成人看護学実習アセスメント例2

1.健康認知・健康管理

S
・「色々やってみたんだけど治らなくてね」
・「股関節とか腰とかが痛くなってきて、最初は股関節が悪くなったと思って病院行ったら膝だって言われたの」
・「痛むのは嫌だし、治せるなら手術しようって思って」
・「めまいとかはないです」

O
‹現病歴›
右変形性膝関節症
‹既往歴›
・多発性脳梗塞
・高血圧
・左変形性膝関節症術後
‹内服している薬剤›
・アムロジン錠2.5mg
0.5mg/日
1日1回朝食後
プルゼニド錠12mg
0.5mg/日
1日1回就寝前
エチゾラム錠0.5mg
1日1回寝る前
‹現病歴›
・平成17年に左膝の手術をした頃から右膝痛があった。関節注射の効果はあったがx-p検査をしたところ手術をした方が良いということで入院。


‹検査データ›
9月4日(手術後1日目)
白血球数:9800mm³
Hb:11.9g/㎗
Ht:36.0%
血小板:18.2/㎜³
9月6日
白血球数:6600 mm³
Hb:10.9g/㎗
Ht:33.2%
血小板:17.0/㎜³
9月10日
白血球数:3400mm³
Hb:11.5g/㎗
Ht:35.3%
血小板:21.9/㎜³›
‹術式、術後の経過›
・人工膝単顆置換術(UKA)
・術直後は白血球数などの炎症数値は高い
・日数が経過すると徐々に基準値以内になる

1.健康認知・健康管理のアセスメント(感じたこと・考えたこと・援助の必要性)

 右変形性膝関節症とは、筋肉の衰え、加齢、肥満、けがなどにより、関節の軟骨が磨り減り、さらに骨が変形し痛みを生じ、関節軟骨の変性、磨耗による荒廃と、それに伴う軟骨および骨の新生、増殖による慢性、進行性の変形の関節疾患である。

 痛みは、初期の段階では動作開始時の痛みを訴えることが多く、病期が進み、中期では関節軟骨の磨耗が進み、曲げ伸ばし、立ち上がり、歩行時の膝にかかる負担の増加及び軟骨、半月板の変性による刺激により関節炎が起こる。進行期となると軟骨化骨の露出、骨棘といった骨の変形によって強い痛みを伴う。曲げ伸ばしの可動域制限も高度となる。薬物療法による関節内注射ヒアルロン酸の注入によって一時的に関節軟骨の被膜保護作用、軟骨修復作用、鎮痛作用の効果は得られたと考えられるが、 A氏の場合、「色々やってみたんだけど治らなくてね」「股関節とか腰とかが痛くなってきて、最初は股関節が悪くなったと思って病院行ったら膝だって言われたの」「痛むのは嫌だし、治せるなら手術しようって思って」といった発言から、A氏自身は苦痛を生じない日常生活ができるようになりたいという思いがあり、手術を希望したと考えられ、中期~進行期の関節破壊であったため人口膝単顆置換術を行った。

 術後は検査データから見ると、白血球数は手術後1日目9800mm³であり基準値である4000~9000㎜³を上回っているが、これは術後の炎症によって上昇しており生体反応であると考えられ、また、その後の白血球数は6日に6600㎜³と正常値であるので、炎症が抑えられていると考える。しかし、10日の白血球数が3400mm³と基準値以下であった。白血球数が基準値以下であることは健常者にも起こりうることであり必ずしも異常があるということではないが薬物による影響なども考えられるので、今後も観察を行っていく必要があると考えられる。
 また、HbとHtの検査データがどちらも基準値以下である。これは、どちらも貧血に関わる数値であり、基準値以下ということは立ちくらみやめまいの症状が出現するということが考えられる。現在、降圧薬の内服を行っているがA氏からは「めまいとかはないです」といった発言があるので、副作用の一種でもある立ちくらみやめまいはなく、今のところ問題はないと考えられるが今後も、A氏の身体症状を観察を行う。
 術直後は白血球数などの炎症数値は高く、日数が経過すると徐々に基準値以内になるということで、検査データからみても回復過程であるということがわかるので、今のところ問題はないと考えられる。
 既往歴である多発性脳梗塞は高血圧による血圧の激しい変動により起こり、脳血管に、長径 1.5cm未満の小さな梗塞が複数発生し脳梗塞の中では一番症状が軽く、場合によっては無症状の場合もある。加齢によってほとんどの人に起こり、高血圧がより進行させると考えられる。高血圧は、A氏の場合薬の内服量が通常の使用量よりも少なく、それによって副作用の出現も少ないと考えられ問題はなく、今後も内服は実施する。
 よく見られる後遺症としては、感覚機能の障害、運動機能の障害、高次脳機能障害などが挙げられるが、今回の入院前の自宅での生活でも感覚機能の障害はなく日常生活を送っていたので、今のところ多発性脳梗塞による日常生活への影響は無いと考えられる。

2.栄養・代謝

‹食事摂取量›
病院食:全量摂取
‹血液データ›
9月3日
AST:19IU/ l
ALT:11IU/ l
Na:139meq/l
K:3.6meq/l
Cl:103meq/l
Ca:8.1mg/dl
TP:6.0
9月10日
ast:31IU/ l
alt:17IU/l
Na: 137meq/l
K:3.6meq/l
Cl:100meq/l
Ca:8.5mg/dl

2.栄養・代謝のアセスメント(感じたこと・考えたこと・援助の必要性)


 現在A氏は病院食を摂取自力で全量摂取できており、嚥下機能も良好であるので問題ないと考えられる。
 また、血液データより肝機能の値を示すAST、ALTは基準値であり、肝機能が障害されているという問題は今のところ考えられない。またNa、K、Clともに正常範囲内であり、電解質に異常はないと考えられるが、Ca値が正常値以下であった。Ca値の減少は加齢により身体の中のホルモンが変化するために、骨量が減少することが考えられる。その他、胃酸分泌の低下や腸の吸収能の低下、腎臓での尿へのカルシウム排泄の増加なども原因と考えられるので、今後観察を行う必要があると考えられる。
 手術直後はTPが6.0であったのは、手術直後であり出血もあったため、この基準値6.5~8.0g/dl以下の数値になったので生理的変化と考えられる。
 また、現在は抜怐を終え創部を観察したところ滲出液や出血もなく、膝関節内部の組織が完全に修復したわけではないので腫脹と熱感は少しあるが徐々に回復過程であるということが考えられるので、今のところは問題ない。


3.排泄


・排尿4~5/日
・便秘症
・薬剤内服
・発汗なし
・基本:普通便

3.排泄のアセスメント(感じたこと・考えたこと・援助の必要性)

 排尿回数も正常範囲内である。
 排便時、性状などに問題はないが、便秘症であるということなので薬剤を内服し、排便が促されているということが考えられる。今後も便の回数や便秘状態の観察を行う

4.活動・運動

‹リハビリ›
CPM:手術後から毎日行っている
・14日CPM前は60度であり70度から開始、15分すると屈曲可能となり85度まで挙がり終了
・15日70度から開始し85度まで上がった。痛みは強くはないが90度まで挙げるのはまだ怖い
・筋肉トレーニングも行えている
・歩行にふらつきあり
‹ADL›
・自立している
・おふろの着脱衣のみ介助が必要
・歩行器を使用している

4.活動・運動のアセスメント(感じたこと・考えたこと・援助の必要性)

  ADLはほとんど自立しており、おふろの着脱衣のみ介助が行われているということなので、今後も継続する必要がある。
 リハビリとして、CPMを行っているが、角度が上がるにつれて痛みが増強するということによる不安や恐怖がある。しかし、痛みのために可動域が低下した状態が続けば、靭帯や関節包の短縮も起こり、関節拘縮となる。そのため、可動域の低下は不可逆的なものであるため、防止と改善が必要であると考えられるのでCPMは今後も継続する必要があると考えられる。 

 筋力は理学療法士の筋肉トレーニング指導に従い、適切に行えていたのでリハビリによって筋肉の維持ができていると考えられる。また、歩行は安定しているが患者本人はふらつくことがたまにあり、バランスを取ることを意識して行っているので転倒のリスクがあると考えられる。今後は、患者のADLの回復に合わせて杖へ変える日を考えていく。

5.睡眠・休息


・トイレで起きることがたまにある
・5~6時間は寝る
・「寝不足とかはないですよ」
・「入院環境にも慣れて寝れないことはないです」

5.睡眠・休息のアセスメント(感じたこと・考えたこと・援助の必要性)

 夜間トイレ覚醒はあるものの睡眠時間は十分とれており、今のところは問題がないと考えられる。

6.認知・知覚

S
「時々何も動かしていないのに膝の下のあたりがピリピリするんです」
「階段を上れるようになって早く退院したい」

O

・意識レベル良好
・視覚はメガネを使用でドライアイのため点眼薬を時々使用
・夜間の疼痛なし
・リハビリ後は熱感あり
・クーリングを行っている

6.認知・知覚のアセスメント(感じたこと・考えたこと・援助の必要性)


  階段を上れるようになって早く退院したいというA氏の発言があることからリハビリの意欲があると考えられるが疼痛出現によりリハビリに対する意欲が減退する可能性がある適切に鎮痛薬を使用し、疼痛軽減を図っていく必要があると考えられる。
リハビリ時は膝関節を曲げると痛みが出現することや、筋肉の修復部分や組織面が癒着しないようにマッサージされるため、リハビリ後は熱感が生じる。今のところ、リハビリ後はクーリングを行って炎症を抑えているので今後も継続する。

7.自己知覚・自己概念

S
・「ずっと主婦をやっていた」
・「今まで通りの生活に戻れればいいんだけどね」
「やっぱり思い通りにいかないものだねぇ」

O

・身だしなみは整っている
・努力家
・退院する頃には階段を登れるようになるまで膝を曲げれるようになりたい
・歩行をちゃんと安定させたい


7.自己知覚・自己概念のアセスメント(感じたこと・考えたこと・援助の必要性)


  自分の気持ちを表出できていると考えられるが、現在、膝関節が思うように屈曲しないことや、退院後の生活について、普通の生活を送ることができるかどうか、といった不安もあるので軽減する必要がある。
 不安を軽減するためには、現在できていない日常生活行動でなにができるようになるかを明確にし、目標を立てていく必要がある。

 A氏は退院する頃には階段を登れるようになるまで膝を曲げれるようになりたい、歩行をちゃんと安定させたいという意欲があり、リハビリ後も病床での自分で行うリハビリを意欲的に行っている様子が伺える。

 このまま継続すれば、膝関節内の組織修復、関節可動域の拡大が徐々にでも進行すると考えられるので、今後もA氏と目標を確認し、回復意欲に変化がないか日々の表情や言動の観察を行っていく必要がある。


8.役割・関係

S
「姉妹がよくお見舞いに来てくれるのよ」
「話とかも聞いてくれたり、やっぱり兄弟がいるといいわね」
「夫も来れるときは来てくれるのよ」
「家事は買い物に行けないので通販を使ったり、なんとかなるけど、寝室が布団だから膝が心配」
「ベッド買ってもいいと思うんだけどね」

O

・夫と孫と暮らしている
・妹がよく面会にきている
・家事や家のことはA氏本人がほとんどやっている
・夫は足が不自由

8.役割・関係のアセスメント(感じたこと・考えたこと・援助の必要性)

「姉妹がよくお見舞いに来てくれるのよ」「話とかも聞いてくれたり、やっぱり兄弟がいるといいわね」「夫も来れるときは来てくれるのよ」という発言から兄弟・家族とは良好な関係を築けていることが伺えるので、人間関係に関しての問題はないと考えられる。
 退院後は、夫も足が不自由で孫も学生であるということなので、家事全般はほとんどA氏が行うこととなる。

 A氏は「家事は買い物に行けないので通販を使ったり、なんとかなるけど、寝室が布団だから膝が心配」という家族内の役割が確立できている発言があったため、退院後の膝関節に負荷のかからない安全な生活の確保が必要であると考えられる。ベッドの使用なども検討しているということなので、今後も対処方法を考える必要がある。


9.性・生殖

・女
・70代

9.性・生殖のアセスメント(感じたこと・考えたこと・援助の必要性)


・特に問題なし

10.コーピングストレス

S
「本当は杖を使って歩きたいんだけど、まだ不安定だからね。」

O

・歩行が安定しないことによるストレス
・毎日のリハビリAAAAAAAAA
・病床でのリハビリA

10.コーピングストレスのアセスメント(感じたこと・考えたこと・援助の必要性)


 現在は歩行器の使用を行っているが、「本当は杖を使って歩きたいんだけど、まだ不安定だからね」と膝関節の制限による歩行が安定しないといったストレスがあると考えられる。しかし、A氏は、杖を使いたい意欲をそのまま行動に移さず、自身のADLを把握しリスクを考え、行動していると考えられ、歩行を安定させるためのリハビリや病床で行うリハビリなども意欲的に行うといったストレスへの対処行動がみられる。 

 今後もA氏の気分や表情を観察し、ストレス対処の状況を把握することや、ストレッサーとなっている要因は他にないかを観察する必要があると考えられる。



11.価値・信念

S
「退院するまでには階段を上れるように、ちゃんと歩けるようになりたい」

O

・A氏本人が自ら目標を考えている

11.価値・信念のアセスメント(感じたこと・考えたこと・援助の必要性)


 「退院するまでには階段を上れるように、ちゃんと歩けるようになりたい」という今後の退院生活で必要だと思っていることを目標として挙げていると考えられる。今後の退院生活で重要だと思っているA氏の気持ちを尊重していく必要がある。

看護問題

♯1膝関節可動域の制限に伴う歩行のふらつきによる転倒のリスク


♯2術後膝関節内の組織の修復過程に生じる疼痛による

♯3疼痛や膝関節可動域制限による退院後の生活についての不安


♯4可動域制限から起こるストレスによる回復意欲の低下

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