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布団は棺桶

私は布団に入りながら祖父が亡くなった時のこと思い出すことがある

祖父はとても穏やかそうな顔で布団で眠っているようだった
生きているだろと思って手を握ってみる
とても冷たかった
あまり信じられなくて
生きてる間触ることもなかったデコを触ってみる
やはり冷たかった
ここに来る前日までは涙が溢れてどうしようもなかった筈なのに
ここに来てやたらと冷静である自分に驚いた
悲しみよりも穏やかさが私の心を占めていた

祖母が悠長に喋り出す
悲しくて悲しくてしょうがない筈なのに私達の目の前では決して泣かない
きっとあまりにも突然の事で受け入れられてないんだろう

数ヶ月会っていなかった祖母は少し毒舌になっていた

祖母は語り出す
前日のこと
出会った頃の話
娘達の話
みんなしみじみ聴いていた
母は泣き父は泣きそうになりながら必死で耐えていた
従姉妹の一族はとても淡々としていた

しばらくして葬儀屋さんが家に来て葬儀のプランの話になった
私は全然そういう事に関して無知だった為大人しく大人達が話し合っているのを見ていた

すごく話が円滑に進んでる
従姉妹一族のおじさんはまるで誰も死んでいなくて最近あったことを喋るかのように大きな声で話し合いに参加していた
最初は頼もしいなと思っていたのだが
違和感が凄い
だんだん私の心には怒りが込み上げてきた
人が死んでいるのに身内が死んでいるのに雑談をするかのようにラフに葬儀の話をするとは何事か
軽い軽すぎる
命をなんだと思っているんだ
祖父の命をなんだと思っているんだ
気が動転してるにしても度が過ぎる

段々と込み上げてくる憤慨の気持ちと悲憤慷慨
体が持たないなと思った
父の方を見てみる
同じく険しい顔をしていて今にもおじさんをナタで斬りかかりそうな勢いだ
とてもここで血筋を感じた
そりゃそうだろここでブチ切れぬで何が漢だとちょっと思ってしまった
私も気が気でなかった

葬儀の時
父が初めて聴くような声で膝から崩れ落ち泣き始めた
私が父をなだめている
母も泣き出した
それも私がなだめる
かなりの地獄絵図だった
私はこの数日間ですり減ってしまったのだ
嗚呼おじいちゃん私こんなに辛い思いしたくないよどうしてなのともう居ない祖父に泣きつきそうになった
それくらい辛かった

葬儀も終わり家に帰りご飯を食べお風呂に入り布団につく

もう疲れてしまった
何もかもに
眠りにつきそうになりながら
私は己の無力さと情けなさとで涙が溢れて止まなかった


今でも布団に入る時に時折思い出してしまい
私は布団で情けなさと共に悲しくなり
寝れなくなってしまうのだ




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