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vol.5 コミュニケーション〈ヌトミックのメルマガ〉

*この記事は7月17日(金)に「ヌトミックのメルマガ」で配信された内容を抜粋してお届けします。


|過去から考える(額田大志)


▷ コミュニケーション

コロナ以降、取り組む仕事の中身が変わってきました。オンラインの上演についても探ったり、考える時間も増えました。
ざっとまとめると、自分の場合は大きく3系統のオファーを頂くことが多いです。

①細かい内容まで決まっている
②大まかな内容が決まっている
③内容から考える

①はワークショップや広告音楽の仕事で多く、過去の創作を活かして別の方法でアウトプットするものです。②は舞台音楽やトークなどでしょうか。これまでの作品を踏まえつつ、クライアントとコミュニケーションを取りながら、新しいチャレンジも同時に行うような感覚です。

③は、プロジェクトには誘われたものの、具体的な役割が決まっていない仕事です。基本的には滅多にないのですが、コロナ以降、この③が増えています。

内容が決まってないので、じゃあどうする?ということから始まります。非常に危うい、というか、要するに時間が掛かるのですが、とてもスリリングな場合もあります。また、メンバーと仲良くなる可能性が高いです。

仲良くなるというと、なんだか遊びの延長線上に思われるかもしれませんが、仲良くなるに越したことはないとも思っています。稽古や打ち合わせ終わりは、できれば毎日飲みに行きたいとも思っています(今は中々難しいのですが)。

再び劇場で作品を上演したいのはもちろん、再び飲みに出掛けたい、気兼ねなく街へ出たい、誰かと仲良くなりたいという気持ちも、コロナを通じて感じています。



ひととヒトと他人と(長沼航)


★★★

人と真剣に話すことは、豊かだけれど難しいことだと感じる。

最近ある問題について他の人と議論(?)になったのだが、こちらが一方的にまくし立てるような形に終わってしまった(返信がこない)。自分の語っている内容そのものについては信じて言ったことなので、いまのところ覆すつもりはない。しかし、語り方、他者とのやりとりの形式における未熟さを省みる必要性を感じる。他人に考えを開陳し「論破」するのは、人と話すことの目標ではない。そうではなく、話すことによって共に変化する可能性、見えていなかった何かを一緒に発見できるのが面白いところなはずなのに……。私は世の中の事象に対して大抵はどうでもいいと思っているのだけれど、一部の関心事についてはベラベラと話したり書いたりしてしまう。その見た目・聞いた感じの饒舌さが他者とのコミュニケーションにおいて障壁になることがある。自分の思う正しさを一時的に留保しながら話す、かつ、そのように話していると相手方にも見える方法=演出がなくてはならない。それは一体……?(こういう私の個人的な問いに対するお便り、実は大歓迎です)

他方で、最近、自分や他人の作ったものについて話すことが増えている。こうやって言うのは嫌なのだが、それはコロナウイルスの流行により、多くの人とコミュニケーションを取ることが妨げられた副産物かもしれない。また、大学院に進学して環境が変わったこともあるかもしれない。自分や他人の作ったものが目の前にある。それを二人または数人で見つめながら、ああでもないこうでもないと語らう。そのときどきによって盛り上がる盛り上がらないはあるにせよ、互いの営みに誠意を用いながらする対話には独特の質感がある。話し終わったあと、自分の机の周りにたくさんのメモ用紙が転がっているのを見ると、こういう時間は豊かだと素朴に思う。演劇をやる喜びの一つには、この丹精込められたものにまつわるコミュニケーションがあるだろう。それは、稽古場だけに生じるものではなくて、演劇に関わるどんな人、つまり、観客も含めた皆のもとに原理的には訪れるはずだ。実際は稽古場でも劇場でもそうはなっていないことが往々にしてあり、いかにしてこの密なやり取りを広げることができるのかが私(たち)の課題だ。根源的なこの喜びの中で、俳優として創作すること、観客として鑑賞することを、どんな状況でも忘れないでいようと思う。



|わたしの日常(深澤しほ)


▷ 2020/07/11 

今回からコーナータイトルを変えます。「わたしの日常」にします。
というのもまず前回までの「ふかさわのまとめ。」というタイトルがとりあえず名付けた仮タイトルであったこと、そして「まとめ」という割に全然まとまっていないこと、名付け当時、aiko氏のアルバム「まとめⅠ」「まとめⅡ」を聞いていて単純に影響を受けたけど最近は専らラジオしか聞いておらず「まとめ」の3文字から解放されたことに由来します。

でも「わたしの日常」に変えたからといって書く内容が変わるわけでもありません。わたしは飽きやすいのでまたコーナータイトルを変えると思います。

最近はまた、心の中がどんよりしています。梅雨のせいもあるし、コロナや都知事選、熊本の豪雨被害の映像など、わたしの行動で何かがドーン!と変わるわけでもない眼前のニュースに、ただただ情報を受け取るしかない無力さに沈みに沈んでいます。想像力を巡らしても、想像止まりな肉体がつらい。身体が動きません。
ニュースが映し出す出来事をどうにかできる力は無くて、でも自分自身が沈んでいくことはどうにかして自分ですくい上げるしかないので、いろいろ明るい情報を得ようとしてみるのですがどれも空虚に思えてしまうのです。肉体的にも精神的にも無力!

とにかく何か、原動力を探さねば!と思い、これはもうショック療法でどうにかするしかないと考えてNetflixで話題の「呪怨」を見ました。鬱には鬱を・・・(でも怖いのは嫌なので午前中に・・・)
まだ見ていない方もいると思うので、ネタバレしないレベルで書くと、エンディングの曲が不穏すぎて、怖くてイヤホン外しました。「サンカイノーサンカイノー」って言ってて、わたし今3階に住んでるからまじで怖かった。3階の何?!あとこれ何語なの?!

作品の感想については率直に言えば、怖いんだけど思っていた怖さとは違って「女優さん綺麗、、」が常に頭にあってもはや怖くないというか。
ホラー好きの友人に言ってみたら「主演女優が綺麗、それがJホラーだよ」と自論なのか通説なのかわからないことを言われ、でも確かに「着信アリ」の柴崎コウとか「仄暗い水の底から」の黒木瞳とか・・・美人。
ホラーを避けて通ってきたのでどう見ていいか、どう感想を持ったらいいかわからず、気になってお手軽なツイッターで「呪怨」と検索してみました。すごくたくさん感想が出てきて、読むうちに「この人はこういう視点で見たのかー」とか「ああ、わたしもその感じに違和感を持ったのかもしれない」など、なんとなく自分の気持ちと整理がついてきて感想検索にのめり込んでいました。

気軽に人に会えないから映画の感想を言い合ったり、作品について不意に語り合ったりする機会も減ったのだなあと改めて思いました。
オンラインだと、なんとなく「雑談」が生まれにくい気がする。ものすごく低レベルな雑談がしたい・・・相手の言葉を秒速5センチメートルで拾いたい・・・拾ってほしい・・・
(「あ、新海誠だ」って拾ってくれた人ありがとう)

でも「呪怨」によって自分の中でいろいろ言葉を取り戻しました。シーズン2も楽しみにしています。

そして来週は「はちどり」「MOTHER」「若草物語」を見にいく予定です。あとchimpomの展示にも行きます。動き出せわたし!!



|原田の、すぐには使わないものコレクション(原田つむぎ)


当初の予定では、淡々と、私の思う「すぐには使わないもの」をご紹介するつもりで始めたこのコーナー。でも、淡々と何かを続けていくというのは根気がいるというか、ついつい何か有益なことをしないといけない!とか、プラスアルファのことをしないといけない!と思ってしまいます。(実際にできているかは別なのですが……。)結局一度も淡々とできていません。

普段の生活でも、誰かの役に立ちたい、できるだけ今関わっていることに貢献したいという思いが結構強いタイプだと思います。しかも、目の前のことに100%の力を注ぐことが多かったので、すごく正直に言うと、何年か前までは自分と同じ熱量でない人のことをあまりよく思っていなかったこともありました。でも、そんなのは私の押し付けです。

私にはそうやって人を傷つける可能性がいつでもあります。だからこそ、不要不急という言葉一つで、あいまいな基準や利益などで誰かにとっては大切なものを必要ないと判断してしまうかもしれない、そんな雰囲気に飲み込まれないように必死なこの数か月でした。


さてさて、今回は、先日偶然お会いできた私の尊敬している方5名に、「不要不急」に対して簡単なアンケートを取ってみましたので、ご紹介したいと思います!


〈質問〉
① 不要不急だけど、大切にしているものはありますか?
② 不要不急という言葉に対して、どのような印象を受けますか?


Aさん

① ほとんどのものが不要不急で大切。特別な日に着たい服。
② 目的がないものも必要。


Bさん
① 影響を受けた本、出会ってきた人、その場ではなんでもないのに思い返すと自分を支えてくれる時間。
② 真綿で首を絞める、もしくはボディブロー的に人をもやっとさせる言葉になってしまっている言葉。


Cさん
① あります。 
② びくびくした印象


Dさん
① ・物→マンガ 想い出がついてまわるもの諸々。ただ、大切に思ってるけど大切にできてないなとも思います。
・不要不急じゃないことが、ライフラインのみを指すとして、自分は生きてく上でメンタル維持が大事なことの上位なので、他の人からみたら不要不急だろうけど自分としては大事。となるものが結構あります。緊急事態宣言下ならば、子どもと公園で遊ぶ。とか。
② 結局自己判断でしかないのに、拘束力がある言葉のように使って、ずるいなと。


Eさん
① 私片付けが下手なので、びっくりされるようなものまで取ってあります。子供の頃に大事にしていたものとか、、。何度も断捨離をしながら生き残ってるものも沢山あります。3歳の頃から持ってるぬいぐるみとか(汗)
② 昔はただの四字熟語の扱いだったけど自粛警察などを経て、「人の行動にケチをつけるための言葉」みたいな印象になった、、かな。


お話をしていて印象深かったのは、そもそも人生&自分自身が不要不急なのでは?という言葉でした。なんだか心が軽くなりました。ほかにも、人間関係にも不要不急があるというお話も出て、その考えはなかったと一瞬ドキッとしながらも、私も無意識に整理していたような気がします。

やっぱり自分一人で何かを考えるのには限界があります。早く気兼ねなく集まって話したり、稽古したりしたいという気持ちが強くなりました。


※みなさんの「すぐには使わないものコレクション」がもしありましたらぜひ教えてください。メルマガご登録者の方からいただいた内容はここで紹介させていただくかもしれません。と同時に、私が「すぐには使わないものコレクション」を決める際の参考とさせていただきます。



|イチオシ・アルバム・レビュー(額田大志)


このコーナーでは、家でじっくり聴きたい音楽アルバムを1枚紹介します。


▷ Superorganism “Superorganism” (2018)
label:Domino Recording Co. / Hostess

イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、日本のメンバーで構成される8人組バンド。言おうと思えば「イギリスっぽい」と形容できるかもしれないが、◯◯っぽい、◯◯出身という言葉が、現代ではあまり意味をなさないこともあると感じるポップ・ミュージック。グローバルであることを意識せず、気がついたらグローバルな音楽になっていた、という感じだろうか。FUJI ROCKのライブを見たのだが、メンバーの力の抜けた軽やかなパフォーマンスが素晴らしかった。

私が舞台の仕事をしていると、ダンサーの人たちから「ミュージシャンの身体が羨ましい」と言われることがある。どういうことかよくわからなかったのだが、Superorganismのライブを見て少しわかった気がした。Superorganismの8人は「演奏している自分たち」に向かって音楽をやっていると思った。もちろん観客のことを考えてはいると思うが、これといって煽ることもなく、かといって完全にシャットダウンしているわけでもない。これは見る側の自由度が高く、とても気持ちがよかった記憶がある。具体的な身体の動きについても、謎の振り付け(?)があったりと、自分たちが楽しむことを第一に考えているように見える。メンバーも観客も、それぞれが「個」であることを拒まないスタンスに、私は憧れと尊敬を抱いている。また来日して欲しい。

Superorganism - Full Performance (Live on KEXP)
https://youtu.be/NM52w9xrdn4



|編集後記 (河野遥)


いつも、メルマガのタイトルは最後につけます。
このメルマガは、テーマを示し合わせているわけではありませんが、不思議なことに、うっすらと毎号異なる一貫したテーマが漂っている気がします。
それを見つけるのが、編集の楽しみの一つです。


さて、ヌトミックのメルマガ vol.5、お楽しみいただけましたでしょうか。
次回配信は8月7日(金)です。

最後までお読みいただきありがとうございました。



編集:河野遥
発行:ヌトミック

2020年7月17日発行



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