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入院徒然草#03 愛の種

入院生活4日目。
血液検査の結果も良好で、めでたく退院が決まった。

数日ぶりの娘との再会に心を踊らせつつ、

家に帰ったらまず、リビングの掃除機をかけて、お風呂掃除して、きっとゴミ出ししてないから部屋のゴミをまとめてー……

そんなことを自然と考えている自分に驚く。

❇︎

独身の頃、掃除や片付けが大の苦手だった。
というより、必要性を感じていなかった(もっとやばい)。

なので、
カバンの中から飲み終えたペットボトルが何本も出てきたり
学校のロッカーが雪崩を起こして大散乱したり
そんなことは日常茶飯事。

でも、
家に帰れば自分の部屋は綺麗で快適だった。  

母が毎日掃除してくれていたからだ。

❇︎    

母はかなりの綺麗好きで、娘達が巣立った現在も、毎朝4時に起きて家中の掃除をしている。

おかげで家は常にピカピカ。友人が遊びに来ると「モデルルームみたい」と驚かれる程だ。

そんな母にとって私は、せっかく綺麗に掃除したところを汚していく
『千と千尋』に出てくるオクサレ様のような存在だったと思う。

実際、「洗面所の髪を拾え!」「使ったものは元あった場所に戻せ!」と常に怒られていた。

だが、そこはオクサレ様。
怒られてもどこ吹く風で、まーたなんか言ってるわ、くらいにしか思っていなかった。

↓頑張って掃除する千(母)を上から見下ろすオクサレ様(私)

そんな私が今、  

毎日掃除機・雑巾がけをしないと気持ち悪い、
洗面所に髪の毛が落ちているのが許せない、
と思う人間になった。 

娘が生まれてスイッチが入ったのだろうか。
実家と同じくらい清潔な環境じゃないと気持ちが悪く、イライラしてしまう。

アンビリーバブル。

母が諦めずに撒き続けた種が、
20数年の時を経てようやく芽吹いたのだ。

❇︎

我が家には今、オクサレ様が1人いる。
旦那である。

彼は私以上に片付けるのが苦手で、
部屋には常に何十本ものペットボトルがあり
本人が自分の部屋を「事故現場」と呼ぶ程、とっ散らかっている。

旦那に「爪切り使ったら戻して!」「タオルは綺麗にかけて!」と怒る度に思う。
母はこんな気持ちだったのか、と。

そして同時に、元オクサレ様の私は思う。
この人には全く響いていないんだろうなぁ…と。

人は自分で必要だと思わないと変われない。
それは身に染みて分かっている。
しかし、ある日突然、ストンと変われることもあると知っている。

だから私は、これからも口うるさく旦那に注意していく。

❇︎

旦那と娘、私の大切な家族。
2人のために、私が出来る事はなんだろう。

それは例えば、
出来るだけ笑顔で接するとか
晴れている日はお布団を干すとか
当たり前すぎて見落としてしまうような事かもしれない。

けれどその「当たり前」が、いつか2人の中で根を張り、人生のどこかで役に立つタイミングが来るかもしれない。

そんな風に思いながら、日々の暮らしの中に、たくさんの愛の種をまいていきたい。
いつか芽吹くその日を心待ちにして。


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