老年看護実習アセスメント ~認知症中心で~

↓↓老年看護過程という本をベースにアセスメントしました。↓↓


コアとなる情報編

疾患情報

①既往歴:50歳代 気管支喘 
季節の変わり目には発作を起こしていたが、最近は鼻炎症状の鼻水がみられる程度に落ち着いていた。
②64歳 白内障(両眼)手術
③現病歴:2019年12月アルツ ハイマー型認知症と診断された。
④1年前から「今日は何日だっけ?」と頻繁に聞かれたり、自宅とは逆方向に歩いているところを発見される。
⑤長谷川式スケール18点
⑥MRI検査で海馬の萎縮と脳血流画像で海馬の血流量の減少が認められる。⑦庭で作業をしていたところ声を掛けられ、立ち上がろうとしたところ立ち上がれず、その場に倒れこんでしまう。
⑧抱え起こそうとすると嘔吐が見られたため、救急車でB病院に搬送された。
⑨血液検査の結果脱水が認められ、ソルデム1輸液500ml の点滴を施行した。
⑩他に異常がないか検査のため、一般病棟に入院となった。
⑪「薬がない。」と受診した
⑫アリセプト(5mg)1T1×朝
⑬オノン(112,5mg)4cap2×朝夕
⑭ホクナリンテープ(2mg)1 日1回
⑮体温36,0~36,5℃、脈拍60~70回/分、血圧120~134/66~78㎜Hg、呼吸17~18回/分
⑯入院時Na122mEp/ ℓ K3,2mEp/ℓ Cl 92 mEp/ℓ クレアチニン1.0mg/dl 尿素窒素32 Ⅲg/dl
⑰6月18日 Na138mEp/ℓ K3,6mEp/ℓ  Cl 99 mEp/ℓ クレアチニン0,7㎎/dl 尿素窒素20mg/dl

疾患情報アセスメント

 気管支喘息とは慢性の気道炎症、気道過敏性の先進、可逆性の気道閉塞を特徴とする疾患である。夜間から早朝に発作性の呼吸困難、喘鳴、咳嗽が反復してみられる。Aさんの場合は①がある。現在は、症状として咳嗽、喘鳴はなく、時々鼻水を噛んでいることから落ち着いている状態であると判断できる。今後の予測として非アトピー型の喘息は冬に増悪しやすいことや季節の変わり目に発作が起きやすい可能性がある。また、⑬、⑭を内服できなくなると気管支喘息が悪化することが予測される。援助の方向性としてはお薬カレンダーを導入してAさんにわかりやすいようにするか、同居している長女に内服薬を管理してもらうかが考えられる。


 白内障とは羞明と視力低下が主症状である疾患である。治療は白内障を根治できる薬物はなく、その効果は限界がある。視力障害が生活に支障をきたすようになった場合には手術を行う。診断には散瞳薬を用いて散瞳後に細隙灯顕微鏡で水晶体の混濁を確認する。眼圧測定や眼底検査により白内障以外の眼疾患の有無を調べ、水晶体の混濁程度と視力が一致するか判断する。予後はわが国で失明の原疾患になっていたが、手術の進歩によって改善された。老人性白内陣は女性に多く、白内障は加齢とともに有病率が増加し、70~80歳になると程度の差はあれ、すべての高齢者に認められる。Aさんの場合は②であることから改善されていると考えられる。 

 アルツハイマー型認知症は脳神経細胞の変性により脳神経細胞が減少する。大脳皮質の脳神経細胞の脱落で、大脳皮質細胞に沈着するアミロイドβ蛋白が病因とされている。症状としては進行する記憶障害で始まる。言語面では物の名前が出てこない言い間違えるなどが頻繁にみられる。また、運動麻痺がないにもかかわらず、単純な動作がスムーズにできない、感覚障害がないにもかかわらず、対象を認知できず、部屋を間違える、判断力の低下、計画をたてて順序通りの行動がとれないなどの症状がみられる。アルツハイマー型認知症は女性に多く、高齢になるにしたがい増加する。治療には薬物療法で治療薬のアリセプトは効果発現までに3ヶ月を要し、効果が持続することから、医師の指示を守って服薬を継続できるように指導を行う。国際的な診断基準のDSM-Ⅳでは、記憶障害に加えて、失語、失行、失認、遂行機能の障害のいずれか1つでも認めればアルツハイマー病と診断される。アルツハイマー病ではCT,MRIでびまん性の脳萎縮を示し、 PET,SPECTでは側頭葉、頭頂葉の血流・代謝低下が見られ、海馬の萎縮も顕著である。検査値では髄液中のタウ蛋白の上昇、アミロイドl蛋白の低下を認める。

 予後ではアルツハイマー病は不可逆性の疾患で日常生活が徐々に障害される。進行とともに介助・介護を余儀なくされ、全身疾患の発症を契機に寝たきりになることが多い。合併しやすい症状としては睡眠障害、被害念慮、せん妄、興奮、幻覚・妄想、精神行動の異常がみられることや中核症状そのものや環境の変化や不適切な対応、薬物の副作用などの外的要因によって認知症の経過の一時期に出現し、介護への抵抗を示す症状であるBPSDがある。 Aさん場合は④、⑤、⑥があったことにより③と診断された。最近では⑪があり、認知症の症状である記憶障害が出現していると考えられる。今後の予測としてアルツハイマー型認知症は不可逆性の疾患で日常生活が徐々に障害される疾患であることからできていたことができないことが予測される。また、⑫を内服することができずに認知症が進行してしまう可能性が考えられる。援助の方向性としては日常生活動作の工夫を提案したり、認知症が悪化しないようにする看護、認知症の患者さんの話しを傾聴する看護が必要であると考えられる。また、内服ができるようにサポートすることが必要である。

 今回の入院の原因は脱水である。高齢者は体重における体内水分量が減少することや感覚機能低下により、のどの渇きが気づきにくいことにより脱水症状になりやすいと考えられている。脱水症状になると軽度では皮膚の乾燥、めまいやふらつきがみられる。中度では頭痛や吐き気を訴えるようになり、重度では意識消失、痙攣がみられる。Aさんの場合は⑦、⑧が見られ、脱水症状であると判断された。また、Aさんは高齢であることや認知症の記憶障害により水分を摂取していたと認識していた可能性が考えられる。現在は⑮からバイタルサインズが基準値内で安定していることや入院時⑯であったが、⑰に変化して基準値内になっていること、⑨により脱水症状は改善していると考えられる。今後の予測としては脱水症状が継続すると意識消失や痙攣がみられる可能性がある。また、このような症状が出現した場合は身体的不調となり、認知症を悪化させる原因となることが考えられる。援助に方向性としては認知症を進行させないために内服のサポートや体調の不調を早期に発見するために観察する必要があると考えられる。

身体的側面(情報)

①長谷川スケール18点、要介護度1 
②入院前は家事は自分の役目だと話し、積極的にこなしていた。
③掃除や調理などは自分でできることは多かったが、炊飯器のタイマー予約ができなくなり、買い物はスーパーから帰れなくなったことがある。
④食事場所まではスタッフが誘導し、食事は箸を使い摂取していた。
⑤日中は廊下にでてキョロキョロしていることがあり、看護師が声をかけてトイレまで誘導していた。
⑥ズボンの上げ下げや排泄後に水を流すことはできていたが、時々ズボンが下がりきらないうちに便座に座ってしまい、ズボンや下着を汚してしまうことがあった。
⑦入浴後は自分で着替えることができていた。
⑧自分から洗髪することはなく、看護師が声をかけると自分で洗っていた。⑨洗顔後は自分から持参している化粧水と乳液を丁寧に塗っていた。
⑩腰痛はベッド柵につかまりゆっくりと1人で起き上がれるようになるまでは改善している。
⑪手すりにつかまりゆっくりと歩く様子がみられた。
⑫1日2回のリハビリを開始していた。
⑬集団体操、貼り絵や手芸、書道を行うことができていた。
⑭面会に来ない日にも廊下に出てキョロキョロしている様子がみられた。15分後には同じ行動がみられた。
⑮白内障の手術を行った。
⑯老眼鏡をつけて作業している。
⑰やや大きめの声で話しかけると会話はなりたっていた。

身体的側面アセスメント

 高齢になると、筋肉を構成する筋線維数が減少し、さらに筋線経が萎縮することによって筋肉量が低下してまう。骨は加齢により、骨吸収が増加するとともに、骨形成が減少することで、徐々に骨密度や骨量が低下する。特に女性の場合、閉経時期を境目として、骨量の減少が著しく なり、場合によっては骨粗鬆症を発症する。加齢に伴う下肢や体幹の筋力の低下や、体力・持久力の低下、膝や腰の痛みがみられることで、身体活動の減少が起こると、バランス機能や歩行能力が低下することで容易に転倒・骨折するようになる。アルツハイマー型認知症は不可逆的な疾患であり徐々に日常生活動作が障害される。 Aさんの場合は転倒により腰痛があり⑩、 ⑪の状態である。
 また、アルツハイマー型認知症の症状である失認、失行によってAさんは入院前には②、③の状態であった。現在は食事では④であり、誤瞭することなく摂取できている。排泄では⑤、 ⑥の状態であり、アルツハイマー型認知症の失認、失行の症状が出現している。入浴では⑧であり、アルツハイマー型認知症の記憶障害の症状が出現している。更衣・整容に関しては⑦、 ⑨であるが、排泄によって汚してしまった際に「着替えは済んでいるので大丈夫です」とあることからアルツハイマー型認知症の記憶障害が出現していることが考えられる。

 今後の予測としてAさんの活動量が低下してしまうと筋力低下へとつながり、現在行える動作ができなくなってしまう可能性がある。また、アルツハイマー型認知症は不可逆的な疾患であり、日常生活が障害されてくることが考えられる。転倒・転落による骨折の可能性がある。骨折してしまうと寝たきり状態になってしまう可能性もある。
 寝たきりの状態になると記憶障害や見当識障害、感情失禁、意欲・関心の減退といった症状の悪化があると予測される。看護の方向性としては⑫、 ⑬といったものに参加を促すことや日常生活動作に対して工夫をする援助が必要であると考える。また⑫、 ⑬といったものに参加してもらうことで運動機能を維持してもらうことや生活動作の中で転倒・転落が起こらないように環境整備などの援助を行う必要があると考える。

 認知とは、知覚、記憶、学習、思考、判断などの認知過程と行為の感情を含めた精神機能を総称する。長谷川式簡易知能評価スケールとは認知症の疑いや認知機能の低下を早期に発見することができるスクリーニングテストである。30満点中で20点以下の方が認知症の疑いが高いとされる。Aさんの場合は①であり、認知症の疑いが高いとされており、アルツハイマー型認知症と診断されている。今後の予測として日常生活動作が障害されることが予測される。看護の方向性として日常生活動作の工夫をすることを本人・家族に促す必要があると考えられる。

 高齢になると視力の低下、調整力の低下・暗順応の低下・羞明・視野の減少、聴力の低下、高音域の低下・語音の弁別機能低下、体性感覚の低下、触覚、痛覚、温度覚などの表在感覚の低下が起こる。Aさんは既往歴に⑮があるが、作業療法やレクリエーションには⑯を活用していることから日常生活に影響はないと考えられる。聴力に関しては⑰であることから老化に伴う聴力の低下であることが考えられる。今後の予測としてはアルツハイマー型認知症が進行すると老眼鏡の場所などが記憶障害によりわからなくなることなどが予測される。看護の方向性としては同じ場所に置けるようにここが老眼鏡をしまう場所だとはっきりしたものを作成し、活用してもらうことがあげられる。

心理、霊的側面(情報)

①面会に来ない日にも廊下に出てキョロキョロしている様子がみられた。15分後には同じ行動がみられた。
②水分摂取に関して「トイレが近くなるからあまり飲みたくないの」と話して水分摂取をすすめられるたびに同じ返答をしていた。 
③尿臭に気が付いた看護師が更衣を促しても、「着替えは済んでいるので大丈夫です。」                            ④ 「私寒がりなの。重ね着してちょうどいいくらいなの。 」と話していて、肌が汗ばんでいることもあった。
⑤温かいお茶を飲むのが習慣であった。
⑥一般病棟から転棟した直後は表情がかたく、 「家に帰りたいんですけど。 」と訴えてくることがあった。
⑦優しかった夫がなくなり、かなり落ち込んでいた。
⑧長女と同居し、長女の愛猫の熱心に世話をするうちに笑顔を取り戻していった。
⑨猫の話をすると笑顔で「早く会いたい」と繰り返していた。
⑩「娘は外へ働きに出ているから、家のことは私がしなくちゃいけないの。みいちゃんも待っているし、だからあまり長く入院していられないの。 」話していた。

心理、霊的側面アセスメント

 アルツハイマー型認知症には合併症として精神症状の睡眠障害、被害念慮、せん妄、興奮、幻覚、妄想、精神行動の異常がみられることがある。また、加齢によって触覚、痛 覚、温度覚などの表在感覚の低下が 起こる。Aさんは自らの症状についての発言はないが①、②、③、④、 ⑥から自身の症状について理解していない可能性があると考えられる。 アルツハイマー型認知症は不可逆性 なので徐々に日常生活動作が行えなくなり、援助が必要となってくる。
 そのため、本人と家族の理解が必要である。退院後は自宅退院であり、長女が私の方でもっといろいろとやっていこうと考えていると述べていることからAさんの役割喪失による心理面の影響は大きくなることが考えられる。そのため、退院後の役割について話す必要があると考えられる。 Aさんの望みは⑩であることから入院前に日課として行っていた猫の世話や庭の手入れを行ってみてどうかを提案してみる。

 80歳代の高齢者は老年期であり、自己統合対絶望である。多くの人が定年退職し、これまでの人生を振り返る時期であり、死というものを受け入れる時期である。 Aさんははじめ⑦であったが、 ⑧、 ⑨により夫の死を受け入れていると考えられる状況である。現在は⑨、 ⑩と話していることから絶望している様子はみられていない。しかし、再度入院していしまい役割喪失がみられると統合へと向かうことは難しいと考えられる。そのため、退院後の環境について本人・家族と話し合う必要があると考えられる。 Aさんの望む姿は⑩であることから入院前に日課として行っていた猫の世話や庭の手入れを行ってみてどうかを提案してみる。また、炊飯器などの単純な作業にはAさんがわかりやすいように手順を書いた紙を近くに置いておくなど日常生活を工夫することで過ごすことができることを本人・家族に提案する。

社会的、文化的側面(情報)

①Aさんは4姉妹の次女として生まれた。21歳の時に夫と結婚した。主婦として家庭を支えながら、洋裁の仕立て屋で働いていた。
②夫は75歳の時に他界した。
③長男は市外に住んでおり、長女と一緒に暮らしている。 
④外出する際はいつも化粧をし、服装にも気を遣っていたのでおしゃれな人だった。
⑤入院前は家事は自分の役目だと話し、アルツハイマー型認知症と診断されたが、掃除や調理を行っていた。
⑥炊飯器のタイマー予約ができなくなり、買い物はスーパーから帰れなくなったことがある。
⑦毎日休まずリハビリに参加しているが、「こういうことは初めてだけど楽しいですね。」と 参加するたびに話している。
⑧同室者とはあまり話すことはなかった。
⑨「娘は外へ働きに出ているから、家のことは私がしなくちゃいけないの。みいちゃんも待っているし、だからあまり長く入院していられないの。」話していた。

社会的、文化的側面アセスメント

  高齢者は役割を果たすことが自然と少なくなる。Aさんは⑤を行えてた。このことからAさんは役割を継続できる状態であったと判断できる。しかし、認知症により⑥なったことから役割喪失があったことが考えられる。そのため、今後の予測としては役割を果たすことができず、統合へと向かうことが難しくなってしまうと考えられる。役割を果たすことができなかった場合はアルツハイマー型認知症の症状である記憶障害や見当識障害の悪化が考えられる。心理的には感情失禁や意欲・関心の減退があると考えられる。援助の方向性としては退院後Aさんのできることで役割を果たすことができることはないかについて話し合う必要があると考えられる。 具体的には入院前に日課として行っていた猫の世話や庭の手入れを行ってみてどうかを提案してみる。 現在Aさんは⑦をしていることから楽しいと関していて生きがいとなっている可能性があることや⑨から積極的に家事に関わろうとしているこ とから強みになると考えられる。若いころは①、④あったことからも手芸や洋裁といったレクリエーションに参加できていると考えられる。このことからプログラムの適合性があると考えられる。また、作業療法やレクリエーションに参加することで楽しいと感じていることから心理的面で意欲・関心の減退を防いでいると考えられる。今後の予測としては参加の意欲が向上することで活動意欲の向上にもつながることが考えられる。入院をすることによって体力だけでなく、知能機能も低下することからこれらを防ぐことにつながると考えられる。援助の方向性としては作業療法やレクリエーションに参加を促すことが必要であると考えられる。


生活面編

活動(情報)

①日中は昼食後から午後の検温まで30~40分程度ベッドで横になっていた。 
② 「家のことは私がしなくちやいけないの」
③腰痛はベッド柵に掴まりゆっくりと1人で起き上がれるようになるまで改善していた。
④手すりに掴まりゆっくりと歩く様子が見られた。
⑤午前中はデイルームで30分ほど集団体操に参加していた。
⑥午後からは作業療法士がついて、集団で貼り絵や手芸、書道を行うレクリエーション型のリハビリに参加していた。
⑦毎日休まずリハビリに参加しているが、「こういうことは初めてだけど楽しいですね。 」と参加するたびに話している。

活動アセスメント

 高齢者にとって継続的な活動で積み重ねてきた技や蓄えた知識を加齢や疾患によって失うことの衝撃は大きく、さらに、現在の自分にあう活動を見つけて新たに始めたりするだけの意欲や身体・認知機能が低下していると高齢者の活動は減少しやすくなる。高齢者にとって活動とはより快く豊かになることを目指して自ら行動することである。アルツハイマー型認知症により運動麻痺がないにもかかわらず、単純な動作がスムーズにできない失行を引き起こすことがある。また、高齢者は筋力低下も出現することから疲労感が感じられやすくなったり、思い通りに身体が動かないといった症状が出現する可能性がある。 Aさんの③、 ④、 ⑤、 ⑥からこのような行動は問題がないと考えられる。 ⑤、 ⑥の目的としてまた参加してもらうことで運動機能を維持してもらうことや楽しむことで生きがいとなり、退院後も活動することを継続できるようにしている。また②、 ⑦とあることから活動意欲の低下もみられていないのではないかと考えられる。しかし、疲労感により活動が減少してしまう可能性が考えられる。それらにより認知症の見当識障害の悪化も考えられることから援助の方向性としては身体的不調をすばやく発見するために観察をおこなうことが必要である。

 加齢により、筋肉を構成する筋線維数が減少し、さらに筋線経が萎縮することによって筋肉量が低下してしまう。骨は加齢により、骨吸収が増加するとともに、骨形成が減少することで、徐々に骨密度や骨量が低下する。特に女性の場合、閉経時期を境目として、骨量の減少が著しくなり、場合によっては骨粗繋症を発症する。 Aさんは転倒していた。現在は③、 ④であることから骨折しておらず、回復していくと考えられる。しかし、再度転倒し、骨折してしまうと活動耐性が低下してしまうことが考えられる。また、身体的不調によりアルツハイマー型認知症の見当識障害の悪化につながると考えられる。援助の方向性として転倒しないようにベッド周囲の環境を整える必要があると考えられる。

休息(情報)

①睡眠は1日7~8時間とれている。
②夜間排尿による2回程度自覚めあり。再び入眠。
③日中は昼食後から午後の検温まで30~40分程度ベッドで横になっていた。 

休息アセスメント

 高齢者は睡眠が浅くなり、中途覚醒や早期覚醒が増加する。また、メラトニン分泌量が減少することにより 睡眠・覚醒のリズムが乱れてしまう。高齢者の睡眠時間は6時間程度である。Aさんは①であることや②であること、高齢者の平均睡眠時間と比較しても当てはまっていることから問題はないと考えられる。また、①、②、③であることや日中に作業療法やレクリエーションに参加して活動していることから活動と休息のバランスを比較した際にバランスは保たれていると考えられる。しかし、アルツハイマー型認知症によって夜間徘徊や妄想などがみられる可能性がある。そのため、昼夜逆転となり、認知症悪化の原因の一部となる可能性が考えられる。援助の方向性としてはこのまま活動と休息バランスが継続できるように日中活動を促す援助することや夜間徘徊が起こってしまった際にAさんの話を傾聴する援助が必要であると考えられる。


食事(情報)

①食事場所まではスタッフが誘導し、食事は箸を使い摂取していた。
②常食(1600kcal)を7~8割程度、むせることなく摂取していた。
③野菜や魚は好きだが肉はあまり好まない。
④肉類は刻み食に変更することで摂取できるようになった。
⑤水分摂取量を測定し、一日1000ml摂取できるように声掛けしていた。
⑥毎食時と10時、15時のお茶の時間に湯飲み茶碗1杯分の番茶が配られていた。
⑦湯飲み茶碗1/3程度残すことが多かった。
⑧脱水や便秘になることを説明すると「そうだよね。」と答えて飲んでくれたが、進んで飲む ことはなく、水分摂取をすすめられるたびに返答していた。
⑨身長152cm 体重40kg BMI17,4 総蛋白 6, 7g/dl  Alb 3, 8g/dl
⑩長女が面会に来ると、差し入れのプリンやゼリーなど喜んで食べていた。

食事アセスメント

 加齢に伴い手指の巧緻性、握力や視力の低下により蓋の開栓が困難になったり、食事の盛り付けにも影響が及ぶ他、味覚、喚覚の変化や歯の欠損により献立や味付けが変化する。アルツハイマー型認知症では感覚障害がないにもかかわらず、対象を認知できず、部屋を間違える失認がある。また、注意障害を伴うた め、食事中に人が目の前を往来したり、突発的な物音によって摂食が中断されやすい。食欲に関しては②、 ③、④であることから食欲の低下は、みられていないと判断できる。しかし、今後、失認が出現した場合は食事を摂取することが難しくなる可能性がある。また、物音や会話によって食事が中断されてしまう可能性があると考えられる。援助の方向性としては食事のふさわしい静かな場所を選択し、食事に専心できる環境を整える必要があると考えられる。摂食動作では加齢に伴う感覚機能の低下や眼瞼下垂によって、食事に関する情報入力の減少や神経伝達速度の遅延があるが、摂食動作のプログラミングに支障をきたすまではいたらない。しかしながら、老年期に多い中枢神経疾患に罹患すると、プログラミング自体に支障をきたすことがある。また、加齢に伴う握力の低下や巧緻性の低下によって、パッケージを開封する、魚の小骨をとる、食べものをこぼすといった摂食動作に影響することがある。加齢に伴う円背や筋力の低下に加えて麻痺など障害を伴うと姿勢が崩れて疲労しやすくなる。アルツハイマー型認知症の運動麻痺がないにもかかわらず、単純な動作がスムーズにできない失行や感覚障害がないにもかかわらず、対象を認知できない、部屋を間違える失認がある。現在Aさんは①であり、食事場所まではスタッフが誘導している。食事をするための箸の扱い方は①よりできていると判断できる。今後の予測として食事の場所がわからなくなることが予測される。援助の方向性としてはAさんの持てる力は①であることから食事をする場所まで明確にできれば、 Aさん食事を摂取することができると考えられる。そのため、食事をする場所まで行けるように促すことや一緒に食事場所まで行く援助をすることが必要であると考えられる。

 高齢になると咀嚼力の低下や消化吸収能力の低下、活動量低下により栄養を適切に摂取することができなくなる。また、アルツハイマー型認知症の失行によって嚥下障害が起きる可能性がある。 Aさんは②、 ③、 ④を行っている。現在は食事を中断したり、むせる様子はみられていない。このことから嚥下機能に障害はみられていないと判断する。しかし、嚥下障害が起きると身体的不調により認知症の悪化や栄養が摂取することができず、低栄養になってしまう可能性が考えられる。また、口腔内が清潔に保たれていないと誤嚥の危険性がある。援助の方向性としては嚥下の観察や口腔ケアを適切に行うことが考えられる。

 高齢者は体重における体内水分量が減少することや感覚機能低下によりのどの渇きが気づきにくいことにより脱水症状になる可能性がある。また、腎臓における水分の再吸収力の低下やナトリウム保持機能が低下することで尿として排出される水分量が増加することがある。一般的な水分摂取量1,0~1,5Lである。 Aさんは⑥であることからお茶碗1杯分を200mlだと考え、 1目に1L摂取していることが考えられる。Aさんは⑤、⑦、⑧から脱水になる可能性が高い患者さんである。再度、脱水になると転倒や身体不調の原因となることが考えられる。援助の方向性としては水分摂取を促すことや決められた時間に飲むことを本人や家族に提案することがあげられる。

 高齢者は加齢に伴い活動するための摂食エネルギーは低下するが、必要な蛋白質量は変化しない。また、加齢変化に加えて疾患や障害により食欲が低下し、低栄養に陥りやすい。70歳以上の女性で活動レベルⅠにある人のエネルギー必要量は1500kcalである。 Aさんの食事摂取量②である。 Aさんは⑨であり、低体重の分類である。また、 Albの基準値を下回っていることやTP数値は基準値の下限に近しいことから低栄養であると考えられる。しかし、加齢変化により、正常値より下回ることが多いことからAさんは正常であると考えられる。現在は②、⑩であることから食欲の低下はみられておらず、今後は体重の減少はみられないと考えられる。しかし、認知症によって食事摂取できなくなると栄養状態悪化などによって筋力が低下し、日常生活動作が行えなくなり、認知症の症状である記憶障害や見当識障害の悪化があると考えられる。援助の方向性としては食事摂取量の観察や食事をとりやすい環境を整えることが必要であると考えられる。

排泄(情報)

①排尿回数は1日10回(うち夜間2同程度)
②排便は2~3日1回(普通便~やや硬便)
③尿取りパッド(120cc吸収タイプ)を使用しており、軽い尿漏れしていることがあった。
④自ら尿取りパッドを交換する様子はない。
⑤日中は廊下にでてキョロキョロしていることがあり、看護師が声をかけてトイレまで誘導していた。
⑥ズボンの上げ下げや排泄後に水を流すことはできていたが、時々ズボンが下がりきらないうちに便座に座ってしまい、ズボンや下着を汚してしまうことがあった。
⑦夜間はセンサーマットを使用しており、センサーが鳴ると看護師がトイレまで誘導していた。
⑧時々看護師に「便が何日も出ていないので下剤を下さい。 」と訴えることがあった。しばらくすると同じように訴えることがあった。
⑨排便があったかどうか聞くと「あらどうだったかしら。 」と答える。
⑩排泄回数を自ら記入することはない。
⑪マグミット(330㎎) 3T

排泄アセスメント

 高齢者の排泄状況は加齢の変化による消化、吸収機能が低下する。このことから便秘になりやすい。 Aさんの食事摂取量は7~8割程度であり、排便は②である。現在は⑪を内服しているが、腹部の不快感もなく便にも問題はないことから便秘ではないことが考えられる。しかし、 Aさんは⑧と訴えることや⑨、 ⑩があることからアルツハイマー型認知症の記憶障害が出現していることが考えられる。食事摂取量や水分摂取量が低下すると便秘を引き起こす可能性は高くなると考えられる。また、便秘といった身体的不調はアルツハイマー型認知症の失語、失認、失行といった症状の悪化につながると予測される。援助の方向性としては食事摂取、水分摂取を適切に行えているかを確認し、現在の排便状態を維持できるように観察する必要がある。
 また、記憶障害が出現した際に納得してもらえるように記入することを促すことや排泄したことを看護師に伝えてもらうように促すこと、排泄前はナースコールを押してもらうように促すことが必要であると考えられる。


 アルツハイマー型認知症により、運動麻痺がないにもかかわらず、単純な動作がスムーズにできない失行を引き起こすことがある。また、感覚障害がないにもかかわらず、対象を認知できず、部屋を間違える失認がある。高齢者になると膀胱が萎縮し、膀胱容量が少なくなることがある。そのため、頻尿になりやすい状態にある。頻尿は日中9回以上、夜間に2回以上の排尿がある場合のことである。 Aさんは尿意はあるが、尿回数が1日10回であることから頻尿である。高齢であることを踏まえると正常であると判断できる。現在Aさんは⑤、⑦から尿意はあるが、トイレの場所までわからないということや排泄動作では⑥であること③, ④であることからアルツハイマー型認知症の影響が出ていることが考えられる。今後の予測としてAさんのトイレの場所までを理解することができれば、Aさんは自身で排泄することができると考えられる。援助の方向性としては更衣を促すことやトイレのまで行く道をAさんにわかりやすいようにしておく援助が必要であると考えられる。また、心理的側面の援助として傾聴することが必要である。


身支度(情報)

①入浴は火・金の週2回
②シャワーチェアに座り看護師の見守りのもと自分で体を洗っていた。背中は看護師が洗っていた。
③自分から洗髪することはなく、看護師が声をかけると自分で洗っていた。 
④長女からは「あまり洗髪していないのか、頭髪からの匂いが気になるようになった。」 と話があった。 
⑤Aさん自身は「お風呂が好きで毎日入っていたの。体や髪の毛を洗うとさっぱりするし ね。」と話があった。 
⑥歯磨きはもともと1日2回していると話していたが、入院中はスタッフが朝・晩に声かけて洗面所まで同行すると実施できていた。
⑦入浴後は自分で着替えることができていた。 
⑧皮膚の乾燥がみられ、特に下肢の皮膚には、かき傷がみられた。
⑨ヒルロイドローション、レスタミン軟膏を自分から塗布することはなかったが、スタッフが入浴後声をかけると自分で塗っていた。 
⑩衣の上には長女からプレゼントされたカーディガンを着用しており、毎日肩まである髪を自分でとき、いくつか持参している髪留めを自分で選んでひとまとめにしていた。
⑪洗顔後は自分から持参している化粧水と乳液を丁寧に塗っていた。

身支度アセスメント

 加齢に伴い口腔内はさまざまな変化を伴う。身体機能が衰えて唾液に分泌量が減っている高齢者の口腔内は自浄作用が低下しているため、清潔に保つ力が減少してしまう。口腔内で繁殖した細菌や食物残潜を誤嚥することで肺炎を引き起こすことがある。また、加齢により歯茎がさがり歯の根元が露わになると虫歯ができやすくなる。Aさん⑥であることから口腔内ケアは行えていると考えら れる。しかし、口腔ケアが適切行われないと誤嚥の可能性や虫歯の可能性が高くなることから普段通りの食事摂取が行えないことや身体的不調により、認知症の悪化につながることが予測される。援助の方向性としては口腔ケアを促すことが必要であると考えられる。Aさんは持てる力は⑥であり、口腔ケアを行うように促すだけでよいと考えられる。 アルツハイマー型認知症により、運動麻痺がないにもかかわらず、単純な動作がスムーズにできない失行を引き起こすことがある。また、計画立てて順序通りに行えない遂行障害をひきおこすことがある。Aさんは更衣に関しては⑥から行えていると考えられる。①、②から入浴を行うことができている。しかし、③、 ④、⑤から洗髪をすることを忘れて いたり、洗髪をしたと認識している可能性があると考えられる。そのため、アルツハイマー型認知症の影響が出ていると考えられる。今後の予測として入浴することを忘れてしまったりなど清潔を保つことが難しく なる可能性がある。また、加齢に伴い筋力低下や防衛力低下により清潔を自ら保つことができない可能性がある。援助の方向性としてはAさんの持てる力は②、⑥であることから入浴の準備を促すことや洗う個所をAさん伝えるだけで自身で行うことができることから促す援助を行っていく必要があると考える。また、退院後も清潔を保つことができるような工夫をすることが必要である。

 高齢者は予備力・回復力が低下しており活動耐性が減少してしまう。高齢者の皮膚の特徴は皮下脂肪減少による弾力性の低下から傷つきやすい。また、脂腺から分泌されている皮脂の産生・分泌量も低下しているため、乾燥して掻痔感を伴いやすく、爪で皮膚を傷つけてしまうことで、湿疹や感染症を起こしやすい状態である。 Aさんは⑧、⑨から無意識のうちに皮膚をかいていることがあると考えられる。そのため、痛みや掻痛感は身体的不調の原因となることが考えられる。また、アルツハイマー型認知症の記憶障害や見当識障害の悪化につながることが予測される。援助の方向性は入浴方法の見直しや爪を短く整えるなどの援助をする必要があると考えられる。
 

 高齢者にとっておしゃれを楽しむことは他者とのコミュニケーションや活動への参加を円滑にする。心身の健康と社会とのつながりを保ち行動開始への準備性を高める役割をもち、人の生活全般に大きく関与している。 Aさんは⑩、⑪あるように自らの整容に気を遣っていることが考えられる。このことからAさんはおしゃれに対して楽しむことができていると考えられる。しかし、入院が長引いてしまったり、痛みや搔痒感によって身体的不調が出現すると認知症の悪化につながり、おしゃれを楽しむことが難しくなってしまう可能性が考えられる。おしゃれを楽しむことはAさんによって生きがいとなる可能性があると考えられる。援助の方向性としては退院後の状態をイメージできるように入院中から退院後について一緒に考える必要があると考えられる。Aさんのおしゃれに関心を持ち、話しかける援助をすることで意欲・関心の向上につながると考えられる。


コミュニケーション(情報)

①一般病棟から転棟した直後は表情がかたく、時々廊下に出てきて、「家に帰りたいんですけど。」と訴えてくることがあった。
②やや大きめの声で話しかけると会話はなりたっていたが、同室者とはあまり会話することはなかった。 
③病棟で行うレクリエーションには誘われると嫌がらずに参加しており、スタッフから声を掛けられると笑顔がみられていた。
④「人と話すのは嫌いじやないの。でも、私は人見知りだから。」と話していた。

コミュニケーションアセスメント

 アルツハイマー型認知症により言語面では物の名前が出てこない、言い間違える失語などが頻繁にみられる。 また、高齢者になると水晶体の弾力性の低下や内耳のコルチ器官や蝸牛神経伝達路の機能低下により聴力も低下する。現在Aさんは失語などはみられていないが、②であることから老化の影響が出現していると考えられる。また、①、②であることから他者とのコミュニケーションを積極的にとっていない状態であった。 Aさんの性格上④であり、現在は③であることから積極的コミュニケーションはとっていないものの相手の言ったことを理解する能力はあると考えられる。しかし、アルツハイマー型認知症の記憶障害が出現していることからその場で理解していても忘れてしまう可能性があると考えられる。今後の予測として高齢が進むにつれて視力や聴力が低下するとコニュニケーションが減り、自身の悩みや不安を訴えることができず、孤立してしまう可能性があると考えられる。このような状態が継続すると認知症の症状である記憶障害や見当識障害、失語の悪化につながると考えられる。援助の方向性としてはAさんのコミュニケーションの環境を整え、レクリエーションに参加するように促す関りや人的環境を整える必要があると考えられる。

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