実はめちゃくちゃ面白い維新代表選
維新の代表選は馬場さんで決まり?
松井代表を含む党の執行部が馬場さんの支持を表明したことで、告示を前にして「馬場さん一強だから維新の代表選は面白くない」とか「もう馬場さんで決まりでしょ?」とか、そんな言葉をちらほら目にするようになってきた。
さらに候補者や支持者から出る党に対する不満や後ろ向き(に見える)発言から、維新の代表選の話題について少し疲れたという声も多く目にする。
そのような声が出てくる気持ちはよく分かる。
が、今起こっていることはすべて告示前の前哨戦にすぎない。
私は告示後の選挙戦が面白く明るく前向きになると確信している。
今日はそんな話を書きたい。代表選に疲れた人も、面白くないと思ってる人も、まだ何も知らない人も読んでもらえるとうれしい。
まずは自民党の総裁選を見てみる
維新はまだ代表選をしたことがないので歴史がない。他党の事例を見てみた。
記憶に新しいのは岸田総理が誕生した2021年の自民党総裁選である。やはり最大政党の自民党はすごい。
以前紹介した、1964年池田内閣で弾丸(金)が飛びかった激しい権力闘争や、1998年に小渕・梶山・小泉の3人の候補者を「凡人・軍人・変人」と例えた田中眞紀子など、政治史として語り継がれるエピソードもある。
さて自民党の総裁選はどのように行われるのだろうか。
総裁の辞任や任期満了にともなって行われるのが基本だが、「フルスペック」「省略型」「無投票再選」など様々なパターンがあり少しややこしい。
ここではフルスペックの仕組みをみてみよう。以下の図が分かりやすい。
ポイントをあげるなら
立候補するには国会議員20名の推薦が必要
国会議員は1人1票、その他の党員は国会議員の数と同数に圧縮されドント方式で振り分けられる
1位の票数が過半数に満たなかった場合は上位2人による決選投票
2021年の総裁選では皆さんご存じの通り岸田首相が誕生した。
維新の代表選は何が違うのか
維新の代表選のルールを改めて確認したい。
立候補するには特別党員30名の推薦が必要
特別党員は1人1票、一般党員も同様に1人1票
決選投票はない
特別党員とは国会議員だけでなく都道府県議会、市町村議会の議員、政党支部の支部長などのことを言う。
派閥の論理が働く自民党で国会議員20名の推薦人を集めるのと比較すれば、立候補へのハードルは比較的低いと言える。実際、今回の維新の代表選には参議院1期目の梅村さんが挑戦している。野党第2党規模の政党では異例といっていいだろう。
そして最大の特徴は一般党員にも同じ1票が与えられている点だ。今回の代表選でいえば、維新の特別党員はおよそ600人、選挙権を持つ一般党員は19,000人いる。
言葉だけだと分かりづらいと思う。
前章で紹介した2021年の自民党総裁選を維新ルールで開票してみた。
条件をそろえるため、議員票を特別党員票、党員票を一般党員として等比で今回の維新の選挙人数にそろえた。投票率は自民党よりちょっと少ない60%(特別党員は100%)と仮定した。
結果は以下である。
維新ルールでは、岸田首相は誕生していないのだ。もう一つ見てみよう。下野した自民党が政権奪取をかけて2012年に行った総裁選である。
安倍長期政権も誕生していなかったことになる。
ここでは維新ルールでは結果が変わるという点だけを強調したいのではない。重要なのはグラフから明らかなように、仮にある候補が特別党員600名全員の票を取りまとめられたとしても結果は変わらない点だ。
維新の代表選は一般党員の投票でほとんど決まる。そして、一般党員のペルソナ像について定量的なデータは公表されていない。
つまり冒頭であげたように1強というのは確実な現在地ではない。
何も分からないというのが現在地である。
そして歴史的には、結果が分からない選挙は面白いのだ。
この最近の松井代表の発言が批判を浴びている。何度も言うが松井さんは天才的な政治家である。この程度の批判を想定できないはずがない。
この選挙の凄さを分かっているからなりふり構わず戦っていると考えるほうが自然である。
これからの選挙戦の戦い方で結果は大きく変わる。この選挙に盤石な候補者などいないのだ。
馬場陣営が多くの議員を集めて大規模な事務所開きをしたが、それとて盤石さを誇示できるわけではない。
この前例のない新しい選挙戦のゆくえはどうなるだろうか。
どんな結果であれ、広く国民に対してまったく新しいかたちの政党の民主主義の姿を表現した初の代表選として政党史に語り継がれるものになる。
リアルタイムで見れることを喜ぼう。そして楽しもう。
代表選挙の付加的な役割
代表選(総裁選)は、代表を投票によって選ぶのが本質的な目的である。しかし、歴史を振り返れば以下のような付加的な機能があることが分かる。
政党プロモーション機能
1つ目は政党そのもののプロモーション機能である。自民党の場合は実質的に総理大臣を選ぶもので多少性質は違うが、過去10年現職が出馬せず、かつフルスペックで行われた2度の総裁選はともに翌月の世論調査で支持率が上がっている。
これはご祝儀という面もあるが、テレビや新聞で個々のパーソナリティが伝わることと、生放送での政策討論を連日繰り広げる中で党としてのメッセージが再浸透するからであろう。
なお、フルスペックと新顔という条件を外すと必ずしも上がるわけではない。不満の多い簡略型の選挙や、現職が圧勝するパターンでは上がらない場合もある。
「選挙が盛り上がれば」上がるのである。
ニューリーダー創生機能
自民党の総裁選では、新たなリーダーと広く国民に印象づく政治家が生まれる。直近の事例でいえば高市早苗さんだろう。
高市さんは現在、総理候補に必ず名前があがるような日本を代表するリーダーの1人だ。
もちろん総裁選以前から総務大臣や地方創生担当大臣として辣腕を奮っており、政治ウォッチャーからはおなじみの名前であったが、政治に興味がない層にまで名前が浸透しただろうか?広く国民にリーダーのイメージを植え付けたのはやはり総裁選である。
他にも2008年の小池百合子さん(その後都知事としてみどり旋風)や「凡人・軍人・変人」で盛り上がった98年小泉純一郎さん(その後首相となり郵政旋風)など、名前をあげれば枚挙にいとまがない。
維新の代表選はどうなるべきか
自民党の歴史から学ぶとするならば、代表選は日本中を巻き込んで盛り上げるべきである。党にとってメリットしかないのだ。そして私たち維新の支持者は党の勢力が拡大することを期待しているはずだ。
ではどうやって盛り上げるべきか。以下は自民党総裁選時の重視する争点についてのアンケート結果で統計的なデータではないが参考にはなる。
外交安保や経済・社会保障の重要政策だけでほとんどの割合を占める。
国民的な注目事にするためには徹底した政策論争が必要なことは明らかであり、党内の内向きな議論に終始するようでは国民の関心はひけない。
そしてもう一つ重要なのは将来の総理候補としての「ニューリーダー」を印象付けることである。前々回の記事に書いた通り、今回の候補者は全員無名である。候補者の顔と名前だけでなく、個性や強さ、能力を広く国民知らしめることだ。
たとえば「岸田ノート」はパフォーマンスと批判されたが、国民の声を聴くリーダーとの印象を強く与えた。(最近では聴くだけと揶揄されるようになったが。。。)
私が党の広報と各陣営の広報をする以下のような戦略を立てる。(ど素人の意見なので申し訳程度に)
日本大改革プランを軸とした重要政策に関する候補者同士のライブ感のある討論会を地上波テレビ各局およびAbema等ネット番組で開催
テキストマイニング等を活用して各候補者の世間からのイメージを定量化。プラスポイントをその人の「政治家としての印象」に昇華させる。マイナスポイントはできる限り討論を通して払拭していく。
全候補者の主張が伝わる選挙公報を全一般党員に送付
政策討論については、維新を政権政党にするためには避けて通れない。実力をアピールするには格好の場だ。
(以下個人の感想なので、実際の世間のイメージはデータ活用して戦略立ててください。)馬場さんと足立さんの政策への精通や討論力は支持者ならよく知るところなので全国民に知らしめてほしい。
梅村さんはそこで討論力を示せたら政治キャリアのエポックメーキングとなるかもしれない。
馬場さんは安定感や統率力が抜群な一方、親しみやすさやキャラクターが売れたら一気に全国区かもしれない。
足立さんは圧倒的な政策への精通や討論への強さがある一方、失言や軽口のイメージがあるので討論の中で覚悟を示して軸がある印象を残せれば一気に全国区かもしれない。
吉村さんの会見での発言がしみわたる。吉村さんは今回の代表選で「ニューリーダー」に期待して今回出なかったのかもとさえ思う。維新は既に党内に目を向けているフェーズではないのだ。
選挙公報は残念ながら事務手続き上の問題で、党として全党員に送付はしないことになったそうだ。その代わり往復はがきにQRコードがついてWeb上の広報につながるということだ。全党員に候補者全員を広報するのは現時点では難しい。各特別党員次第となる。
未来を見据えて
私はこの代表選で足立さんを支持しており、その先は総理としてこの国の舵取りをしてほしいと本気で思っている。
しかしながら、代表選をきっかけに維新がさらに発展できるのであれば究極的には誰が選ばれてもいいとも思っている。
そのためには政策論争をする中で維新の政策を全国に印象付け、研ぎ澄まし、党員1人1人ができる限り十分な判断材料を持って投票することが極めて重要だ。
政党の代表になることも総理大臣になることも自分の政策を実現するための手段に過ぎず、手段は替えがたくさんある方が望ましい
吉村首相、藤田首相、柳ヶ瀬首相、青柳首相、…、維新には想像するだけでわくわく名前がたくさんあるじゃないか。たくさんのニューリーダーを世に売り出していくべきである。
今回の代表選が盛り上がることがその礎になる。
特別党員の皆さんに心からお願いしたいことがある。
これから支持することを決めた候補に投票を呼び掛ける一般党員へ向けた選挙活動が本格化すると思う。
ビラを発送する際は、可能な限り他候補から依頼されたものも一緒に送り、そのうえで自分が支持する候補への投票を呼び掛けてもらえないだろうか。
電話作戦をする際は、すべての候補者の名前と要所を伝え、その上で自分が支持する候補への投票を呼び掛けてもらえないだろうか。
政治の世界でそんなことがあり得ないのは分かっている。真剣勝負の世界に素人が甘いことをと言われるのが関の山だが、私は一支持者として材料をオープンにした上で主張を伝えるのが維新だと思っている。
最後に、前記事にて紹介した1964年、自民党で金という弾丸が飛び交う激しい血みどろの権力闘争が起こったのとちょうど同じ年に開催されたインスブルックオリンピックのエピソードを紹介したい。
ルールの中で結果を求めるという点においてスポーツと選挙は似ているのかもしれない。
ルールに従うのは当たり前だが、さらにその上の規範であるスポーツマンシップの上で真剣勝負をするから人々は真に心が揺さぶられ、熱狂するのだ。
政治の世界に置き換えるなら、政治家の矜持だろうか。
2022年夏、熱狂のさなかより
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