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作品解説◇アンダーライン◇前編

 完結という印をつけてから約二か月経ちましたので、改めて解説的なものを。全体で目指した構成、一話ごとの製作裏話を簡単に書き連ねたいと思います。


0.全体で目指した構成

 最初から公募などが可能な10万字程度が書けるようにしよう! というイメージはありましたが、長編一つで仕上げるのは難しいというのがこれまでの経験上、2万字前後の話を5本作ろう! というところで落ち着きました。
 5本のイメージ、全体の構成としては刑事ドラマを想定して作りました。

 第1話:導入。主人公・松本とその周囲の人のお話。事件はオーソドックスに。
 第2話:1話を受けて。少しだけ松本の過去に触れる。事件は少し複雑に(正直これが一番考えるの難しい話でした)
 →1、2話がドラマで言うところの前半数話のイメージです。登場人物と起きる事件は単発でなるべくシンプルに。

 第3話:~最終話までの入口の1話。舞台の国で過去に何が行われたかをにおわせつつ、もう一人の主人公・六条院の出自、なぜここにいる? を掘り下げ。鉄板の入れ替わりネタも入れる(これは私の趣味)。
 第4話:最終話に向けて動き出す。過去に行われたことの負債が少しずつ明らかに。松本に少し不審な動きを入れる。まだ六条院は動かず見守るのみ。物語としても少し後味の悪さと不気味さをいれる。
 第5話:最終話。松本の出自を明らかにする。過去の遺物に振り回される松本と六条院を描く。解決後、自分の将来をどうするか松本に決断させる。
 →3~5話は刑事ドラマの最終話付近の想定。数回にわたって一つの事件を追うような構成にしました。

 そしてすべての話に言えるのですが、冒頭に必ず季節を入れるようにしていました。一応5話までで一年経ちます。

1.第一話 Fluorite(CaF2)

松本について

 第一話では松本の基本的な倫理観・正義感を示したかったので、当初「男」としか決めていなかった不当労働行為の被害者を「少年」にしました。年若く、やりなおすチャンスのある少年にしっかりと更生をうながせるところは松本の真っ直ぐなところが描けたのではないかと自分でも思っています。少年・シュウが言った「いつか、松本さんと働けたらいいな」という言葉は本心だと思いますし、いつかシュウは<アンダーライン>に入ってくると思います。

六条院について

 わざと格式ばったしゃべりかたをさせた六条院ですが、実は熱い人ですし、松本のやりたいことは理にかなっていれば許可をしますよ、というスタンスを見せようと決めて作成した話でもあります。
 松本の評判はずっと南方(松本の元上官)から聞いていたこともあって、ぜひ手元において一緒に働きたいと思っていたようです。

櫻井について

 あとは最初からずっと出ていた櫻井ですが、お話を進めるにあたって行き当たりばったりで作ったキャラクターです。(今だから言えることの一つ)今ではもうアンダーラインシリーズに欠かせないキャラクターになりましたが、出した当初はこんなにも使い勝手の良いキャラクターになるとは思ってもいませんでした。松本の家探しの面倒を見させたのが功を奏したと思います。

2.第二話 Moonshiner 

物語全体について

 松本の帰省から始まる本話ですが、基本的に星野との関係は良好です。松本の仕事をわかったうえで、いってらっしゃいと送り出してくれる人を描きたかったのが冒頭です。
 前回が製鉄用の密採掘/不正労働というテーマで、第二話は密造酒造りにシフトしました。確実に身体に害があって、下手をすると死の原因にもなるが、誤飲されるもの、という縛りをクリアしてくれたのがメタノール入りの密造酒でした。余談ですが、私の学生時の専攻が化学でしたのでこれを活かさない手はないな、ということで一つ。これ以降出てくる知識や物語の設定についても、私の知識を使いやすいようにアレンジしています(もちろん参考図書もあります)。

松本について

 今回は、いわゆる飲み屋街(福岡・中洲のような場所を想定してほしい)を歩きますので、かなり彼にとっては刺激が強い場所です。遮断できない状況でいろんな情報が入ってくるのは結構キツイだろうなと思うのですが、お仕事なのでがんばってくれました。よくやった。
 星野という心の拠り所には少し柔らかで、甘えるようなところもある、という部分を描写できたと思っています。

志登について

 数年後の松本、というイメージで書きました(実際志登の年齢は30歳という設定です)。元々松本の同階級にあたる人物は出す予定でしたが、思ったよりもぐいぐい松本に絡んでくれて書きながらおもしろかったです。しかも、仕事中に芋ロック飲むようなことになったファンキーなところまで持ち合わせていました(ちょっと仕事中の飲酒はどうにかしたいけど志登のキャラクター的には削りたくないところ)。
 そうかと思えば、最後にきちんと犯人へ言葉をかけられるようなしっかりした面も持ち合わせているので、ギャップでやられる人がいるだろうなと思っています。
 なお、稲堂丸(強面で損をしている)の下でのびのび働いているので、六条院(名前としゃべり方で損をしている)の下でのびのび働いている松本と並んで「すげー副隊長」という評価をされています。

星野・多久について

 松本の面倒を見て、<アンダーライン>にも顔が効く人として星野、および情報提供者としてスムーズに協力してくれる人の多久を登場させました。二人は同期だったので、退官するまでおよそ数十年を共にしています。

 松本の星野邸でのエピソードは第五話でも出てきます。なお続編においては星野邸を相続しているのですごく良好な関係を築いていました。特に子供がいなかった星野夫妻は松本を可愛がったと思います。最初はその愛情を素直に受け取れていなかったと思いますが、そのうち松本の方からも返すようになって今に至ります。

前編は以上となります!
後編はまた来週更新する予定ですので、お楽しみに♪

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