それでもNYに住みたかった
1.兄がてんかんを発症した原因
僕の記憶は2歳からある。兄が、てんかんという病気を抱えていたからだろうか。
兄は正常に生まれてきたのだが、てんかんの発作は、母が母乳をあげるため乳房のマッサージを看護師さんにお願いしていたときから始まったのだという。
日本でも温暖な地域の北九州市とはいえ、2月は寒い。昭和の助産院は、暖房など完備されてなく、すりガラスの窓がカタカタと北風で音をたてていた。マッサージをうけてる母も寒さに震えるくらいである。兄はオムツ一枚だけで、上半身は裸のままベビーベッドに放置されていた。
「赤ちゃんは、もっと寒いだろうから。何かでくるんでもらえませんか?」と母は看護師にお願いした。
「大丈夫よ、少しくらいなら。」と看護師は母の願いを受け入れずマッサージを続けた。マッサージを受けているため、母もあまり無理を言えなかったが、しばらくすると兄の様子がおかしいことに気づいた。
「呼吸をしてないみたいだし、赤ちゃんの様子がおかしいから、ちょっと手を休めて見てもらえませんか?」と、もう一度お願いしてみたが、それでもまったくスルーされてしまった。
言ってるうちに、みるみる小さな赤子の身体は紫色へと変化していった。
「あぁ〜紫色になってきた。」と、母はいよいよ声をあげた。
「そんなわけはないでしょ。」と看護師が、母の大声にようやく赤子のそばへやってきた。
「あぁ〜、大変、チアノーゼ起こしている。」そこからは、慌てて医師やほかの看護師がドカドカと病室へやってきた。
その日から、兄は、てんかんの発作を起こすようになったのだった。
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