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納得のいかない"おどろき"

僕はチーズが苦手だ。

こう言うと大抵の人に驚かれる。あんなに美味しいのに、と。チーズが食べられないことを話すと二言目には「チーズを食べられないなんて人生損している」とオーバーなリアクションを取ってくる。これ程までに大きなお世話があろうか。そもそも食べたいと思ってないし美味しいとも感じないので何も問題がない。チーズ以外のものを食べてちゃんと人生を謳歌している。


むしろ僕は、チーズが食べられないことをここまで驚かれること自体に驚いている。

好き嫌いが分かれる食べもの、という特徴は存在する。僕はそれを「味や匂いが強くクセがある」ものだと、34年間の人生でいろんな人の好き嫌いを聞いた中で結論づけた。パクチーがいい例だろう。僕はパクチーが好きだが、嫌い・苦手だという人が多くいることは容易に想像できるし、パクチーが苦手だと言われても驚かないだろう。ただ素直に受け止め、フードの注文に少し気を使うだけだ。

ブルーチーズまで行かずとも、普通のチーズも匂いは強めだしクセが強い。チーズは好き嫌いの分かれる食べものの特徴をしっかりと満たしているはずだ。チーズは好き嫌いの分かれる食べものではないのか??小さい頃に食卓に出たスライスチーズを少しかじった時から、これは人を選ぶ食べものだと信じて疑っていない。

しかしどうやらチーズが嫌いな人間は"特殊"らしい。

それゆえ、1つの苦悩がある。
僕はファーストフードの期間限定メニューが好きだ。王道メニューより美味しいことは正直少ないのだが、必ず期間中に一度は食べて試してみたくなる。ところが、特にハンバーガーチェーンは期間限定メニューにチーズがほぼ必ず入ってくる。チーズは万人が好きな食べものだと判断しているからだ。過去のキャンペーンでは4ヶ国をイメージした様々なハンバーガーをお楽しみいただけますと謳いながら、そのほとんどにチーズが入っているのだ。チーズは世界を覆い尽くし、料理というローカル文化の根幹まで支配してしまったのか。

チーズ抜きで頼めばいいじゃんという指摘はナンセンスだ。チーズを抜こうと考えたこともない方々はご存知ないかもしれないが、チーズを抜いても値段は変わらない。ファーストフードでチーズ分の金額差は思っている以上に大きい。しかもチーズ抜きオーダーはよく店員に忘れられる。安心してカブリついたらチーズの匂いと食感が頭を抜けていく時の絶望感がわかるだろうか。このアクシデントがデリバリーで発生した場合はリカバリーが完全に不可能になる。ソースを犠牲にチーズを剥がし、包み紙にこすり付ける。もはや普通のハンバーガーと変わらなくなってしまったシロモノをまた重ねて口に運ぶことになる。チーズ嫌いがマイノリティーであるばかりに起きた不幸だ。

チーズが嫌いな人はマイノリティーでも一定数いることを示していかなければ我々の安寧は訪れない。足りないのは発信力であると、会ったことのない同胞たちに伝えたいと思っている。


ちなみにチーズを使っていてもピザは食べられる。むしろ大好きだ。
「あれはトマト料理だから」と理由を説明するが、ここでも大抵驚かれる。


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