろ、イケメンは。
ここでいうイケメンとは仕草や考え方生き方などの見えない要素では無く、
単純にスタイルが良く顔が綺麗な事である。


私はイケメンが大好きだ。


理由はシンプルに、それが自分に無いものだからだと思う。

私は自分の容姿に対し、それだけを理由に深刻に気分が落ち込むほど悩んでる程では無いが整っていると感じた事は一度も無い。

親父がヘビースモーカーだった事により人中と呼ばれる鼻の下の部分が多くの人と違ったり(何かの拍子に皮膚科で判明)
右手の小指が途中まで2本分の骨が入っていて異常に太かったり(幼少期に手術を施されず、今や放置)
おでこが世界一狭かったり(身内での評価)
と不出来を上げればキリがないのだが、まあ初期装備としてはこんなもんだろ。化粧するしまあ。と騙し騙しといった感じ。



一方でイケメンは凄い。
左右対称の顔、聳え立つ鼻筋、どこまでも奥の見える深い彫り、骨まで整ってると言わざるを得ない彫刻の様な首や手指などの数えきれない武器を駆使して見る者全てを魅了する微笑みを讃える。


どこにいっても目立ち、その場の羨望の眼差しをほしいままにし、本人は生まれた時からイケメンなのでそんな扱いにも慣れっこで涼しい顔をしている。


髪型はなんでも似合い、例え地獄のようなファッションセンスでも、世界で1番汚い新宿の地面で酔い潰れて項垂れててもなんとなく絵になる。


イケメンにこれまでの半生を語らせれば
「自分目当ての女子だけでこれまで1人もいなかった女子マネージャーが部員と同じ数入部した」だとか


「ほとんど店の端と端の距離で女性グループにナンパされた」だとか


一歩間違えばコントの様な逸話が次々と出てくる。



私がイケメンを愛する理由として、そんな自分が絶対に体験する事の無い逸話を聞ける事は大きい。


今更だが、明記しておきたいのは私はイケメンが大好きだからといってイケメンと恋愛する事だけを望んでいるわけでは無い。親しくなって逸話を聞いたり、実際に現場を目撃したり、眺めたり、「案外普通の人なんだなぁ」と感じたりがとにかく楽しい。基本それだけなんです、信じて下さい。



そりゃあ恋人がかっこよければ嬉しい。
でも私は釣り合わないし恋人に大事なのは
「勝手に家に行っていい間合い」
だとか
「どちらかに危機が訪れた時の助言の距離感」だとか
「隣で本を読んでいて、どの位の集中度からどの程度の下らない話題を振るか」
とかそういう事の方が容姿の良さの重要度を遥かに凌駕する。


だから極論、恋人の容姿はお互いが「許せる」に入ってさえいればそこそこなんでもいいんだと思う。

また、遺伝子が「馬鹿お前!そいつはお前には無理だ、やめとけ」と警告を出してる。
のかどうかは定かでは無いが、私が生物的にときめく相手は何故かいつもイケメンでは無い。


いや、なんだか話が逸れてまるでこれまでの恋人の容姿を否定してるようになってしまったけれどそんな事は決して無い。皆さん素敵です。万が一何かの拍子にこれが目についてもそっと忘れてね。



という訳で、圧倒的イケメン!もう誰の目にも明らか!眉目秀麗色男!みたいなのとはみんな現状友人関係である。


私の友人のイケメン達に限ってだが、彼等はもう何もしなくても生きられるのでは無いかという程あらゆる人々に尽くされているが、その事を人生の軸にしている者はいないように見える。


何故かあえて流行病で人と顔を合わせない期間に髪と髭を伸ばし仙人のような見た目になり、眩い顔面を世間から隠して生きる者、

筋トレに命を捧げてしまいほとんどの時間を自分との闘いに割く者、

これまで喫煙者でも無かったのに突如葉巻の魅力に目覚め、死ぬ程絵になるであろう爆イケの葉巻シーンを独り小汚い自宅で誰にも見せる事無く完結させる日々を過ごす者、

ある日突然ミニマリズムに目覚め、顔に数本垂れるだけで女が何人も死ぬような長めの髪を坊主に刈り揃え手拭いのみで生活する者、

もう人との関わりがイージー過ぎて簡単には脳汁が出なくなってしまったのかギャンブルから離れられなくなり、工夫すればそれだけで銭が稼げる顔面をパチンコ台にしか見せなくなった者、

どこに行っても驚かれ、喜ばれる事に快感を覚えたらしく都内の風俗を網羅する事に命を賭ける者、


この様に私の知るイケメン達は何故かみんなその容姿を活かしてない。少なくとも他者からはそう見えない。

実はイケメンには何か私では計り知れない様な共通の苦悩なんかがあり、みんな奇を衒った行動をわざと取っているとしか考えられない。


もしも私が彼等の様な容姿だったら速攻で大金持ちのヒモになり生涯遊んで暮らすだろう。

まあそこまでは厳しくても、もうちょっとくらい恵まれた容姿を活かす生活をして豊かに過ごすに違いない。


そんな邪悪な考えを持っているから私は端麗な容姿に生まれなかったのだろう。


きっと純粋に自分を追求する者の魂にのみ、イケメンは宿るのだ。



なんと「イケメンが好き」の言い訳を考えたら魂の真理に辿り着いた。
これを説明すればもう誰も私のイケメン好きに文句はつけられないはず。今後はそれで乗り切ろう。





追記
もしイケメンの方が読んでおられましたら早急にプロフィール記載のTwitterからご連絡下さい。悪い様にはしません。
心待ちにしております。

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