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社会人野球応援プロジェクト『ガチプレー』

社会人野球応援プロジェクト『ガチプレー』について

ついにやったか。社会人野球がクラウドファンディングなどで本格的に動き始めた。筆者は以前から「社会人野球こそ金をとるべきだ。金を企業が出す、を美徳にしてはならない」と言い続けてきたが、やっと第一歩を踏み出した、という感想を得ている。

 やはり社会人野球チームが段々と先細りの様相を呈してきた事に加えてコロナの影響が強く出てしまったのだろう。近年では社会人野球を支えてきた三菱重工が一部撤退し統合化。長い歴史を持っていた三菱重工名古屋、広島がなくなる事になった。東海のダメージも大きいがそれ以上に中国地方の社会人野球のダメージがすさまじい。本格的に社会人野球が縮小する一歩手前まで来ている印象をぬぐえずにいた。

 そんな事を言っているタイミングで関東では深谷組が休部を表明。社会人野球を取り巻く環境は決して良くない。ただでさえ現在独立リーグが本格台頭してきている中、アマチュアイズムを売りにしている社会人野球は立場が苦しくなってきている。

 人々はマイナーな野球として社会人野球を挙げる人も少なくないが、日本の野球史を紐解けば決してマイナーな扱いをしていいものではないはずだ。東京六大学野球のヒーローたちをもう一度グラウンドで観よう、という意志から始まった社会人野球と都市対抗野球大会。行きつく先はプロ野球と考えていたのだから、読売新聞の横槍がなければ日本のプロ野球は現在の社会人野球であった可能性だって十分にあったのだ。それがそうならないのが歴史の面白いところだろう。

 その社会人野球が段々と先細りし、一部の大企業以外は存続も危ういような時代になったのは非常に寂しいところであるし、一方で会社に個人が帰属する時代でもなくなったことを考えると前の時代のもの、とも捉えられる。

 そんな中での行動であるから非常に明るい話題であると感じている。

 このクラウドファンディングで面白いのは元関西の社会人野球チームに属したプロ野球選手のサイングッズなどがもらえるところでもあろうか。

 プロ野球と社会人野球は基本的に仲がいいものではない。現在でこそプロ野球の存在が大きくなったことだけでなく、プロアマの雪解けが進んでいる事を考えても、大分ましになった、というような状態でファン、機構ともどもやはり仲は良くない。ファンだけでも「プロ以下」と言い切ってしまうプロ野球ファンもいれば「うちのチームから選手を強奪する」と言ってしまう社会人野球ファンもいる。

 だがそれはあくまでバックボーンの話というやつで、むしろ社会人野球を経験した選手はあまりそのチームをあしざまに扱わない、それどころか協力体制を整える傾向がある事が垣間見えるのだ。

 近年で言えば千葉ロッテマリーンズからドラフト三位で指名された廣畑敦也投手なんかはイメージしやすい。彼はSNSを利用する事でプロも意識しつつ、一方で所属しているチームである三菱自動車倉敷オーシャンズ野球部の宣伝をいつも行っていた。日本ハムファイターズ所属の今川優馬選手(前JFE東日本所属)も都市対抗野球大会の際はツイートを惜しまない。

 想像以上に社会人野球とプロ野球、現場クラスでは仲がいい。

 しかし前述したとおり、体制としては柳川事件をさかのぼる2リーグ制以降から社会人野球は選手、チームを奪われることを脅かされ、それに伴って柳川事件を原因に対立するところまで来てしまっている。

 その機構がプロ野球選手に働きかけ、それに選手が応えた事実は想像以上に大きい。

 特に近年はプロを中心とした日本代表に東京ガス中山悠基選手が呼ばれたりとシドニーオリンピック以降本格的に雪解けが進行していたが、ここまで踏み込んだ状態に至ったのは初めてではなかろうか。

 また、JABA関西地区では京都大会にわかさ生活を冠スポンサーにつけるなど、精力的な活動が始まっている(社会人野球JABA大会に初の冠スポンサー 京都大会にわかさ生活/毎日新聞)。わかさ生活と言えば女子プロ野球や女子高校野球の設立に大きく関わった角谷建耀知が取締役として動いている会社。野球に対する情熱は強いだろう。

 またJABA全体としてもJABAonline-shopなどで社会人野球グッズを販売し始めるなど精力的であることも付記しておく。

 最後になるが、私は社会人野球ファンの多くが都市対抗野球大会のアピールに対して言っていた「(都市対抗野球の魅力は)応援席に入れば無料」という言葉が大嫌いであった。それはなぜかというとファンを自称する彼らが金を使わずに入れる事を喧伝して回る事が気に入らなかったのだ。

 少なくとも私は好きなものには金を1円でも入れたいと考えるし、日本が資本主義経済である以上、その金が好きなものの運営資金になり、繁栄の一歩になるからと信じているからである。それをないがしろにされているようで一緒に喧伝する気にはなれなかった。むしろ彼らの方が社会人野球に巣食うものであるとすら考えていた。

 一方で全日本社会人野球選手権に出た結果、チケットなどで会社が資金繰りに困り賞与がなくなった企業があると風のうわさで聞いたことがある。そんなものが許されていいのであろうか、と思うのだ。会社には野球に興味ない人間も働いていたりする。その彼らが汗水垂らして作った金を、自分の興味ないものに吸い尽くされる。それを喜ぶ人はいるのだろうか。

 だとするならばやはり社会人野球の慣例は変わるべきで、今の時代に即した形にしていかねばならない。いつまでも「社会人野球は大人がやる本気のお祭り」なんて昭和的なのほほんとした考え方ではさらにすり減っていくだけなのだ。

 だからこそまずファンから。

 ファンから進んで社会人野球の繁栄に協力できる体制を作る事は大きな前進であると思うのだ。

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