触って熱っぽいというのはホント?

子どもが熱を出すかどうかは特に気になるポイントの1つです.
発熱は, 特に高熱になると元気がなくなったりして, 水分や食事を摂らなくなってしまうことがあります.
また発熱があると元気であっても保育園などに預けることもできなくなってしまいます. よって子どもの発熱は社会的な影響も小さくないです.


ところで子どもが熱を出しているかはどうやって気づきますか?
例えば, 子どもがいつもよりも元気がなさそうなときに「熱があるかも?」と疑うことが考えられます.
その場合に, すぐに体温計を使って体温を測るかもしれませんが, とっさに体を触って熱っぽいか判断することも少なくないのではないでしょうか?


ところで, 子どもの体を触って熱っぽいか判断するのは正確なのでしょうか?
もし熱っぽいと思った時には体温計で体温を測るでしょうから, あまり正確ではなくても困ることは少ないと思います.
一方で, もし熱はなさそうと思った時, 実際には発熱している場合には発熱を見逃してしまうことになります. こちらの方が少し不利益はあるかもしれません.

この子どもの体を触った時の判断がどの程度正しいかについてはいくつか研究が行われています.

子どもの母親と医学生が, 子どものお腹やおでこなどを触って熱があるかどうかを判断し, それがどのくらい正確だったかを調べた研究があります(*1).
その研究では
・熱があると思った → あまり正しくなかった
・熱がないと思った → ほぼ正しかった

という結果が示されました.
この研究はザンビアで行われたものであり, 体温計が普及している日本とはやや条件が違うかもしれません. なぜなら日本の場合は, 触った感覚と体温計で測定した体温を照らし合わせる経験がより豊富であると考えられ, より精度は高いかもしれないと推測されるからです.
実際この研究でも, 子どもの母親よりも医学生の方が少し正確性は高かったようです(ただし医学生が経験豊富かどうかはわかりませんが)

他にもいくつかの研究があり, 多少結果に差はありますが基本的には同じような結果が得られていたます(*2).

従って,
・熱があると思った → 体温計で体温測定
・熱がないと思った → 発熱はないと判断して経過観察
という方針は理にかなっているようです.


子どもの体を触って熱があるか判断する時, どうやったらよいのでしょうか?
まず触る場所ですが, 一般的にはおでこや首, おなかなど色々な場所が使われていると思います. 触る場所の違いについてはあまり検討されていないですが, おそらく違いはそれほどないと思われます(*3)
ただ, 1か所触って判断するよりも複数の場所を触って判断した方が少し正確性は増すかもしれません(*3)
また手のひら側で触るのと手の甲側で触るのだと, 手のひら側で触った方がよさそうです(*3)


ときどきこういったケースがあります.
「昨日から熱っぽかったけど, 体温計では測らなかった. 今日の朝になっても熱っぽかったから体温を測ったら38.6℃あった」
こういった場合, いつから発熱していたかは判断するのは難しいです.
特にインフルエンザでは発熱を発症時期の指標としていて, 発熱からの時間が検査や治療の方針に影響を与えます.
インフルエンザの検査であれば, 発熱時間を実際よりも長く見積もってしまうと良くないタイミングで検査を行ってしまうかもしれません.
「熱っぽかったから, そこから熱があったんじゃない?」というのは確かにそうかもしれませんが, 実際のところは「あったかもしれないし, なかったかもしれない」としか言いようがなさそうです.
ですので一手間かかるのは承知していますが, 「熱があるかな?」と思った時には体温計で測定した方がよさそうかな, と思います.


まとめ

・触って熱があると思った時はあまり正しくなさそう
・触って熱がないと思った時はほぼ正しそう
・触る時にはいくつかの部分を手のひら側で触って判断すると少しいいかもしれない

<参考文献>
*1 Whybrew K, et al. Diagnosing fever by touch: observational study. BMJ 1998; 317(7154): 321.
*2 Teng CL, et al. The Accuracy of Mother's Touch to Detect Fever in Children: A Systematic Review. J Trop Pediatr 2008; 54(1): 70-73.
*3 Odinaka, et al. Accuracy of Subjective Assessment of Fever by Nigerian Mothers in under-5 Children. Niger Med J 2014; 55(4): 338-341.


記事が気に入ったりしていただけたら、サポート頂けると幸いです。 今後の記事の資料収集の費用にいたします。