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自己肯定感を得る過程がひどかった

この話は、クソ長い。

小さい頃から自己肯定感が低すぎて毎日「おれは生きているだけで迷惑だ」と思い、思いはあふれて、板書用のノートの端に生存したくない旨を書き連ねていた。

いつからかはっきりとそう望んでしまうようになった理由は明白、発達障害だから。
主に遅刻、忘れ物、不注意など、学校のテストで測れない能力の低さから毎日注意され、怒られ、心はボロボロだった。「なぜ」をすっとばして死にたかった。いじめられることが多かったが、それよりも自分が、自分でよくわからないところで不出来なのが辛くて、足掻いてもどうにもならなくて、悔しかった。学力のテストは特に何もしなくても出来がよかったので親は疑問を持たなかったし、waisの結果から医者はなんも言ってこなかった。今思えば、精神医療の遅れも甚だしい。ひどくばらついた結果だったじゃないか。私より後に生まれてきた子供たちは、日本でこのような苦しみを味あわずにすくすく育って欲しいと切に願う。

アトモキセチンを60mg服用している今でも遅刻がひどくて、遅刻がひどくてもなんとかなる(絶対にクライアントが待ってくれる)仕事しか務まらない。職業選択の幅が猫の額よりアリの巣より狭い。今の仕事は天職と思えるほど楽しいが、今の仕事以外では能力も活かせなくてまたクビになるんだと考えると、心に夕立の直前のような重くじめっとした嫌な空気がただよう。

自我ができあがった瞬間から死にたかったほど自己肯定感が低かった私が、どのようにして持ち直し、深い希死念慮の霧から抜けられたのはなぜかというと、好きな男にボコボコにされたからだ。

自己肯定感を他者からの承認で補おうとした17歳の私はバカみたいなヤリマンだった。穴兄弟が同じ空間に5人くらい集まってしまったときは、さすがに笑うしかなかった。

メンヘラのヤリマンだった。ドン底でも体を求めてくれるオスがいるから、生きている価値がプラマイゼロになると信じて、どんな誘いも断らず、予定をうまく入れて、連続で1週間くらい男の家かラブホを渡り歩く日々だった。17歳という未成年ブランドを利用してやりたい(やられたい)放題だった。スケジュールノートには日付の横にヤった男の名前を書き込んだ。まだ実家の棚にあるだろうそれを私はデスノートと呼んでいる。

なんとなく、若い男よりおっさん。細身よりデブのほうが気に入った。性経験を積んでいるほうが上手いし、傷つけないように触れてくれるし、歳上のほうが話が面白いし、落ち着いてるし、デブの方が抱き心地がいい。圧倒的に年齢差があると向こうがリードしてくれて気が楽だし。ヤリマンでなくサセマンに徹した。

ただ、ふた周り以上も歳上の男性と2人きりになることに、なんの恐怖感も抱かなかった自分が怖い。

23,24,25...くらいまでは数えていた気がするが、人数がはっきりとわからなくなってきてからは、ソレが果たして気持ちいいのかどうかも分からなくなって、ただデスノートを埋める作業と化していた。

そうして気ままにオフパコ活動、夜中にTwitterなどして、ある男とDMでやり取りしていたら「会いたいから始発で来てよ」ときた。求められたら行くしかない。当時の私は考えることが面倒で、ただ流れに乗ることで命を続けていた。立ち止まると死にたくなってしまうから。横浜から吉祥寺のオフパコハウスまで、2.5時間くらいかけて行った。電車代が……すごかった。

初対面のオフパコ男は、ちんこが長くてまっすぐだった。子宮が気持ち悪くなるくらい奥まで届いてしまうのが難点だ。というか私の趣味に合わない、大学生で痩せ型の塩顔オタクで、骨格などから名付けるなら『ゲーミング羽生結弦』といった感じだ。

ゲーミング羽生結弦はカップラーメンの空き容器を部屋中に散乱させていたので、まず汚えし、そんな食事じゃ健康に悪いぞと言ったら、料理が苦手らしく、私が豚汁を作ってあげる運びとなった。記憶があやふやで詳しく思い出せない部分もある。隣のスーパーで食材を調達し、カップラーメンのお湯沸かしにしか使ったことがない片手鍋で豚汁を作り、一緒に食べた。彼は、私の豚汁がめっちゃうまいと褒めてくれた。そういえば、私がメスであること以外で人に褒められたのは初めてだ、と思った瞬間に涙が溢れて止まらなくなった。嬉しかったのだ。私のセックス以外のこと、家でできるよう訓練していた料理のこと=努力を認めてくれた。相当長いこと誰にも言葉で褒められていなかったし、料理のことで褒められたのは初めてだった。急にその人が愛しくなって、あと東京暮らしって羨ましいな〜と思って、居候することにした。未成年のバカがやることって、本当にいいよね。

私は実家とゲーミング羽生結弦の家を往復して荷物を引き上げ、徐々に引っ越しを完了してしまった。かなり強引に住み着いてしまったが、ゲーミング羽生結弦が喜ぶことをなんでもしてあげることで、好きになってもらえば、居着いても大丈夫だと思った。料理、洗濯、掃除、セックスなど何でも、彼がよりよく生きるための助けになろうとした。彼の好みに合わせて服装すら変えた。好きだったロリータをやめて全身ジルスチュアートで固めた。それは、彼のことが本気で好きだったから。たぶん愛していたんだと思う。
彼はゴリゴリにアダルトチルドレンで、私の愛情行動への返し方がよくわかっていなかったし、ひどいアスペルガーだったが、そういう不完全なところが愛おしかった。

ただ、アスペルガーを相手するのが死ぬほどつらかった。
カレーが好きだというから、私の好きなトマト缶を追加するレシピで作ったことがある。ひと口食べて一言「俺、トマト嫌いなんだよね」と。悲しくて、一生料理したくなくなった。
「君は○○ちゃんに比べたらブスだけども〜」他人と比較するなんてひどすぎる。

そういうことを毎日言われると、どれだけ好きでもさすがに疲弊してくる。

あるとき、しばらく会っていない友達(貫通済み)と飲もうと出かけたら、彼がついてきて、その友達の顔を見て、なぜか怒られた。

お前には価値がない。俺より汚くて気持ち悪いおっさんとセックスして喜ぶような汚い女。気持ち悪い。二度と近寄るな。汚いから。

激昴した彼は、私を全力で蹴り飛ばしてきた。普通に痛かった。その時は何も言えなかったが、今思えばセックスなんか人の勝手だし、よく飲むくらい愛着があって彼より付き合いの長い友達らのことを「汚くて気持ち悪い」と形容されたことに私は怒りを覚えた。

そういったことや一向に改善しようとしないアスペムーブが辛くて辛くて、別れることにした。といっても半年同棲していただけで恋人でもなんでもないが。LINEで繋がってる彼女がいるとか言って、最後まで付き合ってくれなかった。

私は、荷物をまた徐々に運び、実家に帰った。
それからも毎週会いたくなってしまうという未練の大洪水で大変だったが、半年で完全におさまり、彼のことは完全に嫌いになった。

アスペルガー語でのハラスメントがひどく、改善しようともしてくれない。面と向かってブスと言ってくる。主にそれ。外見をほとんど否定された。
大人になってから思うのだが、礼儀がなってないやつは印象が悪い。彼の口から「〜〜ください」「〜〜いただけますか」など謙譲語や尊敬語を聞いたことがほぼない。人見知りが激しいとかではなく本当に礼儀がなっていなくて、「他者に尊敬を持って接する」という考え方がない。あげく生活面もひどいという、褒められるところがちんこの形しかないクズ人間だ。

――――――

ブスを治すために、私はダイエットに励んだ。メイクや服よりもその素体を良くすることに専念した。一般的な価値観で綺麗な感じのするお姉さんになろうとした。ついでに筋トレは鬱に効くという迷信を信じていて、3ヶ月ほど毎日ジョギングと筋トレを続けた。そうしたらなんと、あ〜っという間にスタイルがよくなって、なぜか鼻が高くなって、顔の輪郭も綺麗になった。まさに、見違えるほど。

私はめちゃくちゃ可愛くて綺麗だと心の底から思うことができるようになった。自分で設定したトレーニングの手順とメニューを毎日こなすことができた事実がわかりやすく自信に繋がり、まったく死にたくなくなった。いや本当に、あの毎日押し寄せてきた希死念慮は何だろう。ぜんぜんわからない。
私は昔と違って毎日外に出られるし、可愛くてスタイルが良くておしゃれで、そこそこ頭がいいし、春から美大に復学するのだ。人生ここから始まるんやな。ワクワクしか無いぜ。イェ〜〜〜〜イ!

いや待てよ?こんなに可愛くて綺麗で頭はそこそこ、病気だが頑張って治療に励んでいる、生活能力はある、人に優しくする、献身的な女の子……を、さんざんコケにしてきたあのゲーミング羽生結弦は、なんなんだ?あれは本当になんだった?あのアデノイド野郎にブスとか言われて傷ついて、好きになってもらえないのに食事とマンコを提供し続けた、あの時間はなんだった?

私はたかが豚汁を褒められたくらいでどえらい感動してしまったが、私にはそれ以外にも、良いところがたくさんあるじゃないか。

そもそもの話、人に価値がないなんてことはないじゃないか。人はみな生まれたままで価値ある生き物じゃないか。死にたいのも、自分が無価値と思うのも、鬱病の症状だった。

私はもう死にたくなんてならないでいい。価値ある人間なのだから、ないものを補おうとセックスしまくる必要はない。心にかかっていた重たい霧が一気に晴れたようだった。

今でも抑鬱症状がひどくなる時はよくあって死にそうにはなるが、死のうとは思わない。生きて、周りの人をめいっぱい肯定して、楽しく過ごしたい。それが私の根源的な望みで、生きるモチベーションだ。

今は自分がやりたいと思った人と自分の意思でセックスしまくっている。気持ちいいし、心底楽しい。

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