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【ボツ企画】教会学校だより別冊5月号

教会でボツになった「別冊教会学校だより」のサンプルを供養する企画です。

【聖書クイズ】

正解はのちほど。

■やさしいレベル

イエス様はたくさんのしるし(奇跡)をおこないましたが、「最初のしるし」と書かれているのはどれ?
a) 空を飛んだ
b) 結婚式で水をぶどう酒に変えた
c) 石に賛美歌を歌わせた

■くわしいレベル

イエス様の「ガリラヤに来て二回目のしるし」と書かれているのはどれ?
a)役人の息子の病気を癒した
b)会堂で片手の萎えた人を癒した
c)ペトロのしゅうとめの熱病を癒した

■おたくレベル

日本に実在する高校はどれ?
a)聖ペトロ学園高等学校  c)聖パウロ学園高等学校
b)聖ペトロ学院高等学校  d)聖パウロ学院高等学校

【アート】ヤン・リーフェンス『聖パウロ』

ヤン・リーフェンス『聖パウロ』1625年。カナダのクイーンズ大学アグネス・エザリントン・アートセンター所蔵

5月も「ローマの信徒への手紙」を読むことにちなんで、ヤン・リーフェンスの『聖パウロ』をご紹介。
ちなみにリーフェンスは、本作「聖パウロ(St.Paul)」のほかとは別に「使徒パウロ(Apostle Paul)」という作品もあります。

作者のリーフェンスはオランダの画家で、師匠ピーテル・ラストマンの工房でレンブラントとともに修行しました。
ただ、リーフェンスがラストマンの元にいたのは10歳からの2年間で、12歳の時にはもうプロの画家として活動しています。この『聖パウロ』は1625年頃の作品なので、1607年生まれのリーフェンスが18歳の頃の作!

その後、20代の頃はレンブラントと共同で工房を持ち、二人の競作が24点が伝わっています。
そう思ってみるとこの『聖パウロ』は、どことなくレンブラントの光と影の使い方を思わせるような?
その後リーフェンスはイングランドなどで宮廷画家として活躍するなどしました。

書物と剣はパウロのアトリビュート(*)ですが、ペンを走らせているのはどの町の教会にあてた手紙を書いているのでしょうか。

剣を本(聖書)の下に配置したのは、リーフェンスの平和への祈りかもしれません。
1625年というと、オランダなどネーデルランド諸州(プロテスタント)は、宗主国スペイン(カトリック)との80年戦争(1568-1648年)の最中です。しかも12年間の停戦が破られ、1621年に戦争が再開されたばかり。このプロテスタントとカトリックの争いは、神聖ローマ帝国の30年戦争(1618-1648)と絡んでヨーロッパに拡大していきました。
宗教だけが問題の戦争ではありませんが、キリスト教徒どうしが戦い続けたこの時代です。もしかしたらリーフェンスは、書物の山の下に剣を描くことで「剣を神の言葉に従わせなければならない」と言いたかったのかもしれないと思うのです。

※アトリビュートとは、宗教画などで「その人物が誰であるかを示すアイテム」のこと。パウロのアトリビュートは書物(聖書記者であることを示す)と、剣(斬首で殉教したことを示す)。

■作者データ

ヤン・リーフェンス(日本では「ヤン・リーヴェンス」とも)
1607-1674年。
オランダ。

■作品データ

制作:1624-25年。
板に油彩。
カナダのクイーンズ大学アグネス・エザリントン・アートセンター所蔵。

【聖書の人物】使徒シモン・ペトロ

集英社「学習漫画・世界の伝記」第13巻『キリスト』より
シナリオ・竹村早雄、漫画・森有子、監修・古屋安雄

使徒アンデレの兄弟シモンは、アンデレから「わたしはメシアに出会った」と言われて、イエス様に紹介されました(ヨハネ福1:41-42)。
ということでアンデレ同様にシモンも洗礼者ヨハネの弟子だったと考えられます。
その洗礼者ヨハネは、権力者によって処刑されました。

シモンは、十字架へ進むイエス様を止めようとして叱られたり(マタイ16:22)、ゲツセマネでイエス様を守って剣で戦ったら止められたり(ヨハネ福18:10)したけど、「イエス先生まで殺されてたまるか!」だったのではと思うのです。
イエス様も、もう少しペトロの気持ちをわかってあげてほしい。

シモンという名は「主は聞いてくださる」という意味(創29:33)。
イエス様は初めてシモンに会ったときに「岩」(ヘブライ語でケファ、ギリシア語でペトロ)と呼びました。それで新約聖書の中でも、ケファと呼ばれたりペトロと呼ばれたりしています。
そして、シモンを「岩」と呼んだイエス様はあとで「シモンという岩の上にわたしの教会を建てる」と伏線回収します(マタイ16:18)。

「イエス様はシモンの上に教会を建てた」ということで、カトリックではペトロを初代ローマ教皇、正教会などでは初代アンティオキア総主教としています。
そしてサンピエトロ(聖ペトロ)大聖堂は、ペトロの墓の上に建てられているのです。1968年には、サンピエトロ大聖堂の地下墓所から発見された遺骨について「納得できる方法でペトロのものだと確認された」と発表されました(「納得できる方法」は未詳)

ペトロの著作

伝統的に、新約聖書の『ペトロの手紙一』『ペトロの手紙二』の記者と考えられています。
『マルコによる福音書』はマルコがペトロから聞いたことを記録したものだという話を、歴史家エウセビオスが伝えています。

『ペトロの黙示録』という文書もあります。ダンテの『神曲』はこの『ペトロの黙示録』が元ネタだそうです。(念のためですが『神曲』は「しんきょく」ですよ。「かみきょく」じゃなくて)
ただ、これはこれはのちの時代に書かれた外典です。

その後のペトロ

ペトロは妻を連れて宣教旅行していたようです(コリント一9:5)

2世紀の終わり頃に教会に伝わる伝承を集めた『ペトロ行伝」によると、ペトロはローマへ宣教しましたが、迫害が激しくなったローマを脱出します。ところがその途中にアッピア街道で、天に帰ったはずのイエス様とすれ違ったのです。
ペトロが「主よ、どこにおいでになるのですか(ラテン語で「クォ・ヴァディス・ドミネ」)」と尋ねると、イエス様は「あなたが私の民を見捨てて逃げるなら、私がローマへ行ってもう一度十字架にかかろう」と答えたといいます。
これでペトロは自分を取り戻したかのようにローマへ引き返し、そして殉教していきました。その際、「イエス様と同じ十字架にかけられる価値は自分にはない」ということで、頭を下にした逆十字を希望したと伝えられています。それで横棒が下にくる「逆さ十字」が「聖ペトロ十字」と呼ばれています。

映画『クォ・ヴァディス』はこの伝承をもとにしています。

中村光『聖☆おにいさん』より。講談社。
聖ペトロ十字(さかさ十字)のアクセサリー

シモン・ペトロにちなんだ人名など

ピーター・パン
ピーター・アーツ(格闘家)
『アルプスの少女ハイジ』ヤギ飼いのペーター
ロシアのピョートル大帝
などがペトロにちなんだ名前です。ピョートル大帝がロシア帝国の首都として建てたサンクトペテルブルク(聖ペトロの町)もペトロにちなんでいるといえますね。

「およげたいやきくん」の子門真人(しもんまさと)はクリスチャン。
ポール・サイモンはシモンの英語読み。
漫画家の柴門ふみ(さいもんふみ)はクリスチャンというわけではなくポール・サイモンにちなんだペンネームとのこと。

【キリスト教な祭り】聖霊降臨祭

ペンテコステは「聖霊降臨という意味」というのは間違い。
ペンテコステは「50番目、50日目」という意味です。
もともとはユダヤ教で過越祭から50日目の五旬祭(使徒2:1,20:16)のことです。
旧約聖書では七週祭と呼んでいます(出エジプト34:22ほか)「50日目」イコール「7週後」ということですね。

「ペンテコステの意味が聖霊降臨」なのではなく、「ペンテコステ(五旬祭)の日に聖霊降臨のできごとがあった」ということを記念しています。
それが主の復活(イースター)から50日目(七週後)であることから、キリスト教では聖霊降臨主日のことをペンテコステと呼んでいるのです。
五旬祭(七週祭)は、「過ぎ越し祭から50日目」でした。

だから教会のはじまりのころは、ユダヤ教の五旬祭とキリスト教のペンテコステは同じ日でした。
その後にキリスト教が復活祭の日付の決め方を変更して過越祭と日付がズレるようになったため、五旬祭(過越祭から50日目)と聖霊降臨祭(復活祭から50日目)も日付がズレるようになりました。

使徒たちが五旬祭の日に集まって祈っていたときの様子(使徒2:1-2)から、イタリアやフランスの教会では「炎のような舌」を象徴してバラの花びらをまいたり、トランペットを吹き鳴らして「激しい風が吹いてくるような音」を表現したりするそうです。

【聖書クイズの答え】

■やさしいレベル

bが正解。カナという町での結婚式で水をぶどう酒に変えたのが「最初のしるし」でした(ヨハネ2:11)

■詳しいレベル

aが正解。役人の息子を癒したのが、ガリラヤでの2回目のしるしとあります。ヨハネ福音書4:54。

■おたくレベル

cが正解。東京都八王子市に、カトリック系の「聖パウロ学園高等学校」が実在します。1948(昭和23)年創設。

note版の編集後記

聖パウロ学園高校の関係者の方、無断で名称を使ってすみません。
中村光様、講談社の関係者の方、集英社の関係者の方、無断で引用してすみません。

教会内で配布している「教会学校だより」の楽しい別冊をつくろうという話で、たたき台として作成したサンプルです。
ネットで公開するにあたって加筆訂正削除などしています。

4月号のサンプルも公開しています。

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