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豊津徳【HozuTalk】10「ポップとアート」

東京画廊の山本豊津とバラエティプロデューサーの角田陽一郎がアートを巡る知のライブトーク
テーマは「ポップとアート」

東京画廊

金田勝一個展 『OUR HOUSE』2021/6/12–7/17

 豊津徳も寿司特も週間ICUCも、未熟者の私にとってはノートを用意して聞きたいもの、できれば教科書とか読み物として欲しいもの。文字起こしが趣味になって本当によかった。
 私の趣味の文字起こし。月イチのお楽しみ【豊津徳10】です。

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角田 おはようございます。みなさん聞こえてますでしょうかね?今日は豊津徳【HozuTalk】の10回目記念ということで。またまた東京画廊に来てしまいました。今日は金田勝一さんの 『OUR HOUSE』という個展をやってるので。先週の土曜日から始まったばっかりなんですけど。今日はたっぷりと山本豊津さんに解説して頂きたいと思います。…入っちゃっていいのかな? ─コンッコンッ─ あぁ!どうも!

豊津 どうも!

角田 豊津さんでございます。どうも、こんにちは!

豊津 どうも、こんにちはー!いらっしゃいませ、どうぞ!

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角田 また今日はガラッと感じが違いますね。

豊津 そうですねぇ。非常に前回は静的な感じだったんだけど。

角田 「書」でしたもんね。

豊津 動的な感じで。はい。

角田 ってことで。今回は金田勝一さんの 『OUR HOUSE』という。私たちの家というテーマでございますが。

豊津 80年代のロックバンドのマッドネスっていうのがいて。

角田 ああ!はいはい、ヘビメタの。

豊津 そこの曲名なんだって。

Madness - Our House (Official 4K Video)

角田 あ!そうなんだー。

豊津 ちょうどロンドンのサッチャー政権の下の下町をイメージして出来た曲らしいんですよ。

角田 そっか。だからちょっと…ロンドンの下町なのにヤンキーっぽいって言うなんですけど(笑)

豊津 彼自身は京都の、京都私立芸大で先生やってるんですけど、住んでるところが亀岡ってところ。で、亀岡に住んでるんだけど京都に居ながら京都の風景が一切無いんですよ、これ。

角田 ああー…、全然無い!

豊津 亀岡の側にある国道かなんかのシーンを全部描いたらしいです。僕から見ると、、、

角田 国道9号線かな?そうすると。

豊津 そうそうそう。室町時代によく描かれた洛中洛外図。

角田 はいはい、屏風。

豊津 初めてあれは小民の風俗まで屏風の中に描き込んで。それを現代版じゃないかな?っていう感じです。

角田 あ!ボクこの色の、ちょっと、なんて言うんですか?金属の黄色っぽいのって、洛中洛外図屏風の色っぽいなーってちょっと思ってたんですけど。ちょっと勘が当たってましたよ(^^)

豊津 そうそう。だから普通は箔を貼るでしょ?彼の場合は箔っていうのは金だけど、彼はプラスチックなんですよ。イメージが。だから表面をプラスチックのプラモデルに色を塗るように作り上げたの。

角田 …わざとやってるんですねぇ〜。

豊津 そう。だからツルツルしてるの。

角田 ちょっと1回金田さんの解説をして頂いてもいいですか?

豊津 はいはい。金田くんは現代美術の中ではポップカルチャーを代表するような作風で。

角田 そうですよね。それこそ村上隆さんとかと、すごい共通するものを感じますけど。

豊津 で、やっぱり僕たちの時代は完全に1970年以降は消費社会に入って、ポップカルチャーっていうのがもうアートの全面に出るようになったんで、今の若い人達は僕たちが見てる風景と全然違う風景を見てるわけですね。そこへまたSNSっていう、(角田さんが持ってるスマホを指差して)こういう、、、

角田 そっか、ソーシャル・ネットワーク・サービスとこのスマホがね。

豊津 そうするとこの上(スマホの上)で見てる画面って、この光沢ですよね。映像だから。だからそれが彼らにとっての自然だから。

角田 そっか。だからポップアートみたいなものの方がむしろナチュラルというか。

豊津 そうです。彼らにとってはそれが自分の日常の風景なんですよ。僕たちのころはまだ高尾山とかね(笑)

角田 っはっはっはっは!なるほど!!ボクだったらマザー牧場ですけどね(笑)

豊津 そうそう。だからそういう世代間の違いみたいなのもあるし。

角田 ちょっとごめんなさい、先に。ご覧のみな様、豊津さんと角田陽一郎がですね、チャットに質問とか書いていただけたら何でも答えるので。

豊津 はい。ぜひ。何でも答えますよー。

角田 はい。よろしくお願いします。で、じゃ、1回(豊津さんが持ってる冊子を)見せてもらってもいいですか?

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豊津 はい。で、前回うちでやったときはF1の、自動車。F1の自動車が

角田 これ作った方なんですね!!

豊津 そうです。彼にとってはF1で走ってる音とか、ああいうものを見て凶暴な感じがしたんで、、、

角田 だから、これ…これ、F1?この赤いやつってあれですよね?ボク「オトナの!」って番組で、いとうせいこうさんとユースケ・サンタマリアさんの番組に豊津さんが出てくれたとき持って来てくれましたよね。これ、ちょー…、魚なんでしたっけ?

豊津 鮫なんですよ!

角田 鮫だ!そうだ。

豊津 彼にとってF1の自動車の爆音とあの凶暴性が鮫に似てたのと、止まると死ぬってことですよね。アイルトン・セナ、ほら、止まって死んだから。

角田 死んだから止まったのか、止まったから死んじゃったというか。

豊津 そうそう。だからそういうイメージがあって、その中にF1って広告にまみれてるでしょ。だから全部広告ですよね。

角田 はぁぁ〜。これを作った方なんだ。だからボク金田さんの作品には1回出会ってるんですね。

豊津 そうです。そうです。

角田 これ、なんかさっき、ちょろっと聞きましたけど。なんかすごい売れた、と。

豊津 もうもう、すーごい売れた。外国でも売れたし、日本国内でも売れたし。で、もう彼自身はこれ作るの嫌になっちゃって(笑)

角田 (笑)だってこれ、マクラーレン・モデルでしたっけ?これか。これ、マクラーレンが買ったんでしたっけ?

豊津 マクラーレンが最後は買ってくれた。最初だから、これの許可を得るのにね、マクラーレンに問い合わせしたんですよ。こういうことやっても大丈夫か?と。

角田 だって商品名入ってますもんね?ボーダフォンとか。

豊津 それからシェルとか。

角田 フィアット…

豊津 これポルシェかな?

角田 ランボルギーニ。

豊津 だから訴えられるかも知れないと思ったんですけど、1台作る分には訴えられないんです。これを量産すると訴えられちゃう。で、今回はこの、自分も大人しくなって、子供が乗る車。

角田 っはっはっはっは!こっちになったんですね!!

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豊津 これね、アメリカで売られてた昔の車をオークションで落として、それに全部彼がシール貼って、ペインティングしたんでしょ。

角田 そっか、だからこれを作ったというよりペインティングなわけですね。

豊津 ペインティングなんです。で、これ全部、よく読むとですね…。ホモサピエンスとかね。

角田 あ!ホントだ!ホモサピエンス…ネアンデルタール!ホモエレクトス…

豊津 これは進化論から資本主義に移って行く、その状態をずーっと。

角田 ──っ!面白い!!だからロゴが全部…、、、

豊津 ロゴがそういうことになってるんです。

角田 えぇ?!ロゴ…

豊津 ブレインウォッシュとかね。

角田 バラダイム、プロダクティビティ、バリュー、…ホントだ。おーもしろい!その価値観を疾走している車なんですね。これ、23にも意味があるんですかねぇ?

豊津 それは聞いたんだけど、23はね、12と24が完璧な数字らしいんですよ、彼が言うにはね。その前の11と23ってのが重要なんだっていうふうに言ってた。

角田 11と23が。

豊津 素数でしょ?

角田 どっちも。

豊津 どっちもね。

角田 どうなってるんでしょうね?金田さんの頭はね。頭はどうなってるんですかね?天才?

豊津 頭を切り開いたことはないから分かんないけど(笑) ただやっぱり彼にとって一番大事なのは自分が見ている風景自体がもう完全にこの消費社会のロゴ、フォントを見てる。

角田 だって、面白い…ここに例えば、ちょと見て下さい、これインフルエンスって描いてあるじゃ無いですか?これでもインフルエンスって影響みたいな意味ですけど、でもこれどこかの商品のロゴっぽいのをパクってますよね。サブジェクトとか。

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豊津 全部自分が作ったロゴなんですよ。

角田 ですよね。でもこれ何となく資本主義の、まさにF1のブランド名みたくなってるんだ。

豊津 そう。だからここに(壁に)貼ってあるのは全部そうです。

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角田 ちょっと1個ずつ見ていきたいと思います。はい。どっちから行きましょう?

豊津 はい。まずこれが3つで1つになってる作品ですね。それで彼にとって風景ってのは、これ高速道路ですよね?全部彼の描いたのは自分の身近な風景しか描いてないんですよ。だから京都に居ても龍安寺の石庭とか、そういうのは描かないんですよ。

角田 だから、えーと…亀岡。亀岡のところのたぶんあれですね、京都から行ってる高速道路のどこかを描いてるんだ。

豊津 で、そこをなんか猪が象徴して走ってるとか

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角田 あのー、猪鍋とかちょっと有名なとこですもんね。丹波、篠山ですもんね。はぁ〜。で、これも全部ロゴじゃないんだ…。

豊津 これも自分が作ったロゴだから、いわゆる、もう、ほとんど、あれじゃないの?どっかからこっち(F1+鮫)みたいに持ってきたロゴは無いはずです。だから僕たちが見るとなんか商品名のロゴだと思っちゃうけど。

角田 これ、ETとか描いてありますもんね。

豊津 そう。でもこれもたぶんあれだと思う。違うと思うんですよ。

角田 スティーブン・スピルバーグズとか書いてあるな(笑) はぁぁ〜面白いなぁ。これ、これ…何ですか?キャンバス…じゃないですよね?

豊津 これはね、キャンバス。ホントはね、一番こっちの作品のように全部プラスチックで作りたかったの。

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角田 これプラスチックなんですか?

豊津 これ、ほら、スタイロフォームみたいなやつだよ。その上にフェイスを作って行って、磨き込んでプラスチックみたいにしてるの。

角田 ……これ、いつも下世話な話を聞いちゃうんですけど、これ、おいくら…ですか?

豊津 これいくらだっけな?僕もね、スタートしたばっかりで…。ここに価格表があるんだけど。

角田 えぇ、これちょっとボク、欲しい(笑) 買えるのかな??(小声で)さあいくらでしょう?

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豊津 これがね、一応価格表でございます。えー…、あれ?どれだ?どれだ??これが110万円。

角田 110万円。100万円プラス消費税ですね。

豊津 そうです。

角田 100万円でございます。

豊津 ここの3つが110万円ね。

角田 これちなみにタイトルなにかあるんですか?

豊津 タイトルはね…う〜ん、『Plastic Construction 031』っていうタイトル。

角田 『Plastic Construction』、ああ、だからプラスチックの構造物ってことだ。

豊津 そうそう。そういうことです。

角田 ちょっと待ってください、こっち来ちゃった。こっちから行きましょうか。あ、そっか!発色が違いますね!こっちはプラスチックだからテカテカしてるけど。

豊津 表面材は一緒ですよ。ただね、彼が言うにはウレタンでベースを向うみたいに作ると反っちゃうんだって。だからこれは大きいほど反っちゃうんで、もう木枠でキャンバス貼ってやる以外なかったって言ってたな、このサイズは。だからこれは普通のキャンバスで、木枠に貼って、その上にこのサーフェイスを作ってる。

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角田 サーフェイス上は…たぶん、これは油絵なのかな?

豊津 その上に油絵具で描いたんだって。

角田 でもこれこぼしてる分のは、こぼしてるんですよね?

豊津 こぼしてるよ。

角田 めちゃくちゃお洒落ですよ。

豊津 たぶんこれはオイルが漏れてるとか、そういうモノだと思う。

角田 うん、というのを表現してるんですよね。だから高速道路を先がそうなってるんですよね。え?これ、事故ったのかなぁ?だって猪ここにありますよ?で、ほら、血が…血っていうか赤いのがビーってなってるじゃないですか。なんかそんな意味があるような気がする。これちなみにタイトルなんですか?

豊津 タイトル…それはねぇ…、もう歳で覚えらんないんだよねぇ。へへへ。

角田 いえいえ。まだ始まったばっかりですからね。

豊津 これこれ。『京都縦貫道01』。

角田 京都縦貫道ってボクあの…舞鶴とか天橋立の方に行ってるやつね。

豊津 亀岡を通ってるね。

角田 で、これが1つ。

豊津 これ3つで、3つでワンセット。

角田 そっか!縦貫道が続いてるんだ。

豊津 縦貫道が続いてるから。

角田 はぁぁぁ、じゃあこれ今3ショットで映ってます?あー、すごい!面白いなぁ。あ!でもこれとこれはむしろ本当のロゴを貼ってるんですね?やっぱり。これだって今ケロッグってあるなーと思ったんですよ。これケロッグじゃないですか?

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豊津 所々入ってる。あの、シール集めてるんだよ、彼。それでその集めてるシールを所々に貼ってるんだけど、全部が全部じゃない。

角田 コラージュしてるというか。タミヤとか。モービルとか。はぁぁぁ〜、おっもしろいなぁ。

豊津 で、まあ、これ、重要な話なんだけど。元々日本の美術って書と…書道の書と画は一体のもんだったんです。ところが近代に入って画だけは絵画になって、書は芸術から落ちるんです。それで全て画面上に文字がなくなるわけですよ。

角田 うん、そうだ。書と画が分れちゃったから。アートの方では字が無くなっちゃった。

豊津 そう、分かれたから、無くなっちゃった。ところが1970年代になって…まあ60年代からポップアートが出てくるようになると、ポップアートの人たちが最初に数字とか文字をキャンバスに入れるようになった。ジャスパー・ジョーンズは数字を入れたし、それからリヒテンシュタインは漫画の吹き出しみたいなもので文字が入ってきた。で、日本もそういうものの影響を受けて若い世代がポップアートの影響を受けて、グラフィティって言う作品を作ったでしょ?

角田 落書きみたいな意味ですよね。

豊津 それの最終がバスキアになるわけです。で、バスキアの中も文字が入ってるでしょ?だから現代になって初めて近代で分かれた書と画はもう1回合体するようになったの。

角田 確かにバスキアと言われるとまたバスキアっぽいのは…。これがバスキアに似てるわけじゃなくて、ポップアートなんですね。

豊津 そうなんです。で、ポップアートって言うのは庶民が理解できるアートっていうことだから。

角田 だってポップってポピュラーのことですもんね、そもそも。

豊津 そうそう。そうすると庶民が理解できるのはコンセプチュアル・アートは無理じゃん。

角田 っはっはっは!無理なんですよ。(自分を指差して)庶民はね(笑) 無理です、はい。

豊津 ね?だから無理なんで、アンディー・ウォーホルがマリリン・モンローを使ったり、エルビス・プレスリー使ったり。

角田 あとキャンベルの缶。

豊津 キャンベルのスープの缶使ったり。そういうことを始めるわけよ。するとそれは大衆はいつも見てるやつだから、すぐ馴染めるわけですよね。

角田 面白いですね!だからポップアートってアート、アートってちょっとお高く止まってたところをどうポップに落とすか?みたいな発想があるわけですね。

豊津 っていうか、それは結局誰が支持してるか?なの。だから武士階級が支持してた狩野派と、江戸庶民が支持してた浮世絵とは違うわけでしょ?

角田 あ!だからある意味浮世絵とかと考え方は似てるんですね。

豊津 ううん、全く一緒です。

角田 そっか。浮世絵はポップアートなんですね。

豊津 そう。ところが浮世絵の時代は資産という概念が無いから、広告として使って、洒落てるなって世界で終わってるわけです。

角田 あれって、ボクなんとなく浮世絵で出てるのって、少年ジャンプがわーっと売れてるのとすごい似てたんじゃないかなーと。

豊津 全くその通りです。

角田 ワンピースとか、呪術廻戦とか。

豊津 で、もっと言うと、今僕たちは写真があるから、写真が無い時代は浮世絵が代わりだったんですよ。

角田 うんうん、プロマイド!

豊津 そう、プロマイド。だから東海道五十三次じゃないけど、参勤交代で江戸に来たら静岡辺りで富士山見たわけでしょ?こんなでかい山すごいって言って、江戸に行ったらプロマイドで富士山の広重を買って。それを持って帰って、江戸行ったらこんなもん見たんだよって言うのがあるんですよ。

角田 そっか。だから絵葉書というか。その思い出の景色を切り取って、みんながそれを見てない人に伝えられるように機能してたってことですね。ただ逆に言うと本当にだからアートではなかったんですね、浮世絵ってね。

豊津 アートじゃないですよ。浮世絵を見て例えば庶民が初めて絹の物を着るようになったわけですよ。で、武士は戦争が無くなったから仕事が無くなって質屋に出すわけだよね、着物を。絹のものを。それを庶民が着るんだけど、着方が分かんないじゃない。

角田 んっふっふ、確かに(笑)

豊津 それで歌舞伎の絵を見て「あ、こうやって着ればいい。」って言って、新しい着物の着方が出来るわけ。

角田 それって今で言うと、美容室のヘアモデルというか。

豊津 いや、コムデギャルソンよ。

角田 あ、そっか!そういうことか!!はぁぁぁ、東京ファッションショーとか、パリコレとかと考え方は一緒なんですね。

豊津 そうそう、そういうことです。だからみんな江戸庶民は浮世絵でもって着物の着方を。で、それの最大のファッションショーが歌舞伎なんだよ。

角田 ああー!…そうすると、パリコレクションとかでモデルウォークがあるのと歌舞伎の…なんでしたっけ?

豊津 花道。

角田 花道!あれ、同じですもんね。

豊津 うん、同じだよ。ガールズ・コレクションもそうだよ。

角田 ちょっと今なんかコメントが来てるみたいなんですけど。「風刺画とかポスターの世界」ってのもそうなんですか?みたいな。

豊津 あのね、ポスターって言うのはいつから始まったかでしょ?

角田 はい。いつから始まったんですか?

豊津 近代になってからじゃん。で、それまではお薬屋さんとかさ、そういうものが看板があったじゃん。で、看板の絵ってのがあったわけですよね。でもそれが一般、ポピュラーになったのはポスターになって、ポスターが最初に出た時にまだ写真がないから絵師がみんなポスターを描いて、それが資生堂のポスターですよ。

角田 そうですよね。で、日本だと資生堂が明治になってポスターを作るようになって、そこに美人さんをこうやるようになって、それがこう銀座に画廊が集まったことの走りだって豊津さんおっしゃってましたもんめ。

豊津 それで、風刺画って言うのは今度は庶民のいわゆる媒体…表現が一般化すると、江戸幕府に対して批判が起こるじゃない。そういうことで風刺画って始まるわけですよ。

角田 そっか、そっか。狂言とかと一緒…あのー、狂歌か。狂歌と一緒ですね。

豊津 それで歌麿かなんかが捕まるの。あまりやりすぎて。それで北斎はやばい!っていうんで、あのー、あそこに逃げるわけですよ。なんつったっけな…小布施に。

角田 長野の小布施。小布施に北斎ありますもんね。

豊津 あのとき小布施の有名な豪商の人が北斎に長野に来ないか?小布施に来ないか?って言って、やばいと思って逃げるんですよ。だから浮世絵がかなり幕府から睨まれるから。

角田 だって…エロいですもんね(笑)

豊津 そうですよ。それから歌舞伎自体も風刺的なことを演目でやるようになって。

角田 だってそもそも忠臣蔵とかも、あれって…忠臣蔵って高師直とかになってますもんね。だからあれって元々で言えば室町時代に足利家で行われた殿中のやり取りっていう風に誤魔化して、実際、本当にあった忠臣蔵の話を歌舞伎でやってるわけですもんね。だから結構その風刺みたいなものってやっぱり庶民が喜ぶひとつのポップアートだとするじゃないですか?で、そう考えると逆に質問なんですけど、逆に今アートってその風刺さがだいぶ減ってるなーとボクは個人的に思うんですけど、豊津さんそう思われないんですか?

豊津 いや、風刺的な作品はたくさんありますよ。

角田 あ、あるんだ。

豊津 バンクシーもそうじゃない。

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角田 ああ、バンクシー。強いて言えば日本人が…って言っちゃうとあれなんですけど。日本人が風刺力が減ってるのかなーなんてちょっと思ってて。

豊津 そう。日本はね、風刺する内容が無いからね。

角田 …また鋭いことを。つまりアーティストがどうこうじゃなくて国の方に(笑) 風刺するほどのパワーがないってことですね。

豊津 っていうか、風刺になるような、対象になるようなものがないじゃない。

角田 まあ〜、菅首相を風刺してもね?みたいな。なるほどねぇ。

豊津 だからやっぱり絵画の中に日本が風刺画がないのもそれはさっき言ったように平和ボケみたいなものと関係してんじゃないかと思う。

角田 そんな中で金田さんとかはこの縦貫道を、京都の縦貫道をアートにしてるってことは、何かしらの風刺っぽいところがあるのかも知れないですね。

豊津 彼が一番考えたのは格差です。

角田 格差。

豊津 これはね、非常に難しいことなんだけど。あのね、東京の人が気がつかない格差が地方にあるらしいんですよ。例えばファミレスで親子で飯を食べてるとことかね。ファミレスで親子で飯食ってる東京のファミレスない…あ、ファミレスじゃない、あの、いわゆる…

角田 ファストフード?

豊津 ファストフードじゃなくて…、セブンイレブンとか。

角田 ああ、コンビニ?

豊津 コンビニ!コンビニで親子で飯食ってるのってないでしょう?

角田 まあ、東京はないですね。…ミニストップにはちょっとありますけど。でもあそこで…ね、緊急で食べてる人とかはいるけど、まあ食べてないですよね。

豊津 地方行くと多いらしいですよ。

角田 はぁ〜、…なんか分かります。

豊津 分かるでしょ?だからそういうようなものでものすごく格差を感じたらしいんだよね。だから大きな意味で言うと風刺画ですよ。

角田 うん。だからつまり日本にコンビニってのがたくさんあって、そのコンビニの中で家族で食べるか、あるいは食べないかみたいなところって、実はすごい微差って言うか大した差ではないけど、日本の風刺ってむしろそういうところにあるっていうか。

豊津 それからこれがコンビニの駐車場ですよ。

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角田 ……ホントだ!コンビニの駐車場だ。これも三部作?

豊津 これも3枚。

角田 3枚ですね。へぇぇぇ〜。

豊津 すると、今度極端に言うと、このコンビニの車の中で飯食ってる人もいるわけでしょ?

角田 はい。ボク比較的食べてます(笑)

豊津 で、もっと大きく言うとこのコロナで何が一番大きいかって言うとゴミがたくさん出たってこと。それはコンビニで買い物して家で食べると家のゴミがでるわけ。

角田 プラスチック容器とか。

豊津 そうそう。だからそういう文化みたいなものを彼としてはやんわりと風刺してるわけ。

角田 うん。風刺してますね。これちなみにこのコンビニの駐車場…これ何ですか?何で描いてるんですかね?

豊津 これはたぶん…オイルペインティングと樹脂じゃないかと。

角田 はぁ〜、面白いですね。独特のその…テカテカしたある意味きらびやかさと、でもなんか描いてるものってちょっと汚い感じ出してますもんね。汚いって言うとなんですけど、オイルなのか。

豊津 要はさ、金田君と話したんだけど、プラスチックで育った世代なんですよ。プラスチック・モデル。

角田 さっきのあのF1もわざとプラモデルみたいに塗ってるわけですもんね。

豊津 だからバンダイが作りたいって言ったのはそこなんだけど。僕の世代はプラモデルから入ってないんですよ。僕が子供の時は木を買ってきて、自分で小刀でやって、竹籤曲げて飛行機飛ばしたりしてたから。

角田 あの、ゴムつけてプロペラに。

豊津 全部木を削ったり、、、

角田 木と紙を貼ってとかですよね。

豊津 ところがある時からプラモデルが入って来てそれが無くなったわけですよね。

角田 ボクはもうプラモデル世代です。ガンプラ世代。

豊津 するとプラモデルは次に何やるかというと、組み立てた後に色塗るのが楽しいでしょ?僕たちは色を塗るって言うのはある程度最後の最終仕上げだけど、、、

角田 だし、なんかもうちょっと木工だから木の香りをそのまま、雰囲気をそのまま使ってましたよね。

豊津 うん、残ってた。

角田 はぁ〜。これ、ちなみにタイトルなんですか?

豊津 これはね…、これだ。これも『Plastic Construction』だ。

角田 『Plastic Construction』ああ〜、金田さんのテーマとしてプラスチックっての結構大きいんですね。これもね、車…。

豊津 これもね、ボディはオークションで落としたんだって。で、このカスタムの部分ね(エアロパーツ類)。これ全部自分が作ったんだって。これも自分で作ったんだって(サイドミラー)。これはどうか?と言ったら(パトランプ)、これは…作ったんじゃ、ない。

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角田 これパトランプですよね。…GTR、Modern JAPAN…

豊津 ここにも、ほら。(車側面のステッカーを後ろから順に見て行って)これはブラックシップで、黒船がやって来た。怖くなって…、NEO Confucianismって…なんだっけ、あの、尊王攘夷!…って言うのが起こって、それで最後は参謀、general staff。

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角田 ああ、だから、えーと、GHQ の。

豊津 そうそう。という風になって、我々は黒船から第二次世界大戦、、、

角田 つまりこれ、モダン・ジャパンってここに書いてありますけど、たぶんそれは近代日本をまたラベルで表現してるわけですね。

豊津 そういうことです。

角田 こっちは?(車の反対側面へ行って)あ、一緒だ、一緒だ。…刀?これなんて読むんだ?(刀伊)

豊津 それ「とうい」。

角田 で、ブラックシップ=黒船、FEAR、NEO Confucianism、、、

豊津 それで楠木正成、この人、この下がREEBってのが尊王攘夷、それから SUPREME COMMAND AUTHORITY、これが大日本帝国の参謀。で、それが日比谷で戦争突入でみんなが盛り上がったから日比谷満員御礼になってた。

角田 日比谷満員御礼って書いてある。

豊津 で、Clouds on the Slope は坂の上の雲。

角田 ああ!そうだ!坂の上の雲!Clouds on the Slope って何かと思ったら坂の上の雲ですね。司馬遼太郎ですね。

豊津 そう。司馬遼太郎。

角田 そっか、ここにだってお守りがちゃんと中に。

豊津 うん。お守りがあって、それでね、なんかあの…アメリカのこういうグラフィティのあれに一時流行ったんだって。このサイコロぶら下げるの。

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角田 ああー!なんかサイコロぶら下げてるのありますよね、結構。

豊津 それで彼はサイコロをここに乗せたって言ってた。これも全部自分で作ったの、これも(竹槍マフラー)。

角田 はぁぁ、これ多分痛車というかアメ車みたいな雰囲気を表現してるのに、モダンジャパンなんですよね、つまりね。

豊津 で、その国道を走ってるのはトラック野郎でしょ?

角田 あ、そうかそうか!

豊津 トラック野郎ってすごいじゃない。イルミネーションが。

角田 デコトラ、デコレーションが。あ、だから、そっか。この金田さんの作品ってトラック野郎のデコレーションと似てますもんね。

豊津 似てる。だからそれが我々の庶民文化だよね。それを彼は絵画として作り上げてるんじゃないかと。

角田 なるほどねぇぇ。面白い!

豊津 村上くんはアニメーションの方でしょ?ロンサムカウボーイもアニメーションからとったやつ。彼はどちらかというとトラック野郎とか、そういう。

角田 これ、あれですか?今、車あるじゃないですか。これ、だから本当にこのハイウェイ乗ってるんでしょうね。走ってる車でコンビニに止まったんですかね。

豊津 そうよ。だから全部、、、

角田 世界観がこれでひとつ。

豊津 これでひとつの世界。

角田 こう見ると…カメラをこう引くと、この車があの京都縦貫道を通って。ブーンッと通って、コンビニに(笑) おもしれぇ!!

豊津 で、これを300年後に見た人が、「え?京都の近郊ってこんなになってんだ?!」と。

角田 だからあの洛中洛外図と比べるとすっごい面白いです。

豊津 面白いでしょ。だから絵画っていうのはある時代のシーンを切り取って着実に風景画描いて行けば歴史的な意味があるじゃない。

角田 そういうことだ。で、これ三部作あって、こっちが…これは1個ずつ?

豊津 これは1個ずつですね。

角田 これ公園かな?

豊津 これはね、近所の公園って言ってたな。

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角田 亀岡にあるんでしょうね、きっとね。

豊津 そう亀岡の。向こう側がね、自分の家の菜園だって言ってた。これこれ。これが一番なんか古典的な感じするよね。で、これは自分の家の菜園だって、それを書いたんだって。

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角田 はぁ〜。ホントだ。これ、100万ですね。ボクこれ好きですね。さっきも言いましたけど。これ…これは…何ショップ?

豊津 これはコンビニ。

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角田 コンビニだ!やっぱコンビニ好きなんですね(^^) ファミリーマートですよ。

豊津 で、やっぱりよく見るとこの余白の活かし方は日本画っぽいんだよ。

角田 そうですね。あ、だからあっちのやつもそうですし、あのコンビニの駐車場もそうですけど、日本画なんですよね。だからそれがさっき言ったバンクシーとかとちょっと違いますよね。あの…グラフィティっぽいんだけど、こういうところとか…こんなに余白作んないですよね、バンクシーね。

豊津 だから、ほら、ガンツの漫画見てるとある日突然重力が無くなってバーって浮くじゃん。ああ言う感じもあるでしょ。

角田 はい。このロゴ自体が全部空中に浮いてる…。

豊津 これはだからレイヤーの社会だよね。だから僕たちが持ってる重力から完全にこの画面上で重力から解放されるわけだから。

角田 これちょっと、もう1回こっちいいですか?つまりボクこれ、何なのかな?と思ったけど、確かに、そうだ、この縦貫道があって、このラベル達は空中に浮いてるんだ。ペタペタ貼ってるというより。…という風な感じでみなさん見て頂けると。

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豊津 というのは、僕もリニアモーターカー乗ったんだけど、風景が止まってないじゃん。スピード早いから。ということは僕の目に映った色んなロゴの残像が自動車が進んでいく中で、記憶の中で残ってるのを…。

角田 わかった!わかった!つまりこれが車で、この縦貫道をブーンっと走ってると、こういうロゴみたいなものが残像のように…そんな感じなんだ!っはぁーっ!!ちょっと今コメントがたくさん来てるんで、、、

豊津 コメントが、たくさん来てる(笑)

角田 えーと、待ってください…えー、「この車が縦貫道を通ってコンビニということになると、全部セットで買わねば」って(笑)

豊津 ありがたい(^^)

角田 豊津さん、満面の笑みになっておりますけども。はぁぁ、そういうことなんだ。あ、これ、ずーごい…やっぱりね、このね、豊津徳【HozuTalk】やってて思うんですけど、ただ見てるだけだと…なんて言うんだろう、オシャレとか、カッコいいは行くんだけど、この絵の本質みたいなものが見えないじゃないですか。で、豊津さんの解説を聞くと全然…ボク今これって二次元でラベルが貼ってあるだけだと思ってたより、空中に浮いてると思っただけで全然見え方が変わって来ちゃう。この見え方が変わるってのをですね、みなさんぜひ、この場に来てね(笑) 体験して頂けると。なんなら買っちゃっていただいても構わないんですけど。

豊津 でも今の質問すごくいいんだけど。画廊ってのは一品一品を買うよりもこの展示で金田さんの世界観を売るっていうのが僕たちなんです。

角田 うん。だってこれ、本当はこれ(世界観)で…。ボクね、これね、例えばちょっとお洒落なセレクトショップみたいなのに行くじゃないですか。そうすると何色かなんかのペン立てみたいなのあるじゃないですか。でもあれ、例えば12色ぐらいあって、あれ12個並んでるからかっこいいんですよね。

豊津 そうなんですよ。

角田 だからあれボク12個買わないとあのペン立てを買っても…。で、1個だけ買うじゃないですか?買ってうちに置いてもなんか普通のただのペン立てなんですよね。

豊津 要はあとは12個の残像を頭に残す以外ないじゃない。

角田 ああそうか、12個買わないで。

豊津 そう。だから必ず断片を持って帰ってるって言うのが現代美術の一番面白いところ。

角田 ああっ!断片を持って帰るというのが現代美術の面白いところ!今日のひとこといただきました。なるほどね〜。

豊津 今度はその断片を繋ぎ合わせて自分の世界を作るっていうのがコレクションの醍醐味なんです。

角田 ああーっっ…、そっか。ボクね、本当にね、コレクションしたくなりますね。有名・無名とか関係なく自分の好きな絵を。ボク本当にこれ好きです。だからこれ好きなのってさっきのラベルが空中に浮いてるみたいなことを考えると、なんかここにほら、なんかこの浮いてる感じも意味があるんじゃないかな?とか…ずごく思いますね。

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豊津 ね、これなんかほら、遠くに噴き上げてるじゃん。

角田 噴き上げてるし、ボクなんかこの色使いがセピア色だから、ちょっと懐かしさも感じるし。なおかつちょっと思い出の中にいる感じもするし。なんか…何だろう…ちょっと哀愁が漂いますよね。

豊津 というか、よく言うんだけど。美しいって概念は珍しいと懐かしいで出来上がってるから。

角田 美しいって概念は珍しいと懐かしい?!

豊津 うん。だから最初に見たものは人間は全て珍しいんだよ。でもそれが5年も経つと懐かしいになるじゃない。その時に「美」っていうのが発生すんのよ。だから最初に見たものが…、子供は何でも何でも珍しいんだよ。

角田 だって子供だからみんな珍しいですもんね。コンビニだって珍しいし、高速道路だって珍しいし。

豊津 だから72歳になるとね、全てが懐かしくなってくるから。

角田 若いころ様々体験した珍しいが。

豊津 だからそれで頭の中が美しさで溢れてくるわけでしょ?

角田 だから豊津さんは美しいものばっかりで溢れてるんですね。

豊津 うん。でもそれは別に美しいものを見たんじゃなくて、僕が珍しいものをたくさん追っかけてるうちに自分の中で懐かしさが美に変わっていくんだから。それが美の体験なの。

角田 珍しさと懐かしさが美なんだ。

豊津 でも最初っから懐かしさを売ってるものがあるでしょ?

角田 だし、最初から懐かしさを売ってるのって、ちょっと不健康だし。

豊津 というか飽きちゃう。

角田 最初からこれ美しいんだよって子供とかに与えちゃったらダメですね。

豊津 ダメです。子供には最初に見たこともないものをいかに見せるか?

角田 はあ〜なるほどね、ホントそうだ。またコメント頂いたみたいです。「幼少の頃の記憶と潜在意識にうったえてくるんですね」って。

豊津 そうです。だからいかに子供のときに色んな体験をしてるか?っていうことが大事なんですよ。子供の時の体験の幅が狭ければ、、、

角田 つまり美しいものが狭いってことだ!

豊津 そういうことです。

角田 みなさん…分かりました。いや、絶対そうです。強いて言えば子供って言ってますけど、別に今のボクらの歳だって、これを見てる20代30代の人だって全然大丈夫ですよね。これから珍しいものをどんどん入れれば、それが懐かしさと相まって美しさに変わって行くんだ。

豊津 で、今度はね、僕の歳になると、そういうもので溢れてくると、今度は見たこともないものを見たくなるんですよ。

角田 はぁ〜!だからまだ…まだと言うか、それでも珍しさを求めちゃう。

豊津 そう。というか今度は自分の脳の中が見たものばっかりになるから、飽きちゃうんですよ。だから今度は見たこともないものを見たくなるんです。

角田 でもそれって、たぶん豊津さんが色んなアーティストの方とこういうプロジェクトをやってるのって、見たことないものを…作らせてるというか、作って欲しいんでしょうね。

豊津 そう、いやぁ、だから僕は見たこともないものを彼らに求めるわけですよ。だから彼らにとって僕が見たことがあるものを彼らの中で見ると、僕にとっては興味なくなっちゃう。

角田 そうかぁ。…それがね、またちょっと面白いのは、じゃあこの金田さんの作品とか…じゃこっち見ましょうか。これだから公園って言ってましたけど、このロゴとかって見たことあるものなんですよね?だからその見たことあるものなんだけどそのロゴをこういう風にプラスチック・コンストラクションとして設立しちゃうともう見たことないものなんですよね。

豊津 そう。例えばね、このロゴがあるじゃないですか。Poly matrix、このロゴを考えるのにデザイナーはどのくらい時間を掛けてる?

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角田 まあ、すごい掛けてますよね。

豊津 ね。でも僕たちはロゴとして意味を見ちゃうからデザイン見ないじゃん。

角田 うんうんうんうん。なんて書いてあるか見ちゃうんですよね。

豊津 でも何年か経つとやっぱり Apple のリンゴマークはすばらしいでしょ?それはビートルズの Apple でしょ?そうするとマグリッドの Apple から来てる。すると完全にマグリッド→ビートルズ→それからスティーブ・ジョブズになる。

角田 その前にもしかしたら、だって、あの…聖書のリンゴですよね?アダムズ・アップル。

豊津 そう、リンゴ。だからリンゴっていうのはそういう。そうやって考えて行くと聖書も面白くなるし、アダム&イブも現代にどう繋がるかっていうのは…。それを今度彼がこういう風にまとめるとロゴを比べてみるじゃない、画面上で。するとこっちの方がカッコいいねとかって、相対比較するんだけど、自分が日常生活やったときな意味しか見てないから。彼の中ではもう意味は失ってるわけよ。

角田 それをだから…あ!だからコンストラクションって言うか、意味をもしかしたら構造的にもう1回コンストラクトしてるんだ。

豊津 そう。だからある意味ではコラージュとか、アッサンブラージュとかっていう世界。それは意味から断片を外すから、それで僕がよく言う【使用価値と交換価値】なんだよ。使用価値から一旦外すと美しいって交換価値になる。

角田 整理すると、ロゴって意味しかボクらは、普段、日用品では気にしないんだけど、意味じゃなくてそのデザインに気持ちを変えると交換価値になる。

豊津 で、その交換価値から世界を決めて行くことがブランドなんですよ。

角田 ぁぁぁ、交換価値から世界を決めて行く。なるほどねー。それがルイヴィトンとか、エルメスとか。トヨタもそうかも知れないですけど。

豊津 だってエルメスは最初馬具の作るところから始まるでしょ。馬のものを作ってる時のエルメスは使用価値じゃないですか。

角田 あくまで…そうか、でも今、馬具…使用価値ないですもんね。

豊津 でもエルメスっていうのは残したわけだよ。交換価値として価値が出ちゃったから。だから今度、交換価値としてやるとエルメスにはスカーフなんて関係ないんだけど、スカーフが一番売れるわけでしょ?

角田 そうですね。エルメスというものに価値が出るんですね。なぁぁるほどなぁ。じゃあ、こっち行って見ましょうか。

豊津 はい、はい。

角田 …面白いですね。で、こちらが…あ、カメラがこっちに入って頂いた方が…。

豊津 例えばこれなんかも巻物を見るような感じで。

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角田 だってこれあれじゃないですか、日本の巻物。だってこの木とかそんな感じですよね。

豊津 それで左側から右へラインが流れてるから余白が生まれてるじゃない。で、余白が金でしょ?これ。だからこれは梨地(なしじ)にしてるから漆っぽくなってる。で、漆っていうものが持ってる光沢感っていうのはプラスチックに近いじゃない。

角田 うん。すごいプラスチック…これもキャンバスなのか?あ、違う、これウレタン?

豊津 ウレタン。そう。だから軽いんです、すごく。

角田 これ、ちなみにタイトル…?と、お値段いくらですか?──すいません、そんなことばっか気にしててすいません。

豊津 いやいや大事なんですよ。

角田 いや、買えるならかっちゃおうかなーなんて。

豊津 そうそう。僕も買ってもらいたい。

角田 なかなか買えるようにならない?

豊津 れは385,000円。

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角田 38万!!みなさん、夏のボーナス♪タイトルは?これも『Plastic Construction 027』38万。

豊津 で、漆がなぜあれだけ光沢あるか知ってる?

角田 え??何でですか?

豊津 あれは蝋燭の光を反射するようになってるの。電気がないから。だから夜、ご飯をお膳で食べるときに漆器が光ってると持ちやすいから。だからあれ、この映像(電気)の下で見ると面白くないの。

角田 確かに。蛍光灯じゃダメで、…ああ、だから、つまりピンスポットというか、そういうものがあって、映った方が漆に…。

豊津 漆としてはいいわけです。

角田 はぁぁ〜。確かにこれもちょっと画面で分かりますかね?ちょっとテカテカしてんですよね。このテカテカな感じ。

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豊津 これはね、梨地って言って、漆で言うと金粉を降るんですよ。それで画面を作って行く。泊を降る。貼るんじゃなくて。そういうのを梨地(なしじ)って言うんです。梨の地肌みたいな。

角田 うん、梨の地肌!

豊津 (笑)それで梨地って言うの。

角田 ラ・フランスってこういう風になってますよね。はぁぁ!…こっち行きましょうか。これも面白いな。

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豊津 これはだからあれだよ、コンビニの。ローソン、セブンイレブン、とかって、全部。

角田 あっはっは!ローソン、セブンイレブン、これは何だ?…うん?ミニストップかなぁ?…ファミリーマートか。

豊津 ちょうど道路があると必ず看板が立ってるじゃん。

角田 ATM とか書いてあります。で、これあれじゃないですか?びっくりマンチョコじゃないですか。びっくりマンシール。

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豊津 これはだから彼が取っといたもんじゃない?こういうのも。

角田 こういうの、なんかありますよね、グッズの。

豊津 だから自分の自分の中でコレクションしてるものをペタペタペタペタ貼ってるの。

角田 「わぁー!これ好き!スライド型コンピューターゲームにも似てるなー」って書いてあるけど、どれだろ?これかな?はー、なるほどなぁ。

豊津 でもやっぱりね、やっぱり絵描きだからこういう手触りを残したいわけよね。ここは肉質で描いてるから。

角田 これ、だからあの、えーと、油絵の。オイルペインティングの感じをたぶんこれ手で伸ばしてるんですよね。

豊津 だからやっぱりどこかにそういう手垢とか手触りとかそういうものを残している。

角田 金田さんの作品で好きなのはこのオイルが垂れてる感じ。これ、この…伝わりますかね?ちょっと厚みがあるんですよね。べちゃーって感じ。このなんかこう皮膜みたいなものが…なんて言うんですかね、ごめんなさい、言い方間違えるとまたあれなんですけど、エロい。エロいですよね、なんかね。うん、なんか。

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豊津 だってやっぱり女性の肌の上をさ、水滴が流れるってすっごいあれじゃない。

角田 それがアートですもんね。ちなみにこれは何ですか?また人間だな?

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豊津 ホモサピエンス、、

角田 書いてあるし…、オーストラロ…あ!アウストラル・ピテクス、ホモ・ハビリス。

豊津 何度か説明聞いたんだけど覚え切れないの。

角田 カーシェア、ネーション、フィー、コミュニティ、ボーダー。境界線。あ、だから色んな境界線じゃないですか?コミュニティとかバリュー。…ここ映せます?コミュニティ、アドミニストレーター、オーソリティ、ルーラー、プロパティ、バリュー。はーーぁ、面白い。アグリカルチャー、農業。だから、そっか、下が農業なんだ。

豊津 それでこっちが工業社会じゃない?

角田 はい、ハンティング・ギャザリング。

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豊津 それは狩猟だよ。

角田 狩猟ですね。はー、たぶんこういう土台に車が出来てる。乗っかってるってことですね。…エステート、不動産。アイデンティティ。

豊津 だからこの鮫のを作った頃はここまで踏み込んでない。

角田 そうですね。あの、読みがより深くなってるんですかね。はぁー、おっもしろいなぁ。で、こちらですすね。これ…お弁当?椅子?これだからたぶんコンビニ弁当ですよね。

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豊津 コンビニ弁当だね。

角田 つまりこのコンビニで買ったんですね。なるほど!だからえーと、えーと…分かりました。京都縦貫道で旅して、コンビニで停めて、コンビニで買って、お弁当食べてる(笑)

豊津 だからぜひ京都行ったら、京都市内を見学するだけじゃなくて。

角田 清水寺とか金閣寺じゃなくて、亀岡のコンビニで、コンビニ弁当で、たぶん「おーいお茶」なのかな?分かんないけど(笑) そういうのでご飯食べましょう、と。だってこれ「スーパーカップ」ですもん。カップラーメン。

豊津 でね、角田さんね、この世界はもう亀岡だけじゃないじゃない。

角田 もう、あらゆる…日本全部。

豊津 全部。ということはもう日本人の生活風景はこの中に入っちゃったわけよね。だからそれはかなり田舎まで行ってもこれですよね。

角田 つまりポップアートのポップというのはこの全部の、ポピュラーのポップ。

豊津 だからそういうことも彼の中で見えると、、、

角田 え、ごめんなさい!さっきボク日本人のアーティスト風刺が足りないとか言ってましたけど、めちゃくちゃ風刺的ですね。

豊津 ものすごい風刺画。

角田 めちゃくちゃ風刺的だし、ストレートに言ってない分コワイですね。どんどん攻めてますね。

豊津 でもストレートに言っちゃうと風刺にならないんだよね。あの、面白みがないじゃない。あの…お笑いもそうでしょ?ダイレクトに風刺してるよりよーく考えてみたら風刺だなって方が面白いじゃないですか。

角田 これはそういう意味で言うとすーごい今の日本社会、日本の世界を風刺してるんですね。

豊津 風刺してるんです。だからこれが何年か経つとそれが自分の中で分かってくるんです。だから僕たちは自分たちで、今の世界は対象化してないじゃない。自然に振る舞ってるからさ、ね。でもそうじゃなくて一歩俯瞰で見ると変じゃん。で、それがこの絵を見ることによって変が分かるってことが大事なんじゃないかなと思う。

角田 例えばこの車が変だなーって思ってるのは、実は僕らが変だからってことですね。

豊津 そういうことです(笑)

角田 そういうことなんですよ、みなさん!この絵が変だなーってもし思われた方がいたら、ボクらがへんだからなんです。かぁぁー、現代アート…すげぇ面白いなー。なるほどなぁ。なんか質問とか来てますかね?ちょっと今読んでますけど…。あー、でもみなさんすごい感想書かれてますね。はぁー…「日本はどの駅に降りても風景が似てると嘆かれてるけど、もう少しすると変わったりするのかなー」って来たんですけど。

豊津 不便を楽しむようになると変わる。便利をいま楽しんでるからみんな風景が一緒になる。

角田 そうなんですよね。ボクも千葉の地元の、ボクがだって高校くらいまでは結構木造の駅舎ですんごいカッコよかったんですけど、最近はもうどの駅も一緒ですもんね、コンクリートで。

豊津 だから一番それを象徴するのはさ、原宿の駅じゃん。

角田 ね。木の可愛い駅だったんですけど。

豊津 そう。で、結局残すことになったでしょ。あれはだから住民の人たちが残してくれって言ったから。だから象徴として残るし、東京駅も復元して三階建てになって、二階だったのを。

角田 えっと…太平洋戦争で焼けちゃったのを、安普請で直したのを、本格的に設立当時直したんですもんね。

豊津 で、これはだから観光立国ってことで、もう1回不便な日本を見ようっていう運動が起こってるから便利と不便をうまくやると表層だけ変えればいいわけでしょ?ね、中身は便利そのものなんだけど、外側のファサードだけ不便な江戸時代を懐かしむということになってるわけ。

角田 そうすると、それまたポップアート的ですね。

豊津 そう。それが一番象徴してるのが家の中に杉の皮だけ貼った柱とかさ。

角田 あ゛ー、そうかそうか。大黒柱ないのに柱っぽいのを置いてあったり。

豊津 それは皮、皮だけ1枚。それをサーフェイスって言うんだけど。

角田 サーフェイス。表面。

豊津 表面ってことね。で、僕たちはすでに全ては面しか見てないから。

角田 うん。だって内面って見えないですもんね。だからそのサーフェイスから内面をどう、まあ…想像するか?ってことですもんね。ちなみに、あの、ボク今メッセもらったんですけど。「角田さんは帰りは車…?見える景色が変わるのでは?自己注意(笑)」って(笑)

豊津 あっはっはっは!

角田 いや、ホントですね!ラベルというか、資本主義の…。だって今までだったらコンビニとガソリンスタンドとかしかないじゃん…とか思ったものが、途端に面白く見えてくる可能性ありますね。

豊津 面白くなりますね。

角田 ちょうどこれが…あれでしたっけ?今週の土曜日(2021.6.19)から1ヶ月ぐらい。

豊津 そう。ひと月くらいね。

角田 7月の半ばくらいまでやられてるんで。これ予約制ですよね?

豊津 予約制です。

角田 東京画廊に連絡していただければ見れますので。

豊津 まあ、このYouTube見てる人だったらこれ見て来たって言えばみんな予約しなくても入れます。

角田 あ!すごい!そういうこと、ありがとうございます、豊津さん。あの1回あれですよ、アートってどんなものか?って…敷居が高いなーと思ってる方、ぶっちゃけボクそうでしたからね、7・8年前に。で、豊津さんのところに、豊津さんの公演を聞いて、すごい面白い方だなーと思ったんで遊びに来ちゃったんですね。それ以来なんで、そんな感じで遊びに来るとね、現代アートの楽しみ方みたいな。…ボクはっきり言って、豊津さんと会うまで現代アートちょっと嫌いでしたもん。

豊津 あ、そうなの?

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角田 むしろピカソまでは大丈夫です。なんて言うの?なんかモダンアートまでは…モダンは現代か…。だから…ダリ好きですし、別に嫌いじゃないですけど、ちょうどボクが20代くらいの時の現代アートってなんかこうスカしてる感じがしてて嫌いだったんですけど。今考えると意味が、説明がなかったから、まさにサーフェイスしか見れてなくて分かんなかったんだなーって。今はむしろすごい面白いですね。はい。

豊津 これにハマっちゃうとピカソはピカソでまたちょっと違って見えてくる。

角田 違って見えてきますね。あとだから、そう考えると印象派を印象派で、印象派の当時の現代のアートだったってわけですね。

豊津 そうです。だからあの、セザンヌが「サント=ヴィクトワール山」を描いたっていうのも蒸気機関車から見た風景だから。

角田 そうそうそう、あれですよね。今 TGV になっちゃっいましたけど、列車走ってますもんね。

豊津 それまで西洋絵画の中に、風景画の中に人がいないの描いた人がいなかったらしいんだよ。セザンヌが最初らしいんだよ、人がいない風景画描いたの。で、これはもしかしたら広重の富士を見たせいかも知れないとかね。日本の絵画には富士山に人がいないものがずいぶん北斎も描いてる。赤富士なんかも人いないじゃないですか。

角田 そっかぁー。だからなんか、そういうものをどう取り入れて行くか?みたいなのって、この作品群って、だぶん資本主義とか今の現代日本の、まさに”構造体”をどう入れて行くか?みたいなことをやると、実はセザンヌがやってる事とかと一緒かも知れない。

豊津 一緒ですよ。だから絵描きさんって言うのは僕たちの目の代わりをしてるってことよね。彼らは僕たちの目を、毎日見てる目を、ちゃんと客観視して自分の目にしてるわけだから。だから彼らの目を通して時代がアートとして残って行くっていうことだから。

角田 ってことですね。ボクね、この前ね、「文名探偵」って本を読んだんですね。そしたらそのことが書いてあって…ちょっと待ってください、今パッと出てくるかな…ちょっと待ってください文名探偵どこいっちゃったかな…探せるかな…ぁぁ分かんない!

豊津 (笑)

角田 ちょっと待ってくださいね〜…ここまで振っちゃったから見せたいんですけど…。どこだっけな文名探偵…。!ああ、これこれ。神里達博さんって方が、この人は科学哲学者の方が書いてるんですけど。アートはしばしば時代の先行指標として機能する…“科学”の予見力はもう少し鈍いし、現行の社会と関わりの深い“技術”ってのはさらに遅くなるし、で、現実の重荷を常に背負っている“政治”は最後の最後に時代に追いつく。なので、アーティストが一番時代を読まないとその時代が先に進まないんだって。

豊津 うん。そうだと思います。

角田 で、政治家はむしろ時代を先読みとかは出来ないから、やっちゃうと政治が回らないから、実は政治が一番遅いんだと。で、実は科学とかの方がみんな進化してると思うんだけど、科学ってのもやっぱり実験して、その反証を繰り返して、それが正しいってやるのに時間がかかるから、実はアートがやっぱり一番早いから、アーティストのセンスがこの世界をどういう風に予見していくかが分かるんだって書いてあって。

豊津 というかね、みんなね、そこですごく大事なのは、僕たちの先に未来があると思ってるじゃない。

角田 はい。

豊津 ないんですよ。未来はここにしかない。

角田 …来ましたよ、また。豊津語録が。未来はここにしかない。ここにしかない!

豊津 そう。だからここに在るものを一番早く伝えるものがアートなんだよ。

角田 で、それを生み出すのがアーティストなんだ。

豊津 うん。ここを科学的に証明するために相当時間が掛かるから。だからアインシュタインが相対性理論を考えて一般相対性理論でみんなが分かるようにするまでに20年かかったからね。でもその時に相対性理論はアインシュタインの目には映ってるんだよ。でも証明するのに20年かかるわけね。アートは証明してない。

角田 しなくていいと言うか、出来ないですもんね。ただ逆にアートがその世界の一番の…なんて言うんだろう…未来を、今ここで体現してる。

豊津 そう。だから未来はここにしかないんですよ。

角田 ここにしかないんですよ、みなさん。

豊津 だからその中で誰が何の機能を果たすか?なの。

角田 はぁ〜、すごい!今日は東京画廊で 『OUR HOUSE』…、ああ、でもまたこれが 『OUR HOUSE』なんだけど、私たちの家で、今ここに未来がある。

豊津 (笑) そういうことです。

角田 というのを体験した、と。

豊津 だからもう色んな暮らし方があると思うんだよ、今。僕たちが知らない。だからその色んな暮らし方をそれぞれ見ると、未来の暮らし方が必ずここにあるわな。

角田 あぁ〜、面白いですね。あのだから今書いてありますけど。「もう昔の時代の絵を見る時に、当時の歴史の知識無しに見られない」って書いてあって。まさにそういうことですよね。だからその印象派なら印章画が描かれたのは未来を…その瞬間の今を描いてて、それが未来なんですよね。はぁぁ。「画廊には今の未来があるんだ」と。

豊津 そうです。だからアートは止められないの(笑)

角田 だから豊津さんこんなに元気なんですね。

豊津 そうです(^^)

角田 いや、元気というかね、豊津さん…本当にあと5分ぐらいなんであれなんですけど。先週の動画、もし見てない方はぜひ本当に見て欲しいんですけど。

豊津 っうふふ!

角田 先週はね、普通にボクと豊津さんで zoom で話してますけど。いつの間にか悩んでる角田のですね、セラピーみたいになって。角田陽一郎のお悩み相談会みたくなっちゃってて、やってたらですね。つまりアーティストってボク悩んでるからアート、作品が作れると思ってたんですよ。ってことを言ったら、その悩むというか、だから…悩んでるとどんどん落ち込みなせんかね?みたいなことをボクが言ったんですよね。そしたら豊津さんがそれは他者、他者が絶対的な他者がいないとそれは自分の中でアートの作品との戦いが出来ない。…って言われた時に、ボクはその絶対他者がいなかったってことに気づいて、他者って甘える存在だったと思うんです。だから…なんて言うんでしょう、オレはこんなに傷ついたんだぜとか(笑) で、そういうものを表現するのがアートなのかなーと思って、ちょっと勘違いしてたんですよね。ところが絶対他者って言えればアーティストはたぶん自分の中で作品を作って、生み出すことが出来るんだなってことを豊津さんはご存知だから、アーティスト達と…ある意味コミュニケーション出来るんだなーって思いましたね。はい。でもね、さっき楽屋でですね。ホントにね、これが始まる前にパン食べながら雑談してたんですけど。アーティストは孤独に耐えられるって話をね、豊津さんが言ったんですけど。「俺耐えられないから」って言ってました(笑)

豊津 はははは!!

角田 言ってましたね。だから全員アーティストじゃないってことですよね。

豊津 やっぱりね、アーティストは何か作りたいって衝動があるから。僕には何か作りたいって衝動はないんですよ。僕自身にはね。だから作ったものに影響を受けるけど、自分から作り出すっていう感覚は自分にないから。それは独りではいられないですよ。

角田 うん。作った人とコミュニケーションしたり、次は何作るの?みたいなことを、対話を繰り返したいんですよね。

豊津 そう。でもアーティスト達もやっぱり僕と話たいってことは、アーティスト達もしばらくするとね、独りでいても先に進まねぇなってことがあるから。その時、僕みたいな者が現れると、そこに絶対他者として現れるんでホッとするわけよ。

角田 だから画廊ってのは本当に絶対他者なのかも知れないですね。

豊津 そうそう。だから絶対他者っていうのは身近なほど絶対他者だから。あの…自分の妻や娘に説得するってのはこれっほど難しいことはない(笑)

角田 (笑)今実感が込もってましたけどもね。はい。そうですよね。ああ、なるほどね

豊津 暫くぶりに会った人に説得するのは楽なの。毎日横にいる人に説得するのは不可能。

角田 なるほど(笑) はい!そういうことで、豊津徳、今日10回目でした。

豊津 10回目。ああ、そう!

角田 来月はまた1ヶ月後ぐらいにやりますので。

豊津 はい。またよろしくお願いします。

角田 どうもありがとうございました!

豊津 どうも今日はありがとうございました!

角田 じゃあ配信止めて頂いちゃって。どうも〜(^^)

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教養としてのお金とアート 誰でもわかる「新たな価値のつくり方」 田中靖浩・山本豊津 著
コレクションと資本主義 「美術と蒐集」を知れば経済の核心がわかる (角川新書) 水野和夫・山本豊津 著
アートは資本主義の行方を予言する (PHP新書) 山本豊津 著

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文字起こし後の文字寝かし

 金田勝一さん、1970年生まれで角田さんと同い年なんですね。ロシアンブルーかな?猫(?)を被ってる(^^) 東京画廊での過去の展示会もページも見られる。

Showichi Kaneda/東京画廊

 最大のファッションショーが歌舞伎。どこかで聞いたけど、庶民は花魁ファッションを真似たと聞いたことがある。男性は歌舞伎、女性は歌舞伎か花魁が流行を作ってた。今も昔も魅せる職業の人、表現者というのかな。
 歌舞伎役者って男性だけだったっけ?と急に不安になり検索。それは流石に合ってたけど…「歌舞伎は京都の女性芸人から始まった」との記事発見。ひとりのかぶいた女性芸人から始まり、これを遊女や女性芸人が真似するようになるものの、風紀を乱すということで禁止に。以降、男性役者のみに。この時、女性が演じた男性が男性が演じる女性へと変わったそう。初耳だ!面白いな。

女性から男性へ、歌舞伎役者の変遷(国学院大学)

 歌舞伎の花道と浮世絵。女性は髪型の真似が特に流行ったと聞いた気がするけど、やっぱり当時も目上から”はしたない”とか嫁の貰い手がなくなるなんて注意されたんだろうか。全く近頃の若者は…とか。だってセネカの時代で「現代人は時間がない」んだからね、”近頃の若者”だって注意されるだろう。大正時代には袴を膝下丈に着て素足を見せる流行りがあったそうだけど、今より大正が自由だったわけではなく相当怒られたって話だった。祖母が電車やバスの吊革は脇が丸見えになるので恥ずかしくて持てないって言ってたの、懐かしい。時代で変わるところ、変わらないところ。

 豊津さんが子年と仰ってた豊津徳回があったので、私の父と同年だなーというこは1948年生まれ。日本にプラモデルが入ったのは1950年代初め。1940年台の子供の遊びで検索してみると、この頃は模型飛行機は人気だったけど金属は使用禁止で木、竹、紙、布、土などに制限。40年代後半にかけてブリキ製玩具や鉄のベーゴマ、ゴム玩具、1950年台に入ってここでプラスチック製玩具が登場。プラモデルの輸入時期と合ってる。
 ガンプラの最初は?と見てみると1980年7月19日とはっきり。前年の1979年12月にバンダイがガンダムのプラモ商品化権を取得、急いで開発。1980年、角田さんは10歳なので、プラモデル作成の年齢としてちょうどいい時期だし、初期のガンプラは色は単色なので要塗装だけど、今ほど複雑な作りじゃないので、ニッパーと接着剤があれば割りと簡単にできたっぽい。現在はパーツは細分化されパーツ数は死ぬほど増えたけど塗装なしでもアニメと同じ色の仕上がり。ほぼ接着剤いらず。今でも1980年代の復刻ガンプラが販売されている。

 刀伊は「古代中国で周辺地域に存在した異民族(一般に東夷,北狄,南蛮,西戎)のことを指す夷狄 (いてき) を意味する朝鮮語で、女真族 (→女真 ) を指した。」とのこと。

 コレクションをするということ。先日ブックセラーズという映画を観た。映画の最後にあなたが死んだらこの本はどうするか?という質問があった。また流通に乗るだけ。お世話になってる大学に寄贈。私が一番コレクションとはなんだ?ということが分かったかも?!と思ったのは、「とにかく私のコレクションを散逸させたくない」と言った女性。彼女はこの世の全ての本を持ってるわけじゃない。彼女の指標=彼女の世界観によってコレクションの対象になる本の種類や範囲が限定された結果が彼女の所有本。コレクションとはコレクターの世界観なんだ。同じ本でも、範囲も種類も人の数だけある世界観を構築する一要素になる。

 385,000円。世界史の印税で福田さんの絵が買えた(ICUC#029)ということは、日本史の増刷印税か夏に出る小説で金田さんの作品買える…良かった良かった!
 小清水さんの垂線のときにも話に出てたけど、やっぱりあのギャラリーの展示も作品の一要素と素人が画面越しながらもそう感じる。散逸させずにコレクションに加えるたくなる気持ちが分かる。面白いのは書の回の坂巻さんの作品、東京画廊のPタイル拓のシール。角田さんも1枚買ってたけど、あれはわざと散逸させて、持ち寄った”時”を作ろうとしてる。アートは様々な事情で散逸するものも多くて、やっぱり揃った時の気持ちは格別だ。作者も亡くなり、その時代もとうに過ぎたのに、アートにも本にも歴史が少しずつ加えられて行くのって不思議だ。難しいけどモノを作るなら、そのモノがそうやって長く時を行けるようにしてやりたい。

 この車が変だなーって思ってるのは、実は僕らが変だからってこと。俯瞰するためにこの場を離れるということは難しい。離れたようでも離れ切れていない。宇宙の境界線は誰にも分からないのに、宇宙の外から宇宙を見ようとするのと似てる。あと自分の声を聞くと変な声ってのも似てる気がする。私たちはサーフェイスしか見られなくて、豊津さんの解説でそのサーフェイスの内側を見るためののぞきポイントだけ教えてもらえる感じがする。アーティストは全部見えてしまうから、みんなの方が変なんだよって思うけど、変だってことを伝えても伝わらないと言う意味では孤独。でも変な人と一緒にいると疲れちゃうからね。そこへ時々、豊津さんみたいな翻訳者が立ってくれる感じがする。あー、アーティストに対してこの人変わってるなーって思ってるのは、そいうことだ、実は言った僕らが”変わってる人”。

 年を重ねて全てが懐かしくなったがために、頭の中が美しさで溢れてくるなら、死ぬことも怖いばっかりじゃないかもしれないな。

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