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維新の代表には足立康史が相応しい理由

初の代表選

松井一郎代表の退任に伴い行われる日本維新の会初の代表選は8月14日の告示を前に馬場伸幸さん、足立康史さん、梅村みずほさん、吉田豊史さんの4人が名乗りを上げている。

告示後どのような選挙戦が行われるのかはまだ見えてこないが、現時点での動きは概ね以下の通りである。

  • およそ600人の特別党員と2万人の一般党員が同じ1票をもつ

  • 党員投票は往復はがきによる投票

  • 決選投票はなし、最多得票の候補者が当選

  • 候補者への党員リストの開示は基本なし、特別党員の判断に委ねる

  • 松井代表、藤田幹事長、柳ヶ瀬総務会長は馬場支持を表明


日本維新の会は危機的状況である

本題に入る前に、まず日本維新の会のおかれている現状を確認したい。私は日本維新の会は今危機的状況に置かれていると思っている。

ご存じの通り初代の橋下徹さんから松井代表がバトンを受け継ぐ形で現在に至っている。この2人はタイプは違うがどちらも天才的な政治家であり、全国的な知名度も高く文字通り「顔」としてこれまでの維新を引っ張ってきた。

松井さんがいなくなるという一点でも危機と言えるが、吉村さんも今回の代表選に出馬しない。(どころか任期後に引退するのではという噂さえ流れている。)

枝野さんから泉さんに引き継いだ立憲民主党の惨状を見れば、良し悪しはともかく党の「顔」がいかに重要かは分かると思う。

今回名前の挙がっている候補者は維新支持層からするとなじみのある名前だが全国的には無名に近いと言っていい。

Google トレンド 人気度の動向(過去5年)

つまり誰が代表になっても新代表のスタート時点で顔としては戦力ダウンする。これは受け入れるしかないが重要なのはその後である。

すでに会見して方針発表している馬場さんは「広報局の強化」、足立さんは「政党シンクタンクの設立と投資」で広報戦略の強化を打ち出したので両陣営この点は重視している。梅村さんと吉田さんの案にも注目したい。

いずれにせよここが上手くいかなければ統一地方選と解散総選挙は惨敗まであると思ったほうがいい。


コアな支持層以外に漂う「お腹いっぱい感」

7月の参院選で維新は12議席を確保し比例では野党第1党となったが、東京や京都など重点としていた選挙区は敗北した。

これを執行部がどう総括したのかはいまだ聞こえてこないが、私は厳しい結果とみている。勝ちと負けの間に線が引けるとしたらちょうどその線上くらいだろう。

私はちょうど10年維新を支持しており、その間行われた選挙はすべて維新の議員に投票してきた。(東京ということもあり力及ばず私が投票して当選したのは音喜多氏だけ。。。)

今回の参院選も維新に入れたが正直少し気乗りしなかった。インフルエンサーと呼ばれる人たちに安易に影響を受ける議員が増えたことに起因する党内のゴタゴタや、「身を切る改革」が少し押しつけがましく感じてしまったことなど言語化できないことも含めて理由はいろいろある。ただこれまで支持してきたことを踏まえた期待値と、他に入れたい政党がなかったので今回も1票を投じた。

他の野党が大したことないから維新がなんとか最低限の議席を確保した、というのが今回の参院選だと思っている。

ライトな支持層や無党派で維新に入れている人たちはちょっとした風やイメージひとつでどこかえいってしまう。

無党派の友人がこのようなことを言っていた。

「維新は厳しいルールを自分たちに課すことで自分のブランド価値を上げた代表が辞めていく政党だな。橋下さんも松井さんもうまいこと船降りたな。なんかお腹いっぱい。」

23時頃の有楽町の飲み屋での友人との会話

コアな支持者を自認する私にはまったくない発想だった。馬鹿野郎と言い返そうかと思ったが反論に足る適切なロジックは出てこなかった。

なるほどそう見えるのか。焼き鳥で膨らんだお腹をさすりながら考えていた。

「政治責任を取る」という政治家としてもっとも崇高な行動ですらそのように穿ってみられる。どのような印象を持つかは国民の自由だ。実際にそのような見られ方をして一部の国民が維新に食傷気味になっているという現実は政権を目指す政党として向き合わなければいけない。


中途半端かつ自己目的化する「身を切る改革」

維新はことあるごとに「身を切る改革」を前面に出す。

例えば国会議員は歳費の一部を被災地に寄付しているし本来使途公開が義務付けられていない調査研究広報滞在費(旧文通費)も領収書をホームページで公開している。さらに日本維新の会は企業・団体献金を禁止している。もちろん国会議員だけでなく全国の広域自治体・基礎自治体の議員も同様だ。

さて、この「身を切る改革」はいったい何のためにやっているのだろうか。日本維新の会のホームページを読むと以下のように書かれている。

自ら身を切って模範を示して、役人を納得させる。そして、意識改革に目覚めた役人が政治家とともに一丸となって行政改革を進める。この一連の流れが身を切る改革です。

日本維新の会HP

なるほど、すばらしい。身を切る改革は役人を意識改革させ一丸で行政改革するための手段なのだ。

が、この通りだとすると中途半端なことが多々ある。何が中途半端なのかは以下で紹介するが、先に言い訳しておくと他の政党はもっとずっとひどい。維新はよっぽどマシである。

しかしながら、支持者以外は以下のようなツッコミがメディアで取り上げられるだけで「結局維新も同じ」となり、選挙の際の「ウリ」としてはぐっと弱まってしまう。

  • 政策活動費の使途は一部しか公開されていない

政治資金規正法で政治家個人への寄付は禁じられているが政党からの寄付は可能である。

こうしたお金は使途報告の必要がなく他党も含めて根強く抜け穴と指摘される。以前に自民党の二階氏に年間10億円以上の金額が渡っていると報道されたのは記憶に新しい。維新も2020年には4497万円が馬場幹事長/浅田政調会長/遠藤国対委員長(いずれも当時)に支払われていたと報道された。

その時の松井代表のコメントは以下の通りだ。

「国民の皆さんに維新らしくないといわれるかもしれないが、全国で政策実現する組織を動かしていくなかでは情報収集、人材発掘に一定の経費は必要になる。その中ですべて領収書をもらえない部分もあるのも事実。そこはご理解いただきたい。どの政党も人によって運営されているので、有権者の皆さんはどっちがマシかを判断していただくしかない」

https://www.tokyo-sports.co.jp/entame/news/3806618/

その後、領収書をもらえる一部支出については公開すると軌道修正したものの「領収書をもらえない経費もある」点は変えていない。

誤解しないでほしいが、私は維新支持者として執行部がおかしな金の使い方をしているとはまったく思っていない。党運営のために有意義に使っているに違いないと思っている。

しかし改革を進めるための納得感を得るためにやっているのに「抜け穴」と指摘されるものを党のトップの執行部に残してよいのだろうか?

例えば今の執行部は、政策活動費を票まとめに使っているのでは?と指摘されたらどうやって反論するのだろうか?
非公開の金には必ず悪意ある指摘が付きまとう。悪意ある指摘には公表しているデータを使ってロジカルに反論するのが維新であってほしい。

  • 政治資金パーティーが企業団体献金禁止の抜け穴になっている

日本維新の会は企業・団体からの政治献金を禁止している。これはしがらみのない政治で既得権益の打破・国家と国民のための行財政改革を実現するために独自に定められたルールである。

このルールも素晴らしい。しかし政治資金パーティーは規制していない。ここが抜け穴と指摘されている。

政策活動費と同じ文脈になるが、政治と金と抜け穴は食傷感とセットである。説明できないことはしないという維新を貫くために是正すべきポイントだと思う。

  • 報酬の少ない小さな自治体の議員にも同じルールを課す?

当然のことながら自治体の規模によって議員報酬は大きく異なる。維新所属の議員は報酬額で%の違いこそ持たせているものの、報酬が少ない議員にも同様の報酬カットのルールを課している。

Twitter上で見たので真偽は不明だが、生活のために夜間アルバイトをしている議員やビラが刷れない議員がいるとの情報もある。

あくまで改革を進めるための手段である報酬カットだとするならこれは完全に本末転倒である。身を切る改革はあくまで手段なのだから、まだまだ工夫して最適化していかなければならない。

ここについての問題意識は既に発表のあった馬場陣営と足立陣営に大きく差が開いたと考えている。

馬場案ではほとんどゼロ回答だった。引き続き「身を切る改革で」覚悟を示すと述べており、政策活動費にも政治資金パーティーにも言及しなかった。現状維持であろう。

一方足立案は真逆で満点回答だ。政策活動費全面公開、政治資金パーティー禁止、身を切る改革は適正化と述べた。これこそが維新だと心から思う。梅村案と吉田案は公表され次第追記する。

ここからはただの個人の推測だが、政策活動費は今回の代表選のゴタゴタ(後述)の本丸ではないかと思っている。

私が見る限り異常なまでにこの点に誰も触れない。馬場さんはもちろん支持表明した藤田幹事長も柳ヶ瀬総務会長も同様だ。

早く特別党員が意見表明して邪推だったと思わせてほしいと心から願っている。

私は「組織運営には領収書のない金も必要」と表明した松井さんは意見は違うが本物の政治家だと思う。

都合の悪いことは触れないのは政治家ではない。


日本維新の会っていったい何がしたいの?

コアな支持者層や党員からしたら不愉快な言葉かもしれないが、ライトな支持増や無党派の一般的な感覚に近いと思っている。

日本維新の会はもともと大阪都構想を実現するために国のルールを変えるために誕生した国政政党だ。当時は地方分権を旗頭にしており、日本維新の会といえば「地方分権」「道州制」という明確なカラーがあった。

しかし都構想が二度否決されたいま、日本維新の会が何をしている、あるいはしようとしている政党なのかイメージできる一般人がどれだけいるだろうか。

「身を切る改革」ってポスターに書いてあって、たまに新聞やその他メディアで目に入るのは万博の話題や降って湧いたような(に見える)ベーシックインカムくらい。他は大阪でコロナ対応をしている吉村さんをよくテレビで見かけるというのがごく一般的な印象だと思う。

国会議員が仕事をしていないということではない。これが野党第2党の現実ということだ。

変えるには分かりやすく明確なメッセージが必要で、それは前述したような「身を切る改革」ではないはずだ。


維新の代表に必要なのは「まとめる力?」

今回の代表選にともない、松井代表は「組織をまとめる力があるかが一番の判断材料」と表明した。現代表が自ら争点設定をしたことについてネット上では賛否があったが、代表選がなんでもありの権力闘争であるとするなら、その部分はここでは触れない。

しかし本当にこの危機的状況にある維新の新しい代表に必要なのは「まとめる力」なのだろうか?

維新の初代代表の橋下さんは「顔」として、そして切り込み隊長として舌鋒鋭く組織や他党の政治家と闘う姿を見せることで国民の熱狂を生み組織を大きくした。このとき組織をまとめたのは橋下さんだろうか?維新支持者であれば誰もが分かると思うがそれは違う。松井さん(当時幹事長)が組織をまとめたのである。

その後、橋下さんから松井さんに代表を引き継ぎ今日の発展につながっているので、「まとめる力」が代表に必要な資質として議論されているがちょっと違うと思っている。

松井さんは政治家として天才であり、天才ゆえに「顔」役できてしまったのだ。だから今の維新がある。

これから政権政党を目指す政党の代表に重要なのは「顔」として、切り込み隊長として表で討論できる能力だと私は考える。組織をまとめるのはナンバー2でもできるのは松井さん自身が証明しているのだ。

政権選択選挙で有権者は総理の顔を想像して投票するのだ。そして総理になったら習近平とかプーチンとやりあわなければならない。

本当に政権を取ろうとしている政党なら、「まとめる力」みたいな内向きな話をしてる場合ではない。

その危機感をすべての特別党員が持つべきだ。


火の粉を浴びる覚悟はあるか

政権政党を目指すにあたり重要なのは

「安易に世論に流されないこと」
「ウケ狙いで政策を打ち出さないこと」

だと考えている。自民党が長く政権政党を担えているのはこの点である。

SNSが広がり、政治的な責任のないインフルエンサーと言われる人たちが政治的な影響力を持つ時代には特に重要だ。

創業者の橋下氏がいわゆる「セルフ領収書」について問題視したときに、維新の多くの地方議員が乗っかって国会議員を叩いた。
この際、法と論理で創業者に立ち向かったのが足立さんである。むろん多方面から見てられないレベルの火の粉を浴びた。

世間的には悪の象徴のように映っているかもしれないが、論立ては足立さんが正しく、むしろ火の粉を恐れて議論しつくさなかった議員は反省すべきだと思っている。

議論はオープンになっているので時間があれば以下を見てほしい。

同様に、安部元首相の暗殺に端を発して旧統一教会問題について違法行為と宗教の存在をごっちゃにして「カルト宗教はつぶせ」と日本中が騒ぎ立てた際、いち早く関係を自己検証したのは足立さんだ。

それゆえにテレビやひろゆき氏にやり玉に挙げられたが、法に基づいた冷静な議論を呼びかけた。おかげで「足立は信者」とか「結びつきが強い」と言われテレビでは顔をさらされた。議論を冷静に振り返れば一目瞭然だが足立さんは宗教法人の違法行為をかばったわけではない。違法行為は現行刑法で裁けばよく、そうでない安易な「宗教をつぶせ」議論を憲法に照らし合わせ警鐘を鳴らしたのである。

党内議論でもそうだ。減税世論に影響を受けたのか、国民ウケを狙ったのか「税の適正化」ではなく実現可能性を無視した「減税」一本やりになった政調で一人正論を吐き続けていたのは誰だろうか。

これも某インフルエンサーから攻撃を一人で受け止めたのが足立さんだ。

総理はウケ狙いで国を運営できない。

法と正義と信念に基づいて政治活動をすれば飛んでくる矢は当然多くなる。

矢を受け止める度量と覚悟が必要で、それがあるのは足立さんだと確信している。野党で一番と言ってもいい。


足立康史は日本のボリス・ジョンソンだ

足立さんと言えば少し政治に関心がある人だと、国会での「アホ・バカ」や懲罰動議で知られる。

「そんな言葉が軽い奴に代表なんてできるわけがない」

という論調をTwitterではよく見かける。おっしゃる通りだと思う。

これから代表に、そして国のトップになろうとしている人がそれじゃダメだ。

この点については本人も問題意識を持っているのか、自分に批判的な人を集めてスペース上で言われ放題言われて全て飲み込み感謝をした。そんな政治家今までいただろうか。

トップになるなら足立さんの「アホ・バカ」はいただけないが、一方でそのスタンスで発信をしてきたことは強みにもなる。

足立さんは暴言について掴みであり、守るべきものを守るときの怒りであると言った。言葉遣いはさておき、これは国のトップに必要な要素ではないだろうか

トランプはメキシコ国境に万里の長城を建てると言って世界中の注目を集めた。これは移民問題解決のための掴みだ。

河野外務大臣(当時)は徴用工訴訟問題せ韓国大使を呼びつけ「極めて無礼だ」と怒鳴りつけた。これは日本の主張と利益を守るための怒りであり、多くの国民は安心したのではないだろうか。

過去の反省を受け入れて覚悟を決めた足立さんは掴みで人を惹きつけ、そして怒りで人を安心させることができるのではないだろうか。

僕はボリス・ジョンソンのようなトップになるんじゃないかと想像している。無論、馬場さんと梅村さんと吉田さんにそれがないとは言わない。けどやっぱ足立さんが一番イメージ湧かない?

これは完全に私の主観である。


アンチとシンパ

代表選が近づきTwitter上では親足立と反足立が不毛な争いをしていると言われる。これは今に始まったことではなく、足立さんがSNSで話題になると必ず起こることである。

足立さんは支持者に対し自制を求めているが、僕はこの事象凄いなあと思って見てる。

橋下さんもそうだったが、安倍さん然りトランプ然りジョンソン然り、大物政治家は例外なく身近に過激なアンチと熱烈なシンパがいる。

善悪はともかく信念に基づいて政治をしてきたら必ずそうなるんだと思う。私は馬場さんも梅村さんも吉田さんも素晴らしい政治家だと思っている。しかし親馬場や反馬場っていう言葉自体をあまり聞いたことがない。梅村さんも吉田さんも同様だ。

良い悪いはさておき、代表になって一番注目を集められるのはやっぱり足立さんなんじゃないかと思う。

人気度は全員同様に低いが、地域別で比較すると日本中が足立さんだ。これは維新が進化するポテンシャルだ。

本人は橋下さん松井さんのようなカリスマ性は誰もないから法治の仕組みを作ると言っている。これもよくできているのでぜひ見てほしいが、トップにたったときに前任2人をしのぐカリスマ性を発揮するポテンシャルと実力が足立さんにはあると私は見ている。

Googleトレンド地域別

長くなったのでそろそろまとめる、日本維新の会は存続の危機と言っていい状況だ。

もう松井頼みでの選挙はできないのだ。すべての特別党員と一般党員に問いたい。

これから維新が国民の注目を集め、メディアで論陣を張り、選挙で勝って、政権をとれる政党になっていくためにトップの資質として必要なのは、馬場さんの安定感やまとめる力だろうか?足立さんの討論能力や注目を集める力だろうか?梅村さんの主張と吉田さんの主張も聞いてからになるがよく考えてほしい。

党内の立場を守ったところで選挙で勝てなければ何もできない。そんなに盤石な政党じゃないんだから。

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