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書評つぶやき(写真付き)

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筆者による書評つぶやきをマガジンにまとめました。
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記事一覧

パオロ・マッツァリーノ『サラリーマン生態100年史』(角川選書)を読了。昭和のサラリーマンの実態を知りたくて読んだが、産業スパイ育成学校の話など傑作。皮肉は辛辣だがユーモラスで、ちょくちょく大笑い。だが文献などを綿密に調べて書かれており舌を巻く。著者は偽名らしいが、凄い人では。

悟塔雛樹
10日前
2

中根千枝『タテ社会の人間関係』(講談社現代新書)を読了。本書の議論は有名なので、半ば常識とされてきているかもしれないが、精緻で的を射た記述には脱帽。さすが「名著」。日本社会を仔細に論じるためには、やはり外国との比較が必要なのだと感じる。多様な考え方が磨きあってこその知性だとも。

悟塔雛樹
11日前
4

ある方のおすすめで、梅棹忠夫『文明の生態史観』(中公文庫)を読了。実に面白かった。いわば生態学と人類学の架け橋だが、さらに神話学などを挟むことで心理学にも繋げられないものだろうか。中沢新一の『アースダイバー』シリーズにも通底する何かを感じる。やはり地理学も、かじった方が良さそう。

悟塔雛樹
2週間前
8

柴山哲也『新京都学派』(平凡社新書)読了。文系の錚々たる学者たちが名を連ねる学派。最近の読書は大半がこの辺りだが、だいぶ回り道をした。高校時代、筆者に謎の抵抗をした当時の親教師どもは機会があれば、全員逆さ吊りにして辛子マヨネーズ漬けの刑である。私は文系志望だと言っとるだろうが。

悟塔雛樹
2週間前
5

河内厚郎・編著『阪神学事始』(神戸新聞総合出版センター)を読了。大阪と兵庫は昔はひとつだったが、国策により分断されたそうだ。筆者としては日本における人形劇の発祥が興味深かった。30年前にまとめられた本なので時代を考慮して読む必要はあるが、自分も阪神間文化に携われたら楽しいと思う。

悟塔雛樹
2週間前
2

中沢新一の叔父、網野善彦の『日本の歴史を読みなおす』(筑摩書房)を読了。いつかは読まねばと思っていた本だが、文庫版とは違って前編部分にあたる。大学での講義を収めたものなので、書き言葉でないぶん読みやすい。むかし学校で関心を持てなかった領域を埋めていく楽しみがある。続編も読みたい。

悟塔雛樹
2週間前
4

深尾葉子『日本の社会を埋め尽くすカエル男の末路』(講談社プラスアルファ新書)読了。日本人の不幸の構造的な原因に、男女相互の固定観念があることを暴く第二弾。あの「半沢直樹」が男性の不幸の裏返しであるという指摘は卓見。強すぎる思い込みは自縄自縛だと、自覚だけでもするべきなのだろう。

井沢元彦・島田裕巳『天皇とは何か』(宝島社新書)読了。心理的一様性を担保するために、日本人はむしろ「天皇制を利用してきた」のかもしれないと感じた。世界が「多様性」へとシフトするなか、ある意味で日本の独自性を代表する天皇制について作家と宗教学者が対談する。

悟塔雛樹
2か月前
2

中村雄二郎『術語集ー気になる言葉ー』『術語集II』(ともに岩波新書)。知の思想的キーワード集だが、諸学問がいかに絡み合っているかを示している。二十数年前に1冊目を読んだ時に全く分からなかった項目が、予備知識のついた今では何となくわかる。じっくり読み直して考えたい名著だ。

悟塔雛樹
3か月前
1

サッサ・プーレグレーン著 枇谷玲子 訳『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』(岩崎書店)を読了。怒らず穏やかに、強くしなやかに自由を求めるといった印象の本。こういう気風が根づけば、ハラスメントと縁遠い社会が実現できるのではないかと感じた。文化の違いを超えて学ぶところ大。読みやすい。

悟塔雛樹
3か月前
2

再入手再読。予備知識を得てから読むと、とてもよくまとまっている伝記漫画だと分かる。監修・解説を務める荒俣宏氏のメッセージも貴重。自分流を貫く「エキセントリック」はイギリスで尊敬の対象だったとか。また文士(リテレート)とは叩き上げの在野研究者で、外国でモテると熊楠自身が述べている。

悟塔雛樹
4か月前
3

町田そのこ『52ヘルツのクジラたち』(新潮文庫)を読了。フィクションならではの筋書きながら、とても現代的なテーマを扱っている小説。利己心や悪は確かに連鎖するが、愛情や思い遣りもまた連鎖することを考えさせられた。

悟塔雛樹
4か月前
5

橋爪大三郎『はじめての構造主義』(講談社現代新書)を読了。30年ぶりの再読で当時は何も分かっていなかったが、書き込みが残っていたのは懐かしい。「構造主義は常識」というのは哲学や思想の分野に限ると思うがどうか。未読ではあるが、『サピエンス全史』などとも通じる思想ではないかと思う。

悟塔雛樹
6か月前
3

マレーシア在住、noteに多数投稿されている野本響子さんの『子どもが教育を選ぶ時代へ』(集英社新書)を読了。「誰にでも合う完全な教育は存在しない」とある。日本の教育がほとんど一本道であることと、その様々な社会問題との関連性について考えさせられた。