見出し画像

人を排した街は人が住めない

大昔、路上で生活をされている方々への支援を行うNPO法人を手伝っていた時の話。

活動内容は支援を必要とする方への食事の提供、寄付で送られれてきた衣類の提供、夜寒くないように毛布を配ったり、何か困っていないかを聞き取りしたり雑談したり。

自分はその時はただの手伝いでノンスキルだった(今もだけど)ので、夜に街の各所で寝る準備をされてる方々に毛布を配ったり、雑談をしたりくらいをさせてもらってた。

路上で生活をされている方の年齢層は50代後半以降が多くて、たまに20ー30代も1ー2人くらいいたかな?圧倒的に男性が多くて、女性は1割くらい(これはまた別の問題としてある。)

住む場所を失った理由については、十人十色なので一概には言えない。ただ、よく聴くのは高度経済成長期に多くの人たちが高層ビルを建築するために工事現場で労働者として働いていて、そして、建築ラッシュがしぼんでいくと同時にまた現場での仕事も少なくなっていたため、失業したという人が多かった。

公園で大規模な炊き出しを行う時の設営などは皆んな一緒に作業を行っていた。もともと建設現場でキャリアを築いてきた方が多かったので、そのスキルの高さに驚いた。テキパキと足場を作っていかはるし、テントなんてすぐに立ててしまう。中には料理人の方もいらっしゃって、その人が作る炊き出しは美味しかった。一緒に作業してたけど、ベテランの中に自分みたいな素人が混じって作業させてもらってて、よく怒られたなー。「手伝いでも中途半端にやるな、真剣にやれ」と言われたのは今でも覚えてる。

本当にいろんな人が居たけれど、話好きな人が多かったなというイメージ。自分はおじさんたちのお子さんか孫くらいの歳だったので、よく可愛がってもらえた。「自分、路上で生きていく素質あるで!」と言われたりもした。

街頭に立っておじさんたち何人かと募金活動も行った。各地から物資などの寄付はあったけど、どんな活動でもお金は必要。ただ、なかなか寄付は集まらなかった。おじさんたちと「寒いですねー」とか雑談して立っている時間の方が長かった。

ある時、寄付を募りに街頭に立ってたら40代後半くらいの方が怒ったような雰囲気でこちらに向かってこられるのに気づいた。(実際怒ってた。)

「働けってあいつらに言いなさい!」とその人は自分に怒鳴って、その場を去っていった。見ず知らずの人から、そういうことも言われるんだなーと思った。ほとんどの人は無視して素通りしていくのが常だったが、その方には何か気に障るようなことがあったのだろうか。その人自身にも何かあるのだろうか、あったのだろうか。怒気を含んだその顔を思い出すと今でもその方はどうされているんだろうと想像する。どうか、今は怒りに囚われることなく過ごせていることを願う。

今、おじさんたちはどう過ごしているのか。健康でいられているのか、食べれているのか、コロナの騒動で大変な思いをしていないか。いろんなことが気になる。

どうか、全ての方々が無事でいられることを今は祈るしかできない。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?