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R2 弁理士試験 論文試験 特実 問題Ⅱ 論点

 前回は、論文試験の得点など、さわりのお話をしました。前回の記事はこちら。


 さて、今回からは私が実際に記載した論点についてお話しします。
 得点感と記載項目の対応について参考になれば幸いです。
 あくまで、私が本番で記載した項目であって、正解や得点となる記載を保証するものではありません。くれぐれもご注意ください。
 問題文と併せて読むと、臨場感があるかもしれません。

 今回は、特許・実用新案についてです。
 まず、私は問題Ⅰ、問題Ⅱを一通り確認後、問題Ⅱから解答をしました。
 理由は、単純。いわゆる侵害系の事例問題だったからです。
 侵害系の事例問題は、出願系や中間系に比べれば文章の流れがブレないので、得点源にしやすいと個人的には感じています。

 さて、私が解答した順序通り、問題Ⅱについて記載した項目について、順を追っていきましょう。ちなみに、あくまで項目を列挙しただけなので、実際の解答はもっと真面目に書いています。
 以下の2③一という記載は、条文番号で2条3項1号を意味します。法域が明記されていないものは、その法律(今回なら特許法)の条文を指します。
 また、「検討:」などは、私の中での項目の役割を説明するためのもので、現実の答案用紙には記載していません。

設問(1)について

1. 検討
定義:専用実施権の侵害とは…(77②等)
検討:
 甲・丙の実施発明:乙の専用実施権に係る特許発明の技術的範囲に属する(70)
 甲・丙の行為:業としての実施(2③一)
 設定行為で定めた範囲内(77②)
小結論:
 形式侵害(77②)
2. 甲について
検討:
 原則:特許権者甲は原則自由に実施できる(68本)
 例外:専用実施権を設定した範囲については実施できない(68但)
結論:他に正当権原等もない甲の行為は専用実施権の侵害に該当する(77②)。→差止可能(100①)
3. 丙について
検討:
 丙の通常実施権は、乙の専用実施権の設定登録前に許諾されている。
 通常実施権はその後に特許権等を取得した者にも対抗可(99)
 正当権原(78②)を有するため、侵害に該当しない。
結論:差止不可

[所感] 専用実施権の侵害を検討したことがあれば簡単ですが、初見の場合はどう書けばいいのか悩んで時間を使ってしまうと思います。通常実施権の当然対抗制度なんて書いたことがなかったので、即条文を参照しました。

設問(2)について

導入:侵害なら差止できる(100)
定義:特許権の侵害(68等)
検討:
 丙の実施発明は甲の特許発明の技術的範囲に属する(70)
 丙の行為は、業としての実施(2③一)
小結論:形式侵害(68)
導入:
 適法に購入された特許製品を回収したものには、消尽によって特許権の効力が及ばないとも思える。
論点:「インクタンク事件の判事内容、その理由付け、及び新たな製造の判断基準を展開」
検討:(判例の当てはめ)
 加工や部材の交換を認定
 同一性を各特許製品が新たに製造されたものと認められる。
 他の正当権原等もない
結論:侵害に該当(68), 差止請求可(100①)

[所感] インクタンクどストライクの問題です。国内消尽の判例を導入に使う解答もあったようですが、そんな練習していないので消尽することが当然のように書きました。

設問(3)について

検討:
 戊の実施発明 技術的範囲に属さないため、戊の行為は直接侵害ではない。
 のみ品を譲渡する行為であるため、間接侵害(101一)に該当するとも思える。
論点:国内消尽を展開
思考:(ここで、インクタンク事件では、直接侵害にしか触れられていないことに気がつく。でも迷っている場合ではないので強引に押し切ることを決意。)
検討:
 消尽は、専売品の譲渡などの間接侵害の場合にも当然適用されると考えられる。
 戊の実施製品は、特許権者甲が日本国内で譲渡したもの
 特許権の効力は、戊の実施製品に及ばない。
結論:侵害に該当せず、差止不可。

[所感] はい、盛大にやらかしました。勉強始めて日の浅い私はアップルサムスン事件なんて知らないです。でもやるしかないと腹をくくるのも、本番では大事だと思いました(笑)。

 そして、この段階ですでに1時間を経過しています。設問(4)はどう考えても記載が嵩む問題です。記載量的にもこの時点で4ページ目の半分が埋まっています。

 問題Ⅱをそのまま解き切るか、設問(4)を切って問題Ⅰに着手するか…

 どのくらいの時間悩んだかは分かりませんが、設問(4)は得点にできると確信したため、書き切る覚悟を決めました。

 ここから二段併記を開始。

設問(4)について

1. 請求項1について
検討:
 訂正の目的=減縮(134の2①一)
 訂正後の発明 願書に添付した明細書等の範囲内である(準特126⑤)
 訂正後の発明 特許請求の範囲の拡張・変更ではない(準特126⑥)
 無効審判の請求がされている請求項1には独立特許要件が課されない(読替準特126⑦)
結論:請求項1の訂正はその客体的要件を満たす。
2. 請求項2について
検討:
 訂正の目的=引用関係の解消(134の2①四)
 訂正後の発明 願書に添付した明細書等の範囲内である(準特126⑤)
 訂正後の発明 特許請求の範囲の拡張・変更ではない(準特126⑥)
 引用関係の解消が目的のため、独立特許要件は課されない(読替準特126⑦)
結論:請求項2の訂正はその客体的要件を満たす。
3. 請求項3について
検討:訂正後の発明 特許請求の範囲の拡張・変更である(準特126⑥)
結論:他の要件を検討するまでもなく、請求項3の訂正はその客体的要件を満たさない。
4. その他
検討:請求項1とその従属項2,3が一群の請求項に該当する。
結論:
 別の訂正単位とする求めをしない→訂正は認められない(167の2一)
 別の訂正単位とする求めをする→請求項1,2の訂正は認められ、請求項3の訂正は認められない。
以上。

[所感] はい、時間の無い中、最後の最後にわざわざ一群の請求項なんて検討しています。自分でも相当やらかしていると思います。ただ、訂正が認められるか否かは、どうしてもこれを検討しなきゃいかんだろという思いに駆られ、勢いのまま書いてしまいました。答案用紙は4ページ目の右下までぎっちりです。

 さて、この時点で残り40分。問題Ⅰの問題文をマーカーで塗るなど情報の整理はしたものの、答案用紙は白紙です。結構絶望的な状況です。正直、もうダメだとすら思いました。
 この後の展開は…また後日紹介します。

 引き続きお付き合いいただければ幸いです。

(2021.3.1 追記)一部条文番号の誤りを修正しました。本番でやらかすと大変なことになるので、お気をつけください。

(2021.3.6 追記)続きができました。

(2021.03.13 追記) 全文書きを公開しました。


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