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貯金20万円のアラサー女子が一念発起!“ゼロから始める投資思考” ①東証×USIC イベントレポート

皆さんこんにちは。NVIC note編集部です。気が付いたらかなり久しぶりの更新となってしまいました。。。今回より不定期ではありますが川代紗生さんのイベントレポートを掲載させていただきます。
川代紗生さんは天狼院書店で「人生が変わるライティングゼミ」の講師としても活躍中のフリーのライターさんです。実は先日ダイヤモンドの「だからこの本」の取材で記事を書いていただいたのですが、その内容はもちろんのこと、川代さんが作り出すライティングの世界観にNVICメンバー一堂魅了されてしまったのです。

https://diamond.jp/list/series-books/kazushigeokuno

未だ素人感から抜け出せない!?NVICのnoteに新しい風を吹き込むべく、何とか川代さんのコーナーを作れないか?無理を言ってお願いをさせて頂き、今回実現に至りました。
川代さんの目から見た「投資」が一体どのように描かれるのか?我々も大変楽しみにしております。是非ご期待ください!


<川代さんより一言>

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のっけからこんなことをぶっちゃけるのはどうなんだと思わないでもないのですが、私は貯金が20万円しかありません。今年で29歳と、いい大人のはずなのですが、どうしてこうもお金が貯まらないのか……。といっても、不思議なのです。毎月一定額貯金できるだけの収入はあって、そこまで贅沢もしていないはずなのに、なぜか気がついたら口座のお金が減っている。どういうこと?
とはいえ、いつまでも「あーお金が増えない、どうしよう」と騒いでいてもしょうがありません。ゆくゆくは結婚して出産もしたいし、それなりにゆとりのある暮らしがしたいと思っています。
というわけで、このたび、一念発起いたしました。「お金」や「投資」のプロフェッショナルである奥野さんやNVICのみなさまに、ゼロから投資について教えていただこうと思います! 投資とは何か? 投資をするメリットって? と素朴な疑問から解消し、少しずつでも資産を増やしていけたらいいなと思います。投資初心者のみなさま、「お金について考えるのが苦手」というみなさま、一緒に「貯金下手」を卒業しましょう!!

川代さんnote→https://note.com/kawashirosaki/



【イベントレポート】大学生が投資をするメリットとは?投資のプロに聞いてみた!《ファンドマネージャー・奥野一成×投資サークルの大学生によるWebトーク&ライブ交流会》

「自分のオーナーになってください。自分の人生は、自分のものなんです。親のものでもなく、教師や先輩のものでもありません。『こうしたほうがいい』とアドバイスをくれる人はたくさんいるかもしれないけれど、自分の人生の責任をとれるのは自分しかいないんです」

その言葉が、強く響いた。これから社会に出ていく学生たちの不安そうな表情も、少しずつ和らいでいくように見えた。

6月18日(金)、日本取引所グループが運営する「JPXアカデミー・オンライン講座」に、農林中金バリューインベストメンツ常務取締役CIO・奥野一成が登壇した。「これから学ぶ人のための、シン『投資』考」というテーマで行われたWebトーク&ライブ交流会。聞き手となったのは、なんと4名の大学生たちである。今回は、全国多数の投資サークルからなる学生投資連合(USIC)を代表し、大学1・2年生の幹部メンバーが出演。なかなか思うように動けないコロナ禍で不安を抱く学生たちに、奥野がどうしても伝えたかったこととは──?

今回は、YouTube配信での視聴者数も含め約560名が参加した本イベントをレポートする。「株式投資」のみならず「稼ぐとは何か」「自己投資とは何か」など、生き方にまで切り込んだ白熱の「投資」講義を、ぜひ追体験してもらいたい。

<登壇者>
〇農林中金バリューインベストメンツ株式会社  
常務取締役CIO 奥野 一成

〇学生投資連合USIC(12期幹部)   
代表   八田 潤一郎さん(慶應義塾大学法学部政治学科2年)   
副代表 峰 慶多さん(慶應義塾大学商学部2年)   
副代表 佐野 快斗さん(明治大学文学部2年)  
聞き手  清水 優葵さん(明治大学法学部1年)

学生投資連合USIC活動紹介ののち、ゲストスピーカーとして奥野が登壇。『「教養としての投資」を学ぼう』と題した基礎講義がスタートした。

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奥野:みなさん、よろしくお願いします。

学生一同:よろしくお願いいたします!

奥野:今日は大学生のみなさんと一緒に「投資」について学んでいくわけですが、私としては、「投資サークル」があること自体がすごいな、と。

というのも、私が大学生のころは、「投資サークル」なんてなかったんです。そもそも「投資をする」こと自体に、なんていうんでしょう……「うしろめたさ」があったんですよね。日本人ってやっぱり、「汗水垂らして働く」ことをよしとする風潮があるでしょう? だから、「楽して儲けようとしているんじゃないか」みたいな目で見られることもあって。
もしかすると、学生さんや投資初心者の方、まだ投資をしたことがない方のなかには、そういった疑問・不安を持っている方もいるかもしれませんね。なので今回は、おもに二つの論点についてお話ししたいと思います。

① そもそも、投資とは何か? 
② なぜ、投資をするのか? 投資をする意義とは?

この二つです。

日々の株価は市場参加者たちの「気持ち」で決まってしまう

奥野:まずは、「そもそも投資とは何か?」という論点について考えてみましょうか。みなさんは、「投資」という言葉を聞いたとき、どんなイメージを思い浮かべますか?

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奥野:こう、東京証券取引所の電光掲示板の前に立って、株価が上がったら「うわっ、やった儲かった! 俺って天才かも!」と大喜びして、株価が落ちたら焦って……と一喜一憂する。そんなイメージじゃないでしょうか。

たしかにこういうやり方もありますし、否定するつもりはまったくありません。
ただ、言葉を選ばずにいうと、こういった投資手法は、ギャンブルと一緒なんです。

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たとえば「どうも、これから景気が悪くなりそうだぞ」というニュースが流れると、市場参加者がみんな弱気になり株を売るので、すべての企業の株価が一斉に下がったりしてしまいます。要するに、日々の株価というのは株式市場に参加している人たちの「気持ち」で決まってしまうんですね。そういった中短期的な市場参加者たちの「気持ち」を予測するのは難しい……というか、不可能なんです。


「投資」と「投機」の違いとは?

奥野:一方で、私が提案しているバフェット流の「長期集中投資」は、「売らなくていい会社しか買わない」というコンセプトの投資手法です。

学生一同:?

奥野:ちょっと難しいかもしれませんね。「農地」のたとえを使って、「投資」と「投機」の違いについて考えてみましょうか。

みなさんが農地を5,000万円で買うとしましょう。ほとんどの人は、農地に種を植えて、そこで育った作物を売って500万円儲かったらいいな……というビジネスプランを考えますよね。
5,000万円で買った農地によって、10%のリターンを得られた。これが「投資」なんです。

「5,000万円で買った農地が半年後に7,500万円で売れたらいいな」とか「1年後に2,500万円になっちゃうと怖いから買うのやめておこう」なんて、ほとんどの人は考えませんよね。

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奥野:でも、株になったとたんに、なぜかこういうことをしてしまう。
半年後に750円になっていたらいいなあ、と思いながら500円の株を買ったり、250円に下がって「ああ、買わなければよかった」と後悔したりするわけです。

こういった、短期間での変動の差益をねらって売買取引をするやり方は「投資」ではなく「投機」と呼んでいます。

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奥野:本来「株」とは、その株券を発行している企業が将来的に生み出す利益をシェアするというもの。英語で株のことを「share」といったり、株主のことを「シェアホルダー」といったりするのは、そういう仕組みだからなんですね。

私がやっているのはギャンブル的な「投機」ではなく、「売らなくていい会社しか買わない」という方針に基づいた「投資」です。売買取引を前提にしていない。これが「長期集中投資」というやり方です。

なので正直なことを言ってしまうと、東京証券取引所が止まったとしても、私たちはまったく困らないわけです(笑)。一時的に下がったとしても、長期的に見れば成長すると考えられる「構造的に強靭な企業Ⓡ」に投資し続けているからです。


ナイキの株価が27年で55倍になった理由

奥野:とはいえ、株価の変動が不安だという人も多いと思うので、株価の推移を実際に見てみましょうか。

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奥野:これは、ナイキの株価の推移をあらわしたグラフです。
まずは、左のグラフの真ん中を見てみてください。ボコーンと30%くらい落ちていますよね。これが2020年3月頃のコロナショックです。
でも、そのあと倍以上に伸び続けているのがわかりますよね。2021年には、高値で安定しています。

直近のものだけではなく、ここ数十年の推移……右側のグラフも見てみましょうか。これはナイキの利益と株価の変動をあらわしているのですが、1993年から2019年の27年間で、株価はじつに55倍に伸びています。このグラフには入っていませんが、2020年まで見ると77倍にもなるんですよ。
さて、なぜナイキはここまで安定して利益・株価を伸ばし続けられているのでしょうか?

学生一同:うーん……?

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奥野:それは、社会の問題解決に貢献し続けてきたからなんです。

たとえば、ここ数年で多くのアスリートたちが履くようになった「ピンクシューズ」をご存知でしょうか。日本では、東京オリンピックの代表選考レース『マラソングランドチャンピオンシップ』に出走した多くの選手が履いていたことで話題になりましたよね。正式には「ヴェイパーフライ」という商品なのですが、厚底部分に特殊なカーボンプレートが入っていて、マラソンランナーの体力を温存しやすくなっているんです。42.195キロ走る人にとって体力温存は大問題ですから、結果、多くのアスリートたちに求められるようになったのでしょう。

つまり、ナイキは「体力温存したい」というニーズを汲み取り、ランナーたちが長年抱いてきた問題を解決したんです。その対価として、大きな利益を得ているわけです。ナイキは創業当初から、そうやってアスリートの問題解決に心血を注いでいるんです。だからこそ、成長し続けられている。

大きな利益を得た=社会の大きな問題を解決した、ということ。
持続的に利益を得ている=お客様の問題を解決し続けている、ということ。

日本人のなかにはどうしても「利益を出す」ことにたいしていいイメージを持っていない人もいますよね。「金儲けばっかりしやがって」みたいな(笑)。でも、利益を出している企業が増えるということは、そのぶん「社会の問題が解決されている」ということなんです。だから、利益を出す企業が増えれば増えるほど、結果的に社会はよくなっていく。これが資本主義の仕組みなんです。

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そういう世の中の役に立っている企業に長期投資すれば、自分自身もオーナーとして社会に価値を提供できるんです。


ディズニーに投資することは、ミッキーマウスのオーナーになること

奥野:私にも大学3年生の息子がいます。ちょうどみなさんと同じくらいの年齢ですね。
彼にも投資の話をすることがあるのですが、いつも「ややこしいこと言うなあ」という反応をされます(苦笑)。

そういうときに私がいつも言っているのは、「もしディズニーの株を買えば、ミッキーマウスが自分のために世界中で踊りまくってくれることになるんだぞ!」と(笑)。極端に聞こえるかもしれませんが、強い企業の株主になるというのは、一流の経営者たちや世界的に強いブランドが、自分のために働いてくれるということなんです。

大学生のみなさんは、だいたい時給1,000円くらいでアルバイトをしていると思いますが、オーナーになる場合、自分の時給がいくらだろうと関係ありません。時給1,000円の人間が、時給100万円の人間に働いてもらう唯一の方法が、企業のオーナーになることなんです。

ディズニーの株式に投資すればミッキーマウスが、Amazonの株式に投資すればジェフ・ベゾスが、みなさんの部下になって、みなさんのために働いてくれるんですよ。痛快ですよね!(笑)

学生一同:(笑)。

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奥野:さて、いろいろと投資についてお話ししてきましたが、私は株式投資の究極的なリターンとは「学び」だと思っています。

企業のオーナーになりたいと思ったら、その企業に自分のお金を投資する価値があるのかどうか、しっかりと考えなければなりません。産業構造も理解しなければいけないし、そのためには会計の知識も必要です。ビジネスマンとして当たり前の教養・当たり前のスキルを身につけていないと、企業分析も十分にできないでしょう。
つまり、投資をすることが、自分自身の働き方にも相乗効果をもたらすのです。投資に必要なスキルを磨いていくことが、結果的にビジネスマンとしての成長にもつながっていく。

だからみなさんはいま、サークル活動で投資の勉強をしながら「自力で稼ぐ」ための力も一生懸命、磨いているのだと思いますよ。


大学生にすすめたい「時間の上手な使い方」

「教養としての投資」基礎講義のあと、トーク&ライブディスカッションが行われた。
分析方法や仮説の立て方まで各学生からさまざまな質問が飛び交い、最後には「生き方」「働き方」など、学生ならではの悩みについて掘り下げた。

清水さん:大学生には自由に使える時間がたくさんあります。ただ、コロナ禍ということもあって、上手に時間を使えていない感覚があって。奥野さん流の、「時間の上手な使い方」があれば教えてください。

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奥野:バフェットの提唱した「有能の境界」という考え方を参考にしてみましょうか。

自分ががんばってもどうにもならないことと、自分が影響を与えられることのあいだには、「主体性」を切り口として明確に線を引くことができます。
横軸に「過去」「未来」、縦軸に「自分」「他人」をとると、すべての事象は4象限に分けることができます。

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奥野:時間を無駄にしないためには、この境界を意識することがとても重要です。
この4象限のうち、変えられるのは「自分の将来の出来事」だけですよね。

「他人は自分のことをどう思っているんだろう」とか「昔、どうしてあんなことをしてしまったんだろう」とか、いくらがんばってもどうにもできないことに時間を割くのはもったいない。
何か悩んでしまうことがあったら「いま、自分はどの象限でモヤモヤしているんだろう?」と考えてみるといいと思いますよ。「ああ、頑張ってもどうしようもないことで悩んでいるんだな」と認識したうえでうじうじするのと、よくわからないままただうじうじするのとでは、回復の速さにも差が出てきますからね。

影響を与えられるのは、自分の未来のことだけです。時間の使い方に迷ったときは、「自分を客体化してみる」ことが大事なんじゃないかなと思います。


自分自身のオーナーになれ

八田さん:最後に、いまの混乱した情勢下で、将来の資産形成に不安を持つ学生も多いと思います。奥野さんから全国の学生に向けて、メッセージをお願いします!

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奥野:一言でいうとすれば……そうだな、自分のオーナーになってください。自分の人生は、自分のものなんです。親のものでもなく、教師や先輩のものでもありません。『こうしたほうがいい』とアドバイスをくれる人はたくさんいるかもしれない。けれど、自分の人生の責任をとれるのは自分しかいないんです。

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奥野:昔は失敗のコストが高かったんです。モノ不足の時代でしたから、何か事業を立ち上げようと思っても、それなりの資本が必要でした。一度失敗してしまったら莫大な借金を抱え、飢え死にしてしまう可能性も大いにあった。でも、いまはモノ余りの時代ですから、大きなコストをかけなくても、アイデア次第で勝負できる。いまは失敗のコストが圧倒的に低いんです。

ただ、逆に考えると「何もしないコスト」が相対的にとても上がっているんですよね。チャレンジするコストが下がっている時代に何もしない人は、ただただ後退していくだけです。

他人の言うとおりに動いていたら、それは自分の人生ではありません。
だから、自分のやりたいことにどんどん時間を投資してください。自分の人生を生きてください!


「どうもありがとうございました!」イベント終了後、晴れやかな顔をした学生たちの姿があった。どうなるかわからないコロナ禍で不安を抱えながらも、それでも真摯に自分の未来と向き合う姿勢には、我々ビジネスパーソンも見習うべきところがあったように思う。

「投資」という切り口から、生き方・働き方まで考えさせられた今回の白熱講義が、彼らにとっての支えになることを切に願う──。