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おまけ R2論文試験 特実 問題Ⅱ 全文書き

 ぬーみん(@numinez)です。問題Ⅱの全文書きを公開します。大まかな流れはこちらをどうぞ。

 続くか否かは、記事の反応を見て決めます。3月中は公開していようと考えています。
 間違っているところも含めて試験のときの全文書きを再現しています。また、細かい文言レベルまで完全に再現できているとは限りません。ご了承ください。また、かなりの分量なので信用されないかもしれませんが、本番も省略せずにちゃんとこれぐらい書きました。だから問題Ⅰに入る頃には残り40分となっていたわけですが…。

 なお、私の全文書きは、いずれの受験機関にも提出していないものです。その著作権等の全ては創作者たる私に帰属します。無断転載等した場合にどのような行為となるかは、弁理士試験に挑む皆様なら検討できると思います。ご注意ください。

(1) について

1. 検討
 差止請求(100条1項)の前提たる専用実施権の侵害とは、正当権原等なき第三者が、設定行為で定めた範囲内において、特許発明を、業として実施すること等をいう(77条2項等)。
 本問において、甲及び丙の実施発明(フィルターユニットA)は、題意より、乙の専用実施権に係る特許発明の技術的範囲に属する(70条)。
 また、甲及び丙の行為は、製造(生産)及び販売(譲渡)であるため、業としての実施に該当する(2条3項1号)。
 さらに、甲は乙に対し、特許権Pについて制限を付することなく範囲を全部とする専用実施権を設定されていることから、甲及び乙の行為は、設定行為で定めた範囲内のものである(77条2項)。
 よって、甲及び丙の行為は、乙の専用実施権の形式侵害に該当する(77条2項)。
2. 甲について
 ここで、甲は、フィルターユニットAに係る特許権Pの特許権者であるため、原則自己の特許発明(フィルターユニットA)を自由に実施できる(68条本文)。ただし、甲は、専用実施権を設定した範囲内においては、業として実施する権原を失う(68条但書)。したがって、他に正当権原等のない甲の行為は、乙の専用実施権の侵害に該当するため(77条2項)、専用実施権者乙は、甲に対して差止請求をできる(100条1項)。
3. 丙について
 丙の特許権Pについての通常実施権は、乙の専用実施権の設定登録前に許諾されているため、丙の通常実施権の発生後にその特許権Pについての専用実施権を取得した乙に対してもその効力を有する(99条)。したがって、丙は、自己の実施発明(フィルターユニットA)を実施する正当権原を有するため(78条2項)、乙の専用実施権の侵害には該当せず、乙は、丙に対して差止請求をできない。

(2) について

 差止請求(100条1項)の前提たる特許権の侵害とは、正当権原等なき第三者が、特許発明を、業として実施すること等をいう(68条)。
本問において、丁の実施発明(フィルターユニットA)は、題意より、甲の特許権Pに係る特許発明の技術的範囲に属する(70条)。
また、丁の行為は、販売(譲渡)であるため、業としての実施に該当する(2条3項1号)。
 よって、丁の行為は、甲の特許権Pの形式侵害に該当する(68条)。
 ここで、丁は、適法に第三者が購入した特許製品(フィルターユニットA)を回収したものを販売しているため、特許権Pの効力は、消尽したものとして、当該特許製品の譲渡には及ばないとも思える。
 しかし、特許権者等が我が国において譲渡した特許製品に、加工や部材の交換がされ、当該特許製品と同一性を欠く特許製品が新たに製造されたものと認められるときは、その特許製品について、特許権を行使することが許されると解する。なぜならば、譲渡により特許権の行使が制限されるのは、あくまで特許権者等が我が国で譲渡した特許製品そのものに限られるからである。
 ここで、特許製品の新たな製造に当たるかどうかについては、当該特許製品の属性、加工や部材の交換の態様のほか、取引実情も考慮して総合的に行われる。
 本問において、甲の特許製品(フィルターユニットA)のフィルターは、フィルターユニットAを構成する容器への溶着により分離不能とされているものであり、薬剤a及び薬剤bは使用開始から3年経過するとすべて蒸発するものである。にもかかわらず、丁は、3年を超えて使用した結果、薬剤a及び薬剤bがすべて蒸発した特許製品を回収し、加工及び部材の交換をしているため、当該特許製品(フィルターユニットA)と同一性を欠く特許製品(フィルターユニットB)が新たに製造されたものと認められる。
 したがって、他の正当権原等のない丁の行為は、甲の特許権Pの侵害に該当するため、特許権者甲は、丁の販売行為の差止を請求できる(100条1項)。

(3) について

 戊の実施発明(フィルター)は、甲の特許発明(フィルターユニットA)の技術的範囲に属しないため、戊の行為は、甲の特許権Pの直接侵害を構成しない。
 しかし、戊は、甲の特許発明(フィルターユニットA)の製造にのみ用いられるものを販売(譲渡)しているため、戊の行為は、101条1号の間接侵害を構成するとも思える。
 ここで、特許権者等が、日本国内において、特許製品を譲渡した場合、もはや特許権の効力は、当該特許製品を譲渡等する行為には及ばないと解する。なぜならば、特許製品の円滑な流通が妨げられ、かえって特許権者自身の利益を外資、特許法の目的にも反するからである。また、特許権者に二重の利得を認める必要性もないからである。
 本問において、戊は、特許権者甲の譲渡した特許製品の製造にのみ用いられるフィルターを販売しているが、間接侵害においても同様に、特許権の効力は、当該製品の譲渡等には及ばないと考えられる。したがって、戊の行為は、甲の特許権Pの侵害には該当しない。
 したがって、甲は、特許権Pに基づき、戊に対し、フィルターの販売行為の差止めを請求できない。

(4) について

1. 請求項1について
 訂正後の請求項1に係る発明は、訂正前の請求項1に係る発明をその下位概念に限定するものであるため、当該訂正は、特許請求の範囲の減縮に該当する(134条の2第1項1号)。
 当該訂正は、題意より、願書に添付した明細書等に記載されている事項の範囲内においてしたといえる(準特126条5項)。
また、当該訂正は、題意より、特許請求の範囲の拡張・変更にも該当しないと考えられる(準特126条6項)。
 さらに、請求項1は、特許無効審判の請求がされている請求項であるため、独立特許要件は課されない(読替準特126条7項)
 よって、請求項1に係る訂正は、その客体的要件を満たす。
2. 請求項2について
 請求項2に係る訂正は、題意より、引用関係の解消に該当する(134条の2第1項4号)。
 また、当該訂正は、題意より、願書に添付した明細書等に記載されている事項の範囲内においてしたといえる(準特126条5項)
 さらに、当該訂正は、引用関係の解消に過ぎないため、特許請求の範囲の拡張・変更には該当しない(準特126条6項)。
 また、当該訂正は、引用関係の解消を目的とするものであるため、独立特許要件は課されない(読替準特126条7項)。
 よって、請求項2に係る訂正は、その客体的要件を満たす。
3. 請求項3について
 訂正後の請求項3に係る発明(b)は、訂正前の請求項3に係る発明(a+b)の発明特定事項aを削除した上位概念であるため、当該訂正は、特許請求の範囲の拡張に該当する(準特126条6項)。
 よって、他の要件を検討するまでもなく、請求項3に係る訂正は、その客体的要件を満たさない。
4. その他
 本問において、訂正請求項1とその従属項2,3によって一群の請求項が構成されるため、別の訂正単位とする求めをしない場合は、当該訂正は認められない(167条の2第1号)。一方、別の訂正単位とする求めをする場合、請求項1及び請求項2に係る訂正は認められ、請求項3に係る訂正は認められない。
以上。

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