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日々の壁打ち:「絵描きさんの言葉」と「それ以外の人達の言葉」の意味合いの違い。特に生成AIが出力する絵に関して。

ChatGPTで、自分のためにMy GPTsを開発すると、とても面白い体験を味わえる。このnoteは、My GPTsとの付き合い方の記録である。


はじめに:僕のパートナーは元プロの絵描きさんです

僕のパートナー、世間的に言いますと、配偶者もしくは奥様は、元プロの絵描きさんです。現在は、子どものために家庭に入ってもらっています。現役時代は、ずっと僕のパートナーとして、数々のゲームの作画監督やCG監督をやってもらっておりました。
例えば、『とらドラ・ポータブル!』や『涼宮ハルヒ』シリーズのADVゲームです。

絵描きさんのパートナーがいると、大変ありがたいことに、絵やイラストについて詳しく話を聴くことができます。しかも「パートナー」ですから、相当歯に衣着せない正直な発言も聴かせてくれますし、相手の言葉の意味について、さらにじっくりと深ぼりをしながら聴くこともできます。
今回、そのパートナーに、僕が自作GPTsの『Japan Anime Character Maker』を使ってDALL-E 3に作成させた絵の感想をもらいました。
そこから「なるほど」と納得することがありましたので、このnoteを書くことにしました。

「うん、とてもいい絵だと思う。だけど…」

このエピソードの発端は、上のDALL-E 3に描いてもらった可愛らしいイラストをPCの壁紙にしている特に、部屋に入ってきたパートナーがそれを見て、何か言いたそうな様子をしていることからでした。

僕が「コレ、ChatGPTに描かせたんだよ。どうだろう?」と声をかけると、
パートナーは「うん、とてもいい絵だね。だけど…」と一瞬、言葉を濁らせた後で、こう続けたのです。
「なんか気持ち悪いというか…あっちこっち切り貼りして描かれてるみたいな感じなんだよね」

『コピペで描かれているような絵』という表現

生成AIが出力する絵に対して、「コピペで描かれているような絵」と表現する絵描きさんは結構います。なので自分も、
(おやおや…ウチのパートナーも同じなのかな?)と思い、
いや、これはシステム的に『切り貼り』で描かれているはずはないよ
と応えたのですが、それに対してパートナーは、「多分こちらの言葉を、そちらも誤解していると思う」と言うのです。
そこでじっくりと聞いてみることにしました。

絵描きさんの視点から見ると、この絵はどのように見えているのか?

ここからは、絵描きさんであるパートナーの目からは、この絵はどのように見えているのかを、まとめてみます。

もう一度、この絵をみてください。

壁紙にしているぐらいですから、僕にとってはお気に入りってことです。

この絵の良い点

  • とにかく塗りが綺麗。これを手で塗るとしたら、相当時間がかかる。エフェクトも手間がかかってる…。ある意味、これを30秒で出されるとなると、正直絵描きとしては困るぐらい。

  • ツィンテールを構成している巻き毛の表現が繊細ですごい。このような巻き毛を描くときには、事前にどういうデザインにするか散々ラフをとった後で、しかも各々の髪の束の表と裏がどのように交わるのか、立体構造を意識しないと描けない。塗りも考えると、本当にこういう表現が好きな人でないとちょっと描くのも辛いぐらい。

  • レースの表現も繊細でよい

と褒めた後で、こう続けます。

絵描きさんの目がぱっと見で、気になってしまうところ

この絵の奇妙な点

  • ぱっと見て、目についてしまうのが、胸のリボンの位置がおかしい。付いている位置が下すぎるし、そもそも構造的におかしい。

  • それに袖の形が左右で違っているし、一方にはフリルが付いていない。これだと袖が左右で別物になってしまう。

  • 良い点であげた「巻き髪の表現の繊細さ」と比べた時に、「胸のリボンの位置や左右の袖のデザインが揃ってない、いい加減さ」が見ていて、とてもバランスが悪い。もしこれを人が描いていたとしたら、巻き髪にここまでこだわって描いている人が、この胸のリボンの位置のおかしさに気づかないはずがない。このチグハグさが気になって仕方が無い。

絵描きさんの目からは、このチグハグさが「気持ち悪い」と感じる原因なんだとのこと。

表現のスキルレベルが一致していないパーツの混在

パートナーの言葉をまとめると「表現のスキルレベルが一致していないパーツが、ひとつの絵に複数含まれているように感じる」とのことでした。それが絵描きさんがこの絵に感じてしまう違和感なのだそうです。それを評して、「あっちこっち切り貼りして描かれてるみたいな感じ」と表現したのだとのこと。

この言葉を聞いて、自分にもピンとくることがありました。エンジニア視点の方ならば、たまたま仕事で中身を確認することになった、「動いてはいるが、どことなく矛盾のある部分も沢山ある、コピペだらけのコード」のことを思い出してみるといいかもしれません。こういうコードを見た時には、どうします? 大抵はため息をついた後で、修正を始めるか、見なかったことにしてそっと閉じることでしょう。その感覚です。「やれやれ。これはヘヴィだぜ…」と表現してもいいのかもしれないですね。

絵描きさんは通常の人よりも、絵の細部に対する感覚は繊細なので、普通の人がぱっと見で「いい絵だな」で終わってしまうところが、それだけでは済まないってことですね。人なら絶対にやらないであろう、不思議なチグハグさが気になるということ。これを「気持ち悪い」と評しているのなら、それはわからないこともない。

そこはかとなく見える、誰かの手癖の名残

その他にも、「塗りを見るとライティングは比較的合っているのに、細かいところのパーツの描き方、例えばツィンテールの根元を縛っているリボンを見ると、3D的には間違っているので、これは3Dを下敷きにしたものではないことはわかるが、そうすると今度は何本も線を重ねた、タッチが残る目元の表現や瞳の塗り方に、誰かの「手癖」を感じてならない」んだそうです。

この絵が、「◎◎さんと××さんと△△さんの絵を混ぜました」と書いてあるのならまだ納得できるのだが、それすらないと絵を見ている内に自分の記憶の中にある、特定の作家さんの「手癖」が、部分部分にすすけて見えてきて、それがまた気持ち悪いんだとのこと。

ちなみにこのnoteの元になったポストをfacebookであげたところ、同じく友人の絵描きさんの方が、「そうそう!絵としてめっちゃ上手いところがあるのに、思わず「そこそう描いちゃう?」とツッコミたくなる部分がいくつかあるし、一番描き手の個性(特徴)が出やすい顔の表情とかは、『誰か』の描き方に酷似しているんだよね」と同感を寄せてくれた上で、AIは「崩れ方のバランスが人間と違う」とまとめてくれました。

確かに数は少ないですが、身の周りにいる絵描きさんが同じことを感じていることが、こうして言語化したことでわかった訳です。

このエピソードが伝えてくれること

これは、たまたま僕のパートナーが、僕とは違った感覚でモノを見ているからこそわかったことです。どちらか言えば、僕は絵よりは文字での表現のほうに重心が偏った人間ですから。生成AIを使いこなす多くの人もその傾向が強いと思います。

このエピソードに大事なことがあるとすれば、このようなことではないでしょうか?

  • 同じ能力属性を持つ人達が、決まって言うことには、何らかの共通の意味がある可能性がある。それをただ単に「技術に対する無理解」と切り落としてはいけない。

  • 生成AIが生成した画像を商業利用する場合、それがブログの挿絵カットのような使い捨てのものなら、お気に入りを好きな様に使っても構わないのですが、もしその画像自体を商品として「ウリ」にするならば、必ず人間の絵描きさんによるアートディレクションを入れたほうがよいでしょう。何故ならば、上のようなことをすぐに感じる層は、お客さんの中にも一定数いるでしょうから。

生成AIが生成する絵は、全体として完成度が高いものも多いのですが、そんな高い完成度の絵であっても、細かい部分を見ると嘘が混じっている可能性があり、それが気になる人もいるということは、知っておいてよいことでしょう。見方を変えれば、そこをどのように克服するかを考えることは、十分なビジネスチャンスへと繋がる可能性もあるってことです。

想定以上に読まれているようなのでの補足 2024/02/21

こちらのnote、自分の予測を超えて4000ビューを越えて読まれているようなので、補足を追加しておきたいと思います。

上のような会話をパートナーとした後でも、自分はこの絵を壁紙として使い続けています。その理由は「この絵は、とてもいい絵だから」。
パートナーにとって気になるポイントがあろうと、それでも自分の中にあるこの絵の評価は変わりません。またパートナーにはパートナーの評価ポイントや価値観があり、それを大切なものとして自分も認めますし、パートナーの側もこの壁紙を使い続ける自分を否定しません。
愛好したり、愛玩するということはそういうことじゃないでしょうか。

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