日記:劇と曲

先週のライブ「我儘なまま」のDay2のアーカイブを観る。Day1の演劇パートは高校が舞台のようだったが、Day2は大学の様子を描いているようだ。サークルやバイトの勧誘をやんわりと断る三峰結華。そして有栖川夏葉と出会う。この2人がDay2における「メインキャスト」と「座長」の役割を果たしているとのこと。Day1でも同様の役割を負った市川雛菜と櫻木真乃が主となって物語は進んでいった。結華と夏葉の関係性がどのように展開していくのか。

ライブパートでは、桑山千雪の「Darling you!」にはじまり、Day1で初披露された緋田美琴の「Look up to the sky」、SNSでヒットした黛冬優子の「SOS」、アイドルらしい元気さと可愛さが詰め込まれた月岡恋鐘の「アポイント・シグナル」と、序盤から畳みかけるようなセットリストだった。その4人が披露する「Killer×Mission」は、ソロ楽曲とはまた違った表情を見せる。

MCを挟んで、Day1では不在であった園田智代子の「チョコデート・サンデー」が披露された。明るく可愛い等身大の恋心を歌った楽曲を見事な表現で歌いこなるパフォーマンスに圧倒される。続くソロ楽曲も、Day1と同様に、2021年の3rdライブやオンライン配信「Happy Buffet!」以来のソロ曲披露で、進化したパフォーマンスを見せつけられていた。西城樹里による「過純性ブリーチ」の、コールアンドレスポンスによる会場の湧かせ方は公演中随一であった。ソロ曲の中では、福丸小糸の「わたしの主人公はわたしだから!」とどちらかといったところだろうか。両者とも、Day1、Day2ではそれぞれ、メインキャストと座長の曲を除いたうちのラストを担っていて、楽曲の力もさることながら、客先を巻き込んでパフォーマンスを作り上げていく力のすさまじさを感じた。

演劇パートでは、夏葉が結華からの不穏な電話を受ける。気丈に振る舞いながらも大学での音楽活動が難航する結華。そんな彼女の心情を歌うように、モノローグから接続された「プラスチック・アンブレラ」は、Day1の表現とは異なる、心の重苦しさをまとわせたような歌い方、表情をしていて、その表現力に心を掴まれる。演劇の中に組み込むことで生じる文脈が見事に表現されていたように思う。

そのあとに斑鳩ルカの「神様は死んだ、って」が続く。壊れそうな痛みが響くような圧倒的な歌唱力と表現力で客席を飲み込んでいく。いままでの283プロにはいなかった強烈なキャラクター性で、会場を一気に塗り変えてしまうような力を感じる。白瀬咲耶の「千夜アリア」は、冒頭のセリフでまさしく観客を彼女の世界に「連れて行く」ようなカリスマがあった。風野灯織の「スローモーション」は、彼女の優しさが込められたような曲調と歌詞、それを表現する歌唱力に静かに感動していたし、和泉愛依の「Going my way」は力強いダンスと歌唱、そこから感じる彼女の意志の強さに心打たれていたし、かと思えば田中摩美々の「誰ソ彼アイデンティティー」でスタンドマイクを使った妖しげな魅力を放つパフォーマンスに魅了もされていて、このあたりは心が忙しかった。

ライブ初披露の「Shiny Stories」も歌われる。真乃、にちか、ルカによるそれぞれのアイドルとしての在り方が交わるような、相異なる表現が重なるさまが見えて、なんだか嬉しくなってしまう。それぞれが魅力的なアイドルで、異なる輝きを見せている283プロ。斑鳩ルカの加入により、その重層さは増し、そして彼女たちが一堂に会することによって生まれる意味も、また大きなものになっているような気がした。とにかく、この3人が一緒に歌っている姿が、なんだか希望のように思えるのだった。

「虹の行方」もなかなか披露が少ない楽曲なので嬉しかった。「Shiny Stories」と同じように、重なる光がさらに眩しく輝いていくような、複数人によって歌われることで魅力を増すように感じる楽曲だ。そして芹沢あさひの「星を目指して」は、劇中で結華のギターを聴いたあさひが、その感動そのままに歌い出すような構成で、彼女の好奇心や目指す先を歌った楽曲が、劇の文脈によってさらに異なる魅力を引き出されるように思えた。

演劇パートも終盤に差し掛かり、それぞれの道を歩みながら互いにリスペクトし合う結華と夏葉が歌う「シャイノグラフィ」は、どんな道にだって希望があるのだと力強いエールを贈るような、劇の文脈によってさらに強化された楽曲のメッセージ性が深く突き刺さってきた。そしてカーテンコールを超えて最後に披露された夏葉の「Damascus Cocktail」が、自分の道を力強く歩いていく意思を表現している気がして、ライブの締めくくりとして相応しい楽曲だった。劇を組み込むことによって、アイドル自身はもちろんのこと、楽曲やパフォーマンスにも新たな角度で光を当てたような「我儘なまま」。とても楽しかったし、叶うことなら今度はまたメインキャストや座長が異なる公演も見てみたいものだ。

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