冬眠する長男

長男は冬になると朝起きられなくなる。
布団を頭から被り、起こしてもむにゃむにゃと苦しそうに反応するだけでまるで目覚める様子がない。無理矢理布団を引き剥がしても、だらりと力なくその場に倒れ込んでいるだけだ。

毎朝、30分ほどかけてゆっくりと「長男くん、朝だよ。起きて」とゲーム『ブレスオブザワイルド』の冒頭のように語りかけ続け、少しずつ意識が覚醒に向かっているのを確認してから満を持して布団を引き剥がす。
すると、長男はぶつぶつと文句を言いながらも毛布を一枚引き摺って寝室から抜け出す。
そして、これを幼稚園から数年続けている。

朝起きられないなら早く寝ればいいじゃない? そう思うかもしれない。
だが眠れないのだ、長男は。
いつも寝る前に小興奮状態となり、布団を被って電気を消しても寝付くことができない。気になることや思いついたことを連想ゲーム的に喋り続け、ゴソゴソと布団の中で動き回る。21時に布団に入っても24時ごろまでもそもそと起き続けていることもある。

寝る前の連想ゲーム的な感覚は私にもわかる。
私もどちらかというと寝つきが悪く、頭のスイッチをオフすることが苦手なタイプだ。
気になることや心配事、趣味のことなどが次々に頭の中を駆け巡り、なかなか眠ることができない。
だから私は二年ほど前から睡眠導入剤を服用するようになった。頭の中で嵐のようにワーッと巻き起こる小興奮。それを薬で強制的に遮断できる便利さを知った時の感動は凄まじかった。こんなにすんなり眠れるならもっと早く薬を飲んでいたら、と思ったものだ。
一方で、私は朝の目覚めは良い方なので、長男の起きられなさは理解し難い。

インターネットによると『起立性調節障害』というのが長男に当てはまる気もする。https://www.saiseikai.or.jp/medical/column/od/

チェック項目のうち半分以上当てはまる。当てはまるが、だからと言って明確な解決方法があるわけでもない。↑のページに書いてある改善方法も漠然としたものが多い。
ひとまず「水をたくさん飲む」は実践してみたいと思うのだが、困ったことにうちの長男、牛乳しか飲まないのである。牛乳ばっかり飲んでいると腹を壊しそうだし、金もかかる。じゃあ水を飲めばいい? 飲んでくれたら苦労しない。

そう、彼はこだわりが強く味覚障害も兼ね備えたASD児。こうしてひとつ問題が起こると連鎖的に別の問題が立ち塞がり、あれを解決するためにはこっちを解決しなきゃ、でもそのためにはまずそっちを解決しなきゃ……と堂々巡りが続くのである。これ、おそらく発達障害あるあるだと思う。

冬は長く辛い。
起きられるタイプの私でも、朝の冷え冷えとした空気の中で用事をテキパキとこなしていくのは困難だ。元々学校が嫌いな子供なら尚更起きたくないと思うだろう。体が思うように動かず、頭もぼんやりする。布団から出れば寒い。起きたら学校に行かなければならない。
これだけ悪条件が揃っていて、30分かけながらも何とか起きて学校に概ね通っているのだから、それだけで百点満点ではないだろうか。

幸運なことに、学校の先生も理解を示してくれている。これは長男がずっと恵まれ続けていることだが、今まで長男の不定愁訴的な症状を理解してくれなかった先生はいなかった。
頭が痛い、だるい、お腹が痛い、気分が悪い、学校を好まない児童の漠然とした訴えを先生方はきちんと受け入れ、その都度保護者である私に相談を持ちかけてくれた。
社会に出たらこうは行かない、怠癖がつく、などと言われたことはなかった。本当にありがたいことだなと思う。

※朝が苦手なことに関しては特に解決策は見つかっていません。どうしても辛い時は休む、無理させない、朝食に甘いものを出す(血糖値が上がって多少動きやすそうに見えるため)など些細な工夫をしています。

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