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【短編小説】

最近、変な夢を見る。

ずっと、
綺麗なお姉さんが私に話しかけている夢。

いつもは夢なんてぼんやり覚えてるか、
見たけど完全に内容を忘れてるか、

その2択なのに、、、。

どうやらこのお姉さんは特別らしい。

初めは黙りを決め込んでいたが
段々と話すようになり、

「今日は学校の給食、カレーだったんだ」

「へぇ、カレーってなんかいい響きね。」

「え、お姉さん、まさかカレー食べた事ない?」

「んー、遠い昔に食べたことあるかも、?」

今では私が話題をふったりしたり。

いつしかお姉さんとの時間は特別になっていった。

そんなある日、

お姐さんは私に

「大丈夫?」

そう言った。

「なにが?」

「その傷。」

お姉さんは私に微笑みながら言う。

私は少し違和感を感じた。

人が心配してる時って眉を下げたりもっと
なんか、言葉にしずらいけど、
もっと不安げな顔をするんじゃないっけ。

「…傷なんてないよ?」

「傷ついてるよ、心」

お姉さんは私の心臓の当たりを触る。

夢なのに触られた感触あるんだ、

そんな場違いなことを考えていると

お姉さんは言った。

「どこの学校に通ってるの?」

「えっ、」

「学校のお話をしてくれるけど学校の名前は聞いた事ないわ。もちろん、友達の名前も。」

そうだっけ、

言ってなかったっけ、?

夢の中だから言わなかったんだっけ?

あれ、私の学校って、

「私の学校は、」

言おうとすると喉が詰まったような感じがして声が出なくなる。

汗がダラダラと零れ落ち、
体の自由が奪われる。

「ねぇ、そこにずっといなくたっていいのよ。

あなたの居場所はそこじゃないだけなのかもしれないのだから。」

「それって、どういう」

「学校に行きなさいってあなたのお母さんとお父さんは言っているけれどあなたは本当はどうしたいの?」

「なんでお母さんとお父さんをお姉さんは知ってるの?」

「私はあなたの頭であると同時にあなたのお母さんとお父さんの頭でもあるから。」

意味のわからない事を言われ私はお姉さんを見つめる。じわじわと這い上がってくる、記憶。

無くなった上履き、

破かれたプリント、

水に浸された鞄。

全部、私のものだった。

「親に話さないの?」

「なんで話さなきゃいけないの?
迷惑かけるし、」

「迷惑なんかないじゃない。

だって貴方が大事なんだもん。

大事な人がそんな事になっているなら

お母さんもお父さんも助けてくれるよ。

だってそこが全てじゃないから。」

お姉さんは私の手を取る。

暖かくて細くて綺麗な手。

「学校、行きたくないってずっと泣いてたじゃないの。」

「…泣いてない」

「行かなくたっていいのよ?
通信の学校だってあるし、なんならやめて
バイトでもしたら気分転換になるかも」

「そんな、他人事だからって」

「え、?別にいいじゃない。
学校に行かなくたって死ぬ訳じゃないのよ。

この世界は広い、生きていれば何にだってなれるの。

学校に行かないとダメなんてそんな誰が決めたの?

ねぇ、そうでしょ?

辛いなら行こうよ。」

「行くって、どこに、」

お姉さんは指を指す。

白い空間に二つの扉が現れた。

「右はあなたのお母さんとお父さんがいる部屋、

左は私とずっと一緒にどこか旅する部屋、

どっちかなら選べるわよ。」

お姉さんはにっこりと効果音がつくような
眩しい笑顔で私を見た。

私はごくりと息を飲む。

「一生私のそばにいてくれる?」

「それは、」

「あははっ、嘘よ。

もう決まってるでしょ?

もう思い出したでしょう?」

「…うん。でも寂しいよ。お姉さんに
会えなくなっちゃうのは。」

「それは嬉しいわね。」

私は扉に手をかけた。

お姉さんはずっとこっちを見てる。

「…一つだけいい?」

「うん、いいわよ。」

「どうして、私にここまでしてくれるの?」

「それは、




友達が私も欲しかったからよ」

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