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【大盤解説会レポート】第34期女流王位戦第1局(里見女流王位-伊藤女流四段)

2023年4月26日に行われた第34期女流王位戦第1局の大盤解説会の模様をお伝えします。

里見香奈女流王位(白玲、清麗、女流王座、倉敷藤花とあわせ五冠)に挑戦するのは伊藤沙恵女流四段。
対局場は兵庫県姫路市の温泉旅館「夢乃井」ですが、大盤解説は姫路駅前のキャスパホールで開催されました。

解説は、神吉宏充七段と増田裕司六段のお二人です。
一般的に大盤解説は、棋士が解説し女流棋士が聞き手を務めることが多いですが、神吉七段の発案でダブル解説となりました。

対局開始は午前9時ですが、大盤解説会は午後4時から。
里見女流王位の向かい飛車、伊藤女流四段の居飛車の対抗形から、里見女流王位が中飛車に振り直し、伊藤女流四段は穴熊に囲う展開に。

既にいいところまで進んでいるのですが、さすがは神吉七段。
局面は気にせず、漫談のような軽妙なトークで観客を和ませていきます。

対する増田六段は、やや緊張されていたでしょうか。
「今日の対局の変化手順を研究してきました」
と意気込んでおられました。

増田六段は森信雄七段の二番弟子。
一番弟子が故・村山聖九段なので、現在では一門の筆頭格です。
村山九段にまつわるエピソードもたくさんお持ちだそうなので、お話を聞ける機会があればと思います。
この4月には、弟子の柵木幹太(ませぎ かんた)四段が昇段されたばかり。
6月頃には、神吉七段の主催で、増田六段と柵木四段を招いてお披露目会が予定されているそうです。


今回の大盤解説会では、次の一手クイズが2回ありました。

「スマホを見ても答えが分からないように」ということで、対局者の指し手を当てるのではなく、解説の増田六段の考える「次の一手」を当てるというものでした。
公平でいい方法だなと思います。

賞品は、里見女流王位や伊藤女流四段、立会人の森信雄七段、神吉七段、増田六段の揮毫色紙、計14枚とクオカード10人分です。


まず最初の次の一手クイズがこの局面。

本譜は△5五飛でしたが、増田六段の指し手は△4五馬。
この問題は不正解でした。


2問目はこの局面です。

本譜は▲7二桂成でしたが、増田六段が選んだのは▲7五同歩。
こちらは正解しましたが、残念ながら抽選で外れてしまいました。


対局は、ここから伊藤女流四段が寄せにいき、途中あわやという場面があったものの、なんとか寄せきり、伊藤女流四段の勝利。

最終盤は大激戦、手に汗握る展開で、一分将棋で勝ち切るのは大変だということを実感する一局でした。

この対局でも十分はらはらしましたが、渡辺明名人と藤井聡太竜王の名人戦の大盤解説会など、心臓に悪くてもう見ていられない気がします。


コロナ禍もあり、久しぶりの大盤解説会でした。

話し始めるや笑いを誘う神吉七段と、真摯に解説される増田六段のコンビはとても良いバランスです。
増田六段のことはあまり存じ上げなかったのですが、これからもお目にかかる機会があればと思います。

現在、女流棋界は四強(里見、西山、伊藤、加藤桃)と言われていますが、今井絢女流1級と木村朱里女流1級が割って入ってくるんじゃないかというのが神吉七段と増田六段の見立て。

そうそう、里見女流王位については、神吉七段がこんな話をされていました。

将棋連盟に行くと、里見さんが椅子の上に正座して、65手詰のような詰将棋を並べて一心不乱に考えている。そして解けると、さーっと盤面を崩して次の問題に取り掛かる。こうして読みの力が培われていったのだと思う。

すると増田六段が、こう仰っていました。

里見さんは駒を磨いてから練習を始めるんですよ。私なんかすぐ並べ始めちゃいますけど。

こんなお話を聞けるのも、大盤解説会ならではです。


今回、神吉七段がスペシャルゲストを呼ぼうとしてくださったそうで、あいにく流れてしまったのですが、ファンを楽しませようという心遣いには感謝しかありません。

今後も、斎藤慎太郎八段が発表された煙詰の詰将棋が看寿賞をとるだろうから、斎藤八段を招いて記念のディナーショーを企画しているとか、愉しみな情報が盛りだくさんでした。

将棋界っていろんなイベントを考えてくださるので本当にありがたいです。

最後に、今回の大盤解説会を企画運営してくださった神吉七段、増田六段、そして日本将棋連盟と主催の神戸新聞社の皆様に感謝申し上げます。


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