川崎病とアレルギー体質

川崎病は主に小児でみられる原因不明の全身性の血管炎で, 1967年小児科医の川崎富作によって最初に報告された(*1).
明らかな原因は不明であるが患者数は年々増加傾向にあることが知られており, 最新の2018年の患者数は17364人であった(*2).


川崎病の病因については様々なものが提示されている. またそれだけでなく様々な要因との関連性も指摘されており, その1つとしてはアレルギー体質が挙げられる.


川崎病とアレルギー体質については古くから指摘されており, 代表的なものとしては1988年のBrosiusらの報告がある(*3).
日本においては1997年に報告されたMatsuokaらの研究がある. この研究では対照群と比べて川崎病に罹患した児ではアレルギーの家族歴を有する割合が高かったほか, アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎の発生率が高い可能性も示唆されている(*4)

また近年になり川崎病とアレルギー体質との関連性を指摘する報告は増えており, 台湾での複数の研究でも川崎病罹患児ではアトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎といったアレルギー性疾患の発症のリスクがより高い可能性が示されている(*5, *6). ちなみにHwangらの報告では男児でこれらの傾向は著明であった.

逆にアレルギー性疾患がある児における川崎病のリスクについて検討した研究もあり, そちらでもアレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎のある児では川崎病発症のリスク増大と関連している可能性が報告されている(*7).


川崎病とアレルギー体質がどのような理由で関連しているかははっきりしていない.
川崎病では様々な免疫機能の異常が起こっていることが示されており, こういった免疫機能異常がアレルギー体質やアレルギー性疾患の発症と関連している可能性は1つ考えられている.
また早期の環境による影響の可能性も考えられている. Fujisawaらの報告ではその他の家族構成員が少ない児や都市部で出生した児ではより川崎病を発症するリスクが増大していたことを報告している(*8).
これらの因子はアレルギー性疾患とも関連性がありそうなものであり, こういった要因が影響しているかもしれないが詳細は不明である.


様々な報告はあるものの, 現時点では両者の関連性については明確ではない.
また現時点では関連性についての意義も明確ではない. しかし研究が発展することにより何らかの介入に影響を与える可能性もあるため, 今後さらに知見が深まることを期待したい.


<参考文献>
*1 川崎富作. 指趾の特異的落屑を伴う小児の急性熱性皮膚粘膜淋巴腺症候群 :自験例50例の臨床的観察. アレルギー 1967; 16: 178-222.
*2 第25回川崎病全国調査成績
*3 Brosius CL, Newburger JW, Leung DY, et al. Increased prevalence of atopic dermatitis in Kawasaki disease. Pediatr Infect Dis J 1988; 7(12): 863‐866.
*4 Matsuoka S, Tatara K, Kuroda Y et al. Tendency toward atopy in Kawasaki disease. Eur J Pediatr 1997; 156(1): 30-32.
*5 Hwang C, Hwang Y, Liu H, et al. Atopic diathesis in patients with Kawasaki disease. J Pediatr 2013; 163(3): 811-815.
*6 Kuo HC, Chang WC, Yang C, et al. Kawasaki disease and subsequent risk of allergic diseases: a population-based matched cohort study. BMC Pediatr 2013; 13: 38.
*7 Wei CC, Lin CL, Li T, et al. Increased risk of Kawasaki disease in children with common allergic diseases. Ann Epidemiol 2014; 24(5): 340-343.
*8 Fujiwara T, Shobugawa Y, Matsumoto K, Kawachi I. Association of early social environment with the onset of pediatric Kawasaki disease. Ann Epidemiol. 2019; 29: 74-80.

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