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AIスピーカーの覇者はラジオかもしれない話

先週月曜日にGoogle Home Mini発売と早速ラジオを聞ける機能のリリース、翌火曜日には各デベロッパーのAction(アプリのようなもの)がリリースされ、ようやくプラットフォームとして動き出したGoogle Home/Assistant。

小さくても便利。Google Home Mini 登場 / Google Japan Blog

検索的な機能だけでなく、音楽が聴けるようになったり英会話のレッスンも出来たり…皆さん使ってみましたか?Homeがなくてもスマホ上のGoogle Assistantアプリで試すことが可能(一部Action除く)なのですぐDLしていじってみましょう。今はまだAction対応しているのは10社程度ですが、アプリ業界同様これから参入企業は増え、出来ることも増えていくでしょう。

私も散々使い倒してみました。そこで結論、この世界を制するのはラジオかもねと考えましたので以下書いていきます。

■なぜラジオは迅速に対応を進められたか

私は前職広告代理店で営業としてラジオ局さんを担当していました。
そこで抱えていたのがそもそもラジオを聞く方法を知らない人が多いという課題でした。私より上の世代では想像できないかもしれませんが、ラジオ局には実際に「ラジオってどうやって聞くんですか?」と問い合わせが来るほどだったのです。そのためキャンペーンとして安価なラジオそのものを配るラジオ局もありました。

そんな時に出てきたAmazon Echo、Google Homeといったスマートスピーカー(AIスピーカーと呼称しているところもありますが実態を示しているのはこちら)。基本的に音声"しか"扱えない特性から、ラジオを対応させようという話が進んでいったのだと思います。

放送/配信の出口を増やしたい想いがずっとあったラジオ局にとっても渡りに船だったのでしょう。radikoという配信プラットフォームに既に一元化されていたのも大きかった。radikoがスマートスピーカーに対応するだけで、radikoに対応するラジオ局は技術的に聴取が可能に。個々の放送局で対応が必要であったらリソース的にも対応完了は出来なかったはず。こうして一気に「Google Homeでラジオが聞ける環境」が整いました。(Amazon Echoでも出て欲しいなー)

■ラジオが合うワケ

Google Homeに限らずスマートスピーカーを使ってみるとわかりますが、操作するには、自分で指示を純粋想起して話す必要があるため、すぐ何していいかわからない状態に陥りがちです。とりあえず説明書にあるように天気を聞いてみたりしますが、音楽を流して2曲ぐらい聴いて終了が箱を開けた日のよくあるパターンでしょう。つまり音声操作=ディスプレイのないデバイスに慣れていない私たちは、すぐに何をしていいかわからなくなってしまうのです。

メディアやデバイスは、能動的か受動的かで分けられることがあります。目的を持って操作する検索エンジンは能動的で、目的を持たずとりあえず見るテレビやSNSは受動的なものに分類されます。スマートスピーカーはここに問題があります。あえてスマホを手に持たずに操作できるため、音声は受動メディアに向いているものの、現状では圧倒的な能動操作を必要としてしまうのです。ソファーに深く腰かけたままで、スマホをわざわざ操作せずにいろんなことが出来ることがキモであるのに。

そんな状況の中、現状のスマートスピーカーでも受動的に聞き流せるものが音楽とニュースです。特にニュースは(スピーカースペックも関係ないので)相性がよく、Amazon Echo/AlexaもFlash Briefing Skillとして他のSKill(アプリ)とは切り出しています。

Flash Briefing Skill:RSSの読み上げSKill。ユーザーが登録しておくと「Alexa、今日のニュースは?」等と聞くだけで複数Skillを跨いで新強いニュースを読み上げる。音声版RSSリーダーが近い。

では他のニュースプレイヤーも有利なのでしょうか?

音声は情報伝達がとても非効率です。私たちが慣れ親しんでいるディスプレイは短時間で非常に多くの情報を伝えられます。ディスプレイありきで作られてきたサービスの場合、同じ情報を音声で聞くと遅く感じてしまいます(コールセンターの自動音声案内にイライラするのと似た感覚)。
例えばWeb通販はディスプレイが普及しているからこそ現在の形で成立したビジネスです。同じことを音声でしようにも、比較検討にまったく向いていません。その証拠に、Amazon Echo発売当初のアメリカのSkillは購買ものは過去と同じものを買うリピート注文が主体でした。
一方、比較検討せずに購買させるTVショッピング的な通販手法。これはラジオが大得意な分野です。つまり、ずっと音声だけで情報を伝えてきたプレイヤーが強くなると考えます。

TBSラジオのコーポレートメッセージは「聞けば、見えてくる」です。音声での情報伝達に特化しているラジオが、スマートスピーカーの覇者となる、スマートスピーカー市場を牽引していく存在になると期待しています。

■今後の課題

今後の課題は検索・レコメンドと認知拡大にあります。スマートスピーカーでターゲットにしていくのは番組表に馴染みのない人たち。番組タイトルではなくそこで何が話されるか、それが自分にとって聞きたいプログラムかどうかが問われます。ただ選局させて聞き流されているだけでは限界があり、Web上の広がりも難しい。自分の聞きたい・興味のある番組がどれで、いつやっているか(願わくば放送時間になったら勝手に流し始めて欲しい)をどうやってリーチしていくか?は目の前にある課題でしょう。ディープな話が聞けるラジオこそ単純なパーソナリティやタイトルの一致だけではない、細かなターゲティングが必要です。これは音楽も当てはまります。「アニソン流して」でワンピースを流してくるサービスとはお友達になれるわけがありません。

この追い風をラジオはどう使っていくのか。
とても楽しみです。


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