日記:いつか思い出になる日まで

すみません、今日もシャニマスの話をしますね……本日実装されたイベント「アンカーボルトソング」の話です。



シャニマスの感想をただただ投げているアカウントでもちょっと投稿したんですけれど、個人的にはシャニマス3rdライブが千秋楽を迎えた翌日にこのシナリオが来て、とても救われたような気がしていました。だいぶ自分の感情に引き寄せた恣意的な読み方にはなっていると思うのですが……。

何故なら、自分の中でシャニマスの3rdライブという楽しかった時間が思い出になってしまって、それでもその先の今を生きていくこととどう向き合えばいいのか迷っていたから。昨日の日記でも少し書いたんですけど、今という時間が思い出に負けてしまいそうになるとき、どうしたらいいのかなと思ってしまう。思い出が素晴らしいものであればあるほど、その反動は大きいものなのかもしれない。

「アンカーボルトソング」では、アルストロメリアの3人それぞれでソロでの仕事が多くなり、ファンが3人一緒だった頃の方がすきだなとSNS上で呟くシーンがある。この気持ちがなんとなくわかってしまう気がする。

「昔はよかった」と口々に人は言う。青春を駆け抜けた日々の記憶の美しい側面が、心の中でいつまでも輝きを放ち続ける。そこにあったはずの苦労は大抵記憶から抜け落ちている。目の前の今が苦しい状況の時ほど、思い出に目を向けると眩しい。過去の最も美しい記憶に浸り続けていられるのなら、それが一番楽しいことかもしれない。現在の可能性がだんだんとわかり始めてくると、過去に向かう郷愁は比例するように膨らんでいく。思い出の輝きはきっと振り払うことはできない。ずっと心の中にあって、知らず自分を照らしている。その眩しさに、ときに目が潰れてしまうほど。

過去と現在を並列に比較することはできないのだ。「過去」が蓄積された記憶なら、「現在」とは精神に渦巻く感情で、両者はどうしたって性質が食い違う。

生きている限り、人生は終わることなく、人は歩き続ける。いつか思い出になる日まで、アンカーボルトの音は響く。

それにしても「思い出にならない」のモチーフに「完成しないビル」を当てるのすごすぎるね……。自分はずっと工事をしている渋谷駅や新宿駅や横浜駅を見ても、そんな美しい感情を持つことはできない。




桜並木だったり、大きな建物を見たりすると、「この景色を作った人がいるんだなあ」という過去に想いを馳せることがある。

特に植樹だったりすると、(詳しくは知らないけど)植えたその時には完成系の景色は見られないわけで、「いつかこの場所に綺麗な桜が咲くといいなあ」という想いを抱き行動した人には頭が上がらない。その木を植えた人の子孫が桜並木を歩くシーンが、きっとアニメだったら最終回になるはずだ。自分は歴史や人生を感じさせるものに弱い。

最近すこし競馬を見るようになったけれど、そこに積み重ねられた歴史のドラマを感じてしまうからこそ、胸に込み上げてくるものがあるのだと思う。全然競馬の知識はないのだけれど、連なった血統の歴史に想いを馳せると、その壮大さに自然と感情が昂ってしまう。関係者の方々の想いもたくさんある訳で、そこに絡まる運命の数は凄まじい。

よく考えると、いやよく考えなくても、人間にも歴史がある。人に歴史あり。自分という人間にも、両親がいて、祖父母がいて、たくさんの歴史がたどり着いた先に今がある。自分の人生に関わってきた人や出来事もたくさん存在する。……存在するのだが、そこに同じようなロマンを感じることは、あまりないような気がする。だれか一人の友人と巡り会うだけで、78億分の1の奇跡といってもいいのに、その奇跡を自分はあまり意識することがない。何故だろう。


またしてもシャニマスの言葉を借りるとすれば、「生きることは物語じゃないから」なのだと思う。烏滸がましいことではあるが、言葉を選ばず言ってしまうと、自分は何かに感動するとき、それを物語として見てしまっている。時に、自分にとって都合のいい物語を作り上げてしまう。美しい思い出だけを切り取って、綺麗な物語に組み上げてしまっている。それはきっと、対象とある程度遠い距離があるからこそ成り立つ観測なのかもしれない。本当に勝手なことではあるけれど。

翻って、自らの人生には、およそ物語になりそうもない失敗や愚かさが纏わりついている。余計なものがたくさん見えてしまって、物語どころではない。言葉にできるほど美しい人生ではない。一部を切り取って語ることもできるけれど、それはあくまで「思い出」でしかないのだ。誰かの人生にも、見えていないたくさんの事象が連なっていて、その全てを語ることなんて、きっとできやしないのだ。


だからこそ、他者の「物語」に最大限の敬意を込めて、幽谷霧子さんが客体に敬称を付するのだとしたら?その答えはわからない。霧子のことは霧子にしかわからないから……

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